丹沢西部の鉄砲木ノ頭から高指山へ。展望を楽しむ冬のハイキング

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鉄砲木ノ頭(てっぽうぎのあたま)と高指山(たかざすやま)は、丹沢山塊の西端部、山梨県と神奈川県の県境にあり、富士五湖の一つ山中湖の東側に並ぶ山々だ。どちらもカヤトの山なので見晴らしがよく、正面に富士山を仰ぐことができる。冬の澄んだ空気の中、これらの山々をつなぎ富士山を間近に楽しむハイキングコースを紹介しよう。

写真・文=三宅 岳

鉄砲木ノ頭からの富士の威容

鉄砲木ノ頭からの富士の威容


スタートは山中湖畔の平野。東京方面からの場合、新宿から直行する高速バスが便利だ。平野バス停前の国道413号を南下。2kmほどで三国山ハイキングコース入口のバス停となる。ここまでバスも利用できる。「三国山・パノラマ台ハイキングコース」の道標に従い国道を離れ、まずはパノラマ台を目指そう。

三国山ハイキングコース入口の道標から脇道へ

三国山ハイキングコース入口の道標から脇道へ


林道を離れ森の小径となり、やがて舗装された車道を横切る。道標がないが、反対側にしっかりとまっすぐ道がのびている。途中に道標のない分岐があるが、上へのびる道をたどっていく。樹林を抜けカヤトになると、すぐでパノラマ台に着く。富士山の展望で名高く、駐車場はいつも賑やかだ。ここにある公衆トイレが本コースの最後のトイレとなる。

パノラマ台に登る途中から、山中湖を見下ろす

パノラマ台に登る途中から、山中湖を見下ろす


トイレの奥から明るいカヤトの斜面を、まっすぐに登っていく。雨にえぐれ溝状で歩きにくい箇所を避けるように踏み跡がいくつも分岐するが、とにかく上へと向かって歩く。なお、この付近は足元が土や砂ではなくザラザラっとした火山噴出物。ざくざくとした足音に耳を傾けてみよう。やがて鉄砲木ノ頭(明神山)山頂に祭られた、山中諏訪神社奥宮の石祠が見えてくる。

山中諏訪神社奥宮の石祠

山中諏訪神社奥宮の石祠


山頂からは富士の姿が圧倒的だ。さらにその右奥には、北岳・間ノ岳といった南アルプスの名山がずらりと並ぶ。

鉄砲木ノ頭からの素晴らしい見晴らし

鉄砲木ノ頭からの素晴らしい見晴らし

南アルプス赤石岳・悪沢岳なども遠望できる

南アルプス赤石岳・悪沢岳なども遠望できる


鉄砲木ノ頭からは稜線歩き。ブナなどの広葉樹が優占する幅広い稜線を北東方向に進んでいく。緩やかなアップダウンで、様々な木々を愛でながらの快適歩きである。やがて大きく下った切通峠で、稜線をまたぐ道と交錯する。東側は、はるか遠く丹沢湖湖畔の浅瀬へと続く道。西側へ下れば平野へのショートカットとなる。ここから高指山へはさらに、稜線にのびる東海自然歩道をたどる。

切通峠までの緩やかなトレイル

切通峠までの緩やかなトレイル

道標の立つ切通峠

道標の立つ切通峠


もう一度小さな鞍部で平野へと下る道を分けると、いよいいよ高指山への登りとなる。山頂を巻く道を過ぎるあたりから雑木の一部が伐採され、展望が開け始める。ここまでくればひと登りで高指山山頂だ。あまり広々とした山頂ではないが、富士山の眺めは見事。

高指山からの展望

高指山からの展望

秋の名残か、赤い実が鮮やかだった

秋の名残か、赤い実が鮮やかだった


稜線は丹沢山塊の主稜線なので、さらに北に道は続いているのだが、今回はここで下山することにしよう。まずは富士山を正面にしての明るいカヤトの下りとなる。この道も東海自然歩道で、まもなく左手から巻き道が合流するが道標はない。そちらに入りこまず、まっすぐ尾根上を進む。やがて別荘地の裏道のような道となる。少々わかりにくいが、道標が示す「平野・大平山」という方向に従おう。県道に出たらば、平野バス停を目指す。なお、逆コースでは登山口が少々わかりにくいので注意のこと。

高指山から、富士山を眺めながら下っていく

高指山から、富士山を眺めながら下っていく

プロフィール

三宅 岳さん(山岳写真家)

みやけ・がく/1964年生まれ。丹沢や北アルプスの山々で風景や山仕事などの撮影を行なう。著書に『ヤマケイアルペンガイド 丹沢』(山と溪谷社)、『山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地』(昭文社)など。

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