カタクリが咲く御前山を歩き、旅館荒澤屋で奥多摩の山の幸と地酒三昧
ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第38回はカタクリの花咲く御前山へ行き、奥多摩駅至近の旅館荒澤屋で山の幸を楽しみます。
写真・文=月山もも
大岳山、三頭山と共に奥多摩三山の一つに数えられる御前山は、山頂周辺にカタクリの群生地があることで知られています。
4月下旬の御前山に登り、まさに見頃を迎えようとしているカタクリの花を眺めてきました。
鋸尾根を登りカタクリを愛でて、奥多摩湖へ
奥多摩駅から多摩川にかかる橋を渡ってすぐの、鋸尾根の登山口から歩き始めます。
登り始めると急傾斜の長い階段が現れました。180段以上ある階段は幅も狭く上りにくいですが、階段は下るより上るほうが好きなのでトレーニングのつもりで歩を進めます。
長い階段は愛宕神社への参拝路でもあるのだそう。階段が途切れたところに五重塔が見えました。
その後も急な坂が続き、ハシゴや鎖場もある登山道を2時間ほど登っていくと、大岳山に向かう鋸尾根と、御前山に向かう道の分岐があります。
分岐から先は細かいアップダウンが続くものの傾斜はゆるやかになりました。樹林帯の中を1時間少々歩き、御前山の山頂が近づいてくると、足元にカタクリの花がちらほらと現れました。
春の妖精の異名を持つ、ピンク色の美しい花。時折立ち止まって眺めながらゆっくりと登っていきます。
御前山の山頂は樹木に囲まれていますが、木が芽吹く前なので遠くの山までよく見えました。
下りは大ブナ尾根を下ります。1時間30分ほどで奥多摩湖に下山し、バスで奥多摩駅に戻りました。
明るく日当たりの良い部屋でコーヒータイム
奥多摩駅から徒歩5分という、登山前後の宿泊に最適な場所にある宿、旅館荒澤屋。
現在は3室のみで営業しており、ハイシーズンは一人で泊まれないこともありますが、今回はカタクリの季節の日曜日に宿泊しました。
宿泊したのはトイレ・洗面所付きの和室です。水回りはしっかりと改装されていて新しく、和室も日当たりが良く暖かく、居心地の良い部屋でした。
湯沸かし機能付きのポットが設置してあり、お茶の他にドリップパックのコーヒーが置いてあります。さっそくお湯を沸かしてコーヒーを淹れ、ひと息つきました。
温泉浴室は空いているときに貸切で利用する
荒澤屋旅館には2箇所の温泉浴室があり、予約不要で空いているときに内側から鍵をかけて貸切で入ります。
貸切風呂「壱」は3~4名入れそうなやや広めの浴室でした。
源泉は、奥多摩湖の底から湧き出る源泉をポンプアップしている「鶴の湯温泉」です。アルカリ性の源泉でつるつるした浴感があります。
もう1箇所のやや小さめの浴室「弐」には翌日の朝に入りました。
利用時間はチェックインから夜は22時30分までと、翌朝6時から9時30分まで。朝もゆっくり温泉に浸かれるのがうれしいですね。
日本酒の品揃えが良く、奥多摩の食材が豊富
食事は1階にある食事処でいただきます。「炉ばた 赤べこ」という名前で居酒屋としても営業している食事処にはカウンター席があり、1人でも気兼ねなくお酒と食事を楽しめます。
荒澤屋の女将さんは利き酒師の資格をお持ちだそうで、季節限定のお酒を取りそろえた日本酒のメニューが大変魅力的です。
まずは「澤乃井」の「大吟醸飲みくらべセット」をオーダーしました。澤乃井は奥多摩のお隣、青梅市にある小澤酒造の地酒です。どちらも初めていただくお酒でしたが、大吟醸らしく華やかな香りがして、味わいはすっきり。
荒澤屋では全国各地の日本酒がいただけるのですが、地元のすばらしいお酒もしっかりラインナップしているのがうれしいですね。
春の恵み、筍の煮物をいただいた後はお刺身が登場。手作りこんにゃく(山葵と柚子)と奥多摩ヤマメの盛り合わせです。薬味として山葵の花が添えてありました。
焼き魚は山椒の実がお腹に詰まったヤマメの塩焼きです。熱々で持ってきていただきました。
これはパンチの強い日本酒が合いそうだなと思い、うす濁りの「栄光富士 純米生おりがらみ 期間限定」を追加オーダー。
この日採れたばかりのコシアブラの天ぷらに、檜原村のアワビ茸の鍋と立て続けに山の幸を味わい、〆は筍ご飯です!
デザートは奥多摩のわさびのジェラート。奥多摩の食材たっぷりの夕食でした。
朝食は野菜サラダにさつま揚げ、かまぼこ、たらこ、わさび漬けなどおかずが盛りだくさん。
陶板焼きはベーコンエッグにソーセージ!ご飯の上にのせてお醤油を回しかけていただき、お腹いっぱい。幸せな朝ご飯でした。
*紹介した食事、サービスの情報は2022年4月取材時の内容です。
旅館荒澤屋
料金:1泊2食付き/1室1名利用15,400円~ ※プラン、時期によって変動
住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川1446
電話:0428-83-2365
HP:https://arasawaya.co.jp/
プロフィール
月山もも
山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。
ひとり温泉登山
山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。