余裕を持った登山計画と最低限のビバーク装備携行の徹底を 島崎三歩の「山岳通信」 第303号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年6月22日に配信された第303号では、疲労による山岳遭難について言及。余裕を持った登山計画の大切さを説明すると同時に、最低限のビバーク装備の携行を促している。

 

6月22日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第303号では、期間中に起きた3件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 6月15日、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した45歳と17歳の女性が、観音平口から赤岳に向けて縦走中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。16日に山岳安全対策課及び茅野警察署山岳遭難救助隊員が2人を発見・救助して同行下山した。

  • 6月17日、八ヶ岳連峰の蓼科山で、3人パーティで入山した34歳の女性が、山頂から下山中に発病。体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 6月18日、北アルプスのスバリ岳で、2人パーティで入山した63歳の男性が、登山中にスリップして滑落し、負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス・スバリ岳での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)6月19日付

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

6月3週は、3件の遭難が発生しました。
赤岳の遭難は、長時間行動したため、当日のうちに目的地に到着することができず、疲労による行動不能として日没間際に救助要請がありました。しかし、当日の救助はリスクの高い夜間行動となってしまうため、翌日早朝からの救助活動となった事案です。救助隊が到着するまで、遭難者はその場でビバークをしていました。

疲労による遭難は、自身の体力と経験を踏まえ、事前に余裕を持った登山計画を立てることで防ぐことができますし、行動中にこまめに自身の体調を確認するとともに、ペースが上がらなかったり、予想以上に時間がかかるようであれば、途中で引き返す判断も必要です。

万一遭難した場合には、救助要請をしても天候や時間等によっては、救助隊が現場に到着するまでに時間を要することもありますので、最低限のビバーク装備(ツエルト、非常食・飲料、防寒着)を携行しましょう。
また、残雪上での滑落遭難も発生しました。標高の高い山域ではまだまだ雪の残った場所があり、転倒や滑落に備えたアイゼン・ピッケルの着装と、ヘルメットの着用が必要です。登山計画の際には、行き先の山域やルートの最新情報を確認するとともに、自身や仲間の技量に見合った山域を選びましょう。

県内は梅雨により、不安定な天候が続いています。この時期は、湿度が高く、雨や汗により体が濡れても乾かず、体温とともに体力も奪われやすいです。さらに、登山道が濡れていることで、足下に注意して歩行しなければならないため、晴天時よりも集中力・体力がより必要となってきます。

行動中は、こまめに休憩を取り、水分補給・エネルギー補給を行い、濡れた服のまま行動するのではなく着替えをするなどして、体温や体力が奪われないようにしましょう。

登山や山菜採りを計画されている方は、事前に天気予報を確認し、悪天候の場合は中止や延期する判断をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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