夏山シーズンは「体調不良」が多発、疲労・熱中症・病気による遭難を回避する準備を 島崎三歩の「山岳通信」 第304号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年6月29日に配信された第304号では、夏山シーズンに多い「疲労・熱中症・病気による遭難」について言及。事前の準備・計画・トレーニングの大切さを説明している。

 

6月29日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第304号では、期間中に起きた2件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

 

  • 6月23日、北アルプスの槍ヶ岳で、3人パーティで入山した3人の男性(30歳、41歳、42歳)が、上高地から槍ヶ岳に向けて登山中に道に迷い、疲労などにより行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して付近の山小屋に収容して救助するとともに、24日、県警ヘリが出動して体調不良の男性(42歳)を救助した。

  • 6月24日、下高井郡山ノ内町地籍の山林で、山菜採りのために3人パーティで入山した73歳の男性が、道に迷い行方不明となる事案が発生。警察と志賀高原地区山岳遭難防止対策協会が捜索を行ったところ、本人が自力下山した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

6月4週は、2件の遭難が発生しました。そのほかにも、「登山中に体調不良で行動不能となった。」「山菜採り中に仲間とはぐれた。」といった届出もあり、いずれも自力下山したため遭難には至りませんでしたが、一歩間違えれば遭難になりかねないものも散見されました。
槍ヶ岳の疲労による遭難では、日没後も降雨の中、長時間雨に打たれながら行動を続けたことにより、コースを外れさらに寒さと疲労により行動不能となってしまった事案です。
この時期でも、標高の高い場所では、雨が降ると気温が下がり、体感気温は氷点下に感じるほど寒くなるため、晴天の時よりも倍以上の体力を消耗します。
行動中、悪天候によりペースが遅くなり、目的地への到着予定時間から大幅に遅れてしまうなどイレギュラーなことも起こります。こうしたときに備え、引き返す時間や場所をあらかじめ計画の段階で決めておくことも必要です。

今週末から7月に入り、本格的な夏山シーズンとなります。
例年、夏山シーズンには遭難が多発し、特に、熱い日差しを浴びての行動となるため、疲労・熱中症・病気による行動不能事案が増える傾向にあります。
疲労、熱中症や病気による遭難は、綿密な事前の準備、登山計画やトレーニング等によって防ぐことができます。夏山登山を計画されている方は、日頃からトレーニングを積まれている方もいるかと思いますが、「自身の体力に見合った山域選び」「余裕を持った登山計画を立てる」「登山に向けてのトレーニングを行う」「登山前の定期的な体調管理(持病のある方は医師に相談する)を行う」を実践し、安全登山を心掛けましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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