真夏も低山を楽しめる!夏山ボディの作り方

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本格的な夏山シーズンに向け、暑さ対策は不可欠。競技スポーツの世界では、暑熱環境でもパフォーマンスを低下させないためのトレーニング法が確立しています。アスリートたちの暑熱対策を参考に、涼しい高山だけでなく、低山も楽しめる体をめざしましょう。

文=芳須 勲、写真=PIXTA

アスリートの暑熱対策に学ぼう

梅雨が明け、本格的な夏山シーズンが始まります。3000m級の山々は確かに涼しくて過ごしやすいけど、毎週末に登れるわけでもないし、手軽に行ける低山ではちょっと暑すぎて熱中症が心配。そういえばニュースでも「夏は運動を控えて」って言っていた・・・。そうして結局、クーラーのきいた快適な部屋でだらだらと休日を過ごしてしまう、なんてことないですか?

競技スポーツの世界では、年々厳しくなる暑さに対応するための研究が進み、暑熱環境でもパフォーマンスを低下させないためのトレーニング法が確立しています。アスリートたちの暑熱対策を知ることで、私たちも「夏には暑い低山を控えて、涼しい高山へ行く」という選択だけでなく「暑さを味方につけて低山も楽しむ」といった選択ができるかもしれません。

競技スポーツの世界では暑熱対策の研究が進んでいる
競技スポーツの世界では暑熱対策の研究が進んでいる

心地よい汗をかけ!暑熱順化のすすめ

暑熱順化とは体を暑さに慣れさせるということです。暑熱順化を行なうことによって、皮膚の血流が改善されたり、運動時の体温が抑えられたりと、さまざまな身体反応が改善されますが、とくに注目したいのが「汗」です。

日頃あまり運動していない人がたまに汗をかくと、しょっぱい汗になります。これはミネラルが汗と一緒に流れて失われているからです。こういった汗を大量にかくことで体内のミネラル(主にナトリウム)が不足すると、こむら返りなどの熱中症トラブルを起こしやすくなります。また、ミネラルが多く含まれた汗には雑菌が繁殖しやすくなるため、シャツの黄ばみや悪臭の原因になることも知られています。

一方、暑熱順化を行なった後では、比較的低い体温でも汗をかきやすくなり、汗の量も増えます。しかし、その汗はミネラルの流出が少なく、さらさらとした心地よい汗となります。そういった汗が蒸発することで体熱を放出しやすくなり、暑熱環境でも運動を続けることができるようになるのです。もちろん雑菌も繁殖しづらくなるので、ニオイや汗ジミに悩まされることもなくなるでしょう。

「汗っかき」と聞くと、嫌なイメージを感じる人も多いと思いますが、暑熱順化で獲得したこの体質こそ、最高の「夏山ボディ」と言えるのです。

発汗で体温調整ができる体をめざそう
発汗で体温調整ができる体をめざそう

やってみよう!暑熱順化トレーニングの実際

では実際、アスリートたちはどのような暑熱順化トレーニングをしているのでしょうか?

『競技者のための暑熱対策ガイドブック』(国立スポーツ科学センター 2017)によれば、深部体温を1℃以上上昇させる運動が必要で、60~100分前後の中強度運動(最大酸素摂取量の50~60%)を7~10日程度継続させるトレーニングが一般的とされるようです。もちろん私たちはアスリートではないので、ハードなトレーニングはできませんし、行なう必要もないとは思いますが、これを参考に、今から始めても間に合うトレーニングメニューをご紹介します。

夏山ボディトレーニングメニュー

[トレーニング1〜3日目]

  • ストレッチやラジオ体操など15分
  • 日差しの弱い時間帯でのウォーキング45分(しっかり汗をかく程度の速さ)

[トレーニング4〜6日目]

  • ストレッチやラジオ体操など15分
  • 日差しの弱い時間帯でのウォーキング30分+ランニング15分(しっかり汗をかく程度の速さ)

[トレーニング7日目]

  • ストレッチやラジオ体操など15分
  • 日差しの弱い時間帯での低山ハイキング(往復1~2時間程度の低山)

このメニューは普段運動していない人向けに考えました。実践にあたっては自分の体調を考慮しながら適宜、運動強度を増減させてください。

このほかにも、暑熱順化で押さえておきたいポイントが4つあります。

①睡眠:しっかりと熟睡するためクーラーを使用して構いませんが、体が冷やしてしまうほど室温を避けないようにしてください。
②栄養:しっかりと食事をとり、水分&ミネラル補給(特に運動時)をこまめに行ないましょう。また、運動後にたんぱく質を摂取することで暑熱順化しやすくなるといわれています。
③入浴:シャワーだけでなく湯船につかりましょう。週に1~2回のサウナもおすすめです。
④継続:1週間のトレーニングが終了した後でも、長期間運動を行なわずに涼しい環境で生活していると元に戻ってしまいます。週に2~3回程度のトレーニングを継続してください。

トレーニングを継続することも大切
トレーニングを継続することも大切

今回は、梅雨明けからでも間に合う暑熱順化トレーニングを紹介しましたが、一般的には暑くなり始める5月くらいから行なうことがよいとされています。

とはいうものの、一年を通じてランニングなどの屋外スポーツや、ホットヨガといった大量に発汗する運動を継続していれば、春になり気温が上がってくる頃には、ある程度の暑熱順化はできているので、わざわざ特別なトレーニングをしなくても、さらさらとした心地よい汗をかくことができるのも事実です。

結局、継続的に汗をかけるような運動習慣を身につけることが夏山ボディを手に入れる一番の近道なのかもしれませんね。

プロフィール

芳須 勲さん(登山ガイド、健康運動指導士)

よしず・いさお/いきいき登山ガイド・ヤッホー!!さん。として活動。管理栄養士の資格も持つ。「登山で健康づくり」をモットーに運動・食事指導・山の安全管理を柱とした登山プログラムを提案している。

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