穂高連峰で滑落による遭難が増加傾向、危険箇所では落ち着いて行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第312号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年8月30日に配信された第312号では、とくに北アルプス穂高連峰で滑落による遭難が増えていることについて言及。危険箇所を通過する際は一呼吸を置くなど、落ち着いて行動をすることを推奨している。

 

8月30日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第312号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月21日、北アルプスの奥穂高岳で、北アルプス奥穂高岳ジャンダルム付近を登山中の登山者から落石などの通報を受けて県警ヘリが出動して捜索したところ、単独で西穂高岳からジャンダルムを登山中に滑落した男性(40歳)を発見。救助したものの死亡が確認された。

  • 御嶽山で、単独で入山した61歳の男性が、20日に剣ヶ峰から王滝頂上に向けて八丁ダルミを下山中にバランスを崩し転倒、負傷する山岳遭難が発生。21日に木曽広域消防本部消防署員が出動して、県消防防災ヘリで男性を救助した。

  • 8月23日、北アルプスの鹿島槍ヶ岳で、2人パーティで入山した53歳の女性が、鹿島槍ヶ岳山頂付近を縦走中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員および大町警察署山岳遭難救助隊員が出動し、24日に県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 8月23日、北アルプスの唐松岳で、単独で入山した47歳の男性が、唐松岳山頂を経由して八方池に向けて下山中にスリップし転倒して負傷する山岳遭難が発生。付近の山小屋従業員が付き添い山小屋へ救助して、24日に県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月26日、北アルプスの奥穂高岳で、2人パーティで25日から入山していた58歳の女性が、26日に奥穂高岳からザイテングラードを下山中、スリップし滑落して負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して県警ヘリで女性を救助した。

北アルプス奥穂高岳・ザイテングラードでの遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月28日付
  • 8月26日、北アルプスの鹿島槍ヶ岳で、単独で入山した55歳の男性が、鹿島槍ヶ岳から五竜岳に向けて八峰キレットを縦走中、バランスを崩し滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月26日、苗場山で、17人パーティで入山した78歳の女性が、苗場山山頂に向けて登山中に登山道でバランスを崩し転倒して負傷する山岳遭難が発生。27日に長野県防災ヘリが出動して女性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月4週は、1件の死亡遭難を含む7件の遭難が発生しました。最近では、40〜50代の登山者による滑落や転倒による遭難が増えています。また、北アルプス穂高連峰では、滑落による遭難が増えています。

北アルプスの稜線は、登山中にバランスを崩したり、スリップするなど、ちょっとしたミスによって転倒や滑落をすると、場所によっては数百メートル滑落してしまい、最悪の場合命を落としかねません。
集中力が求められる稜線で長時間行動を続けると、疲れが溜まり、体力の消耗や集中力の低下を招きます。こまめに休憩を取り、鎖場やハシゴ場などの危険箇所を通過する際は、一呼吸を置くなど、落ち着いて行動をしましょう。
登山は、常に危険と隣り合わせのアクティビティです。どんな状況であっても、登山の鉄則「無事下山」を忘れずに安全を心掛けた行動をお願いします。

県内各地では、まだまだ暑い日が続いており、夕方になると、雷雲が湧き出て突発的な豪雨となるところもあります。行動中は、早めに出発し、遅くとも午後3時までには目的地に到着できる計画で行動をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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