月山・弥陀ヶ原、秋の装いに包まれた湿原を訪ねて

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山形県のほぼ中央部に位置する月山(がっさん)。緩やかで優美な山体ですが、西側には古い爆裂火口壁を擁し、半月状の形をしています。弥陀ヶ原は月山八合目の台地上にある広い湿地帯で、肘折(ひじおり)コースの念仏ヶ原とともに高山植物の豊富な所として知られています。池塘を巡り、草紅葉の中に咲くエゾオヤマリンドウなどの花々を愛で、秋を堪能しましょう。

写真・文=斎藤政広

弥陀ヶ原湿原の池塘。手前にミツガシワ、後方にミヤマホタルイが生育
弥陀ヶ原湿原の池塘。手前にミツガシワ、後方にミヤマホタルイが生育

月山八合目へは、月山ビジターセンターがある羽黒口から県道月山公園線を通って向かいます。道路幅が狭いので、車の場合はすれ違い時に注意が必要です。シーズン中であれば、バスで八合目までアクセスすることもできます。

八合目には駐車場とレストハウスのほか立派なトイレもあります。すでに標高が1400mもあるので、見晴らし抜群です。身支度を整えてトイレの横から、草原の広がる弥陀ヶ原に入っていきます。左と右に道がありますが、ここは左回りで進みます。

湿原入口にある案内板
湿原入口にある案内板

木道を進み、高層湿原の広がりの中に入っていきます。天気がよければ、北方に鳥海山も望めます。駐車場からすぐの所に、このような豊かな湿原が広がる環境は、なかなかありません。

木道を進むとすぐに高層湿原が広がる
木道を進むとすぐに高層湿原が広がる

やがて御田原神社(中の宮)・御田原参籠所です。ここから本道を離れて、左手湿原探索の道に入っていきます。高層湿原と池塘が展開します。

御田原神社(中の宮)
御田原神社(中の宮)
湿原から月山山頂部を望む
湿原から月山山頂部を望む

湿原散策の最終地点、オゼコウホネが生育する池に到着です。この時期、花は終わっていますが、紅葉した葉が面影を残しています。ここからは湿原をぐるりと一周して、八合目に戻ります。

オゼコウホネの池
オゼコウホネの池
エゾオヤマリンドウ
エゾオヤマリンドウ
ドングリをつけて紅葉が始まったミヤマナラ
ドングリをつけて紅葉が始まったミヤマナラ
池塘の近くで咲くコウメバチソウ
池塘の近くで咲くコウメバチソウ
花は終わり、印象的な実をつけるイワショウブ
花は終わり、印象的な実をつけるイワショウブ

今回は弥陀ヶ原湿原をメインに紹介しましたが、これに加えて仏生池(ぶっしょういけ)の手前の畳石で眺望を楽しみ、仏生池小屋まで足を延ばしてから下山するのもよいと思います。(※仏生池小屋は9月中旬まで営業ですが、詳しくは小屋にお問い合わせください。)

なお、月山八合目までのアクセス道の周辺にはブナの樹林帯が広がっており、三合目のあたりには、短い区間ですが旧参道(登山道)が残っています。アクセスはよくなく、この時期、ブナの森は紅葉前でまだ鮮やかな緑が残って鬱蒼としていますが、森のいのちに触れ、ブナの森の土を踏む感触を楽しめるでしょう。

三合目付近、旧参道の入口
三合目付近、旧参道の入口
ブナ林に残っている旧参道
ブナ林に残っている旧参道
ブナの落ち葉を踏みながら
ブナの落ち葉を踏みながら

下山後、月山ビジターセンターをベースに、自然観察の時間を入れてみるのもおすすめです。ビジターセンターの前に広がる二夜(ふたよ)の池周辺には観察路が整備されています。

月山ビジターセンター
月山ビジターセンター

MAP&DATA

コースタイム:月山八合目~オゼコウホネの池~月山八合目:約1時間10分

ヤマタイムで周辺の地図を見る

プロフィール

斎藤政広(さいとう・まさひろ) 

横浜市生まれ、山形県酒田市在住。東北のブナの森や山々をフィールドに歩き、山麓での多彩な自然との出会いを楽しんでいる。おもな著書に『鳥海山・ブナの森の物語』『鳥海山・花と生きものたちの森』『鳥海山・花図鑑』(無明舎出版)、『森のいのち』(メディア・パブリッシング)、『山と高原地図 鳥海山・月山』(昭文社)などがある。

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