読図ってどうやって習得するの? 『山と溪谷』2023年10月号特集より
雑誌『山と溪谷』2023年10月号の特集テーマは「やさしい読図」。地図アプリなどが普及した今なお、登山者の必須技術とされる地図読みだが、どうやって習得すればよいのだろうか。特集記事から、読図を覚えたい登山者に向けたアドバイスを抜粋して紹介する。
監修=田島利佳、文=山と溪谷編集部・大関直樹・谷山宏典、イラスト=浅妻健司・上坂元 均
地図と景色を結びつける技術「整置」を知ろう!
山のなかで地図を使ってルート維持をするとき、必ず身につけておいてほしいのが「整置」の技術である。〝基本〟だけれど〝奥深い〟地図の整置について、徹底解説!
読図にはなぜ整置が必要なのか?
先生:ふたりは、目的の山の最寄り駅を出て、「さあ、歩き始めよう」というとき、どの道を行けばいいのかわからず、右往左往した経験はない?
ヤマト&ケイコ:あります……
先生:人間の方向感覚って、個人差はあるけど意外に頼りにならず、「たぶんこっちだろう」と当てずっぽうで進んでいくと、たいてい道に迷ってしまいます。
ヤマト:じゃあ、どうすれば?
先生:正しいルートを進むには、地図と周囲の風景から自分が進みたいルートを見極めることが不可欠。そして、そのために必要なのが、地図を正しく「整置」する技術なんです。
ケイコ:整置って何ですか?
先生:整置とは「地図の向き」と「実際の風景」を合わせること。地図の整置をすることで、自分の周りの風景と地図に描かれている情報が一致します。自分が登る山や登山道のおおまかな方向を把握したり、道の分岐点などでは進むべき道を確認したりして、正確なルート維持ができるようになるんです。
ヤマト:どうすれば整置ができるようになりますか?
先生:周りの風景と地図に描かれている地形や人工物の位置を照らし合わせて、両者が一致するように「地図を回す」ことが基本動作になります。
ヤマト:地図を回す?
先生:慣れていない人は、そもそもどうやって地図を回せばいいのかわからないし、地図と体の動きがちぐはぐになってしまうことが多いかもしれないですね。
ケイコ:私にできるかな……。
先生:大丈夫! 地図の回し方のポイントなど初歩的なことから学んでいけば、山のなかでも自信をもって整置ができるようになります。また、コンパスの使い方を知っていると、地図の方向を確認したり、より正確な整置ができるようになるから、それも学んでいきましょう。
ヤマト&ケイコ:がんばります!
整置を身につける3つのポイント
ポイント1 地図だけではなく周囲の風景もよく見よう
地図読みをするとき、つい手元の地図ばかりに目が行きがちだが、地図を見ているだけでは整置はできない。整置とは「地図」と「風景」を正確に照らし合わせること。自分の周りにどのような風景が広がっているか――顕著なピークはあるか、尾根や谷はどの方向に延びているか、建物など人工物はあるか、登山道はどの方向に延びているか――を把握してこそ、地図と照らし合わせることもできる。地図の整置をするには、まずは自分の周囲を観察しよう。
ポイント2 地形は動かない!地図を回そう
整置の基本動作は「地図を回す」ことだと先述した。では、なぜ地図を回す必要があるのか。それは周囲の地形や地図に記載されてる人工物が「動かない」からだ。「風景」が動かないのであれば、「動くもの=地図」を動かすことで、両者を合わせるしかない。
ポイント3 より正確な整置にはコンパスを使おう
周囲の特徴的な地形や人工物を把握し、地図の中にそれらを見つけられれば、両者を照らし合わせて整置できる。つまり、コンパスは必須ではない。だが、周囲に目立った地形や人工物が見つけられなければ、コンパスで方角を確かめ、地図の向きと実際の風景を一致させる。地図は文字が読める向きで持ったときに上が北の方角となり、コンパスは赤く塗られたほう(N極)が北を指すことは覚えておこう。
(山と溪谷2023年10月号より転載)
プロフィール
山と溪谷編集部
『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。
雑誌『山と溪谷』特集より
1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。
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