雪山登山に欠かせない計画づくり。なにから決めればいい?

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雪山登山の技術、装備、初級〜中級者におすすめの雪山ルートを一冊にまとめた書籍『入門とガイド 雪山登山 改訂版』から、雪山登山の計画づくりの方法を紹介したページを紹介しよう。

文=野村 仁、写真=PIXTA

情報を集める

雪山登山に必要な情報として、以下のような内容を調べる。

①交通アクセス

電車・バスの経路、時刻、タクシーの運行状況。車でどこまで入れるか。
駐車場または駐車可能なスペース。道路状況によっては登山口まで入れないことがある。交通や道路状況については、地元の観光課、バス会社、タクシー会社などに問い合わせる。

②山小屋の営業状況

山小屋が営業しているかどうか、また、休業中の小屋で、一部が冬季小屋として入れるようになっているかどうか。食事が出ずに素泊まりだけできる小屋もある。小屋に泊まれると、それを生かした雪山計画が可能になる。

③積雪状況

ルート近くに営業小屋がある場合は、小屋に問い合わせれば現地の積雪状況がわかる。スキー場がある山では、スキー場の積雪情報からも判断できる。警察署のサイトで、ヘリから撮影した山の状況を載せているケースもあり参考になる。地元観光課や観光協会では山の積雪はわからないが、山麓の状況は教えてくれるので、それから推測することもできる。

④ルート状況

ガイドブックや雑誌記事は、多少古いものであっても重要な基本情報である。雪山のルートがどのような組み立てか。どこまでが樹林帯で、どこから森林限界になり、雪稜・岩稜になり、難所がどこで出てきて、どの程度の難しさかなど。基本的な部分が把握できるので熟読しておこう。インターネットに公開されている記録は主観的な表現も多いので、正確かどうかは注意が必要だ。ただし画像として見られる情報は参考になる。

⑤エスケープルート

ルートのなかで最も危険な状況になり得るのは、強風雪にさらされる森林限界以上の区間だ。そこからどういう手段でエスケープできるか、どの方角に何分間がんばれば安全地帯に出られるか、稜線から一時的に下って樹林帯に逃げ込める場所があるか、というような問題を検討する。ルート情報から判断するか、地形図を見て推測できることもある。

⑥雪崩情報

そのルート周辺で過去に雪崩事故がなかったか、できるだけ調べておきたい。例は少ないが、ガイドブックや雑誌記事で指摘している場合もある。日本雪崩ネットワークのように、特定山域についてリアルタイムで雪崩情報を発信している例もある。

山小屋を予約する際に現地情報も聞いておこう
山小屋を予約する際に現地情報も聞いておこう

山岳保険に入る

雪山登山者はかならず山岳保険に入ろう。1年契約で保険料が最も安いタイプは4000円くらいからある。年間を通して捜索救助費用が補償される山岳保険に入っておけば安心だ。1回掛け捨てのタイプは軽登山対象なので、雪山登山には適用されない。

山岳保険と会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ」を組み合わせた新タイプも出ており、年会費5500円で加入できる。未発見遭難が高い確率で防げるのは大きい。検討してほしい。

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プロフィール

野村仁(のむら・ひとし)

山岳ライター。1954年秋田県生まれ。雑誌『山と溪谷』で「アクシデント」のページを毎号担当。また、丹沢、奥多摩などの人気登山エリアの遭難発生地点をマップに落とし込んだ企画を手がけるなど、山岳遭難の定点観測を続けている。

雪山登山入門

雪山登山には、厳しくも美しい山々の表情に出合えるだけでなく、夏山とはまったく違う面白さがある。しかし、氷雪や天候に由来するリスクも多いため、確実な技術と充分な体力が必要だ。

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