雪山登山に欠かせない計画づくり。なにから決めればいい?
雪山登山の技術、装備、初級〜中級者におすすめの雪山ルートを一冊にまとめた書籍『入門とガイド 雪山登山 改訂版』から、雪山登山の計画づくりの方法を紹介したページを紹介しよう。
文=野村 仁、写真=PIXTA
行動予定を見通す
雪山ルートのガイドにはコースタイムが書かれているが、これは不確定なもので、そのとおりに歩ける保障はまったくない。ラッセルになると行動予定は大幅に狂ってしまい、予定の宿泊地にたどり着けないこともある。
しかし、それでもコースタイムに基づいて予定時刻を見通しておくとよい。行動時間が長くて到着が遅くなりそうなら、朝の出発時間を早めるなどの対応もできる。基本的に朝7時には出発し、遅くとも15時までに宿泊地に着くような行動計画にしたい。
【装備リスト】
装備内容は毎回決まっていることで、変更の部分は少ない。雪山登山用の装備リストを作っておいて、それに記入していくと忘れ物もない。登山届(計画書)には、リストのまま添付しておけばよい。
透明で中身がわかりやすく、脱気して口をしっかり結んでおけば、におい移りの心配も少ない。このまま電子レンジや鍋で加熱して調理できるのが楽。
【食料の分担】
自炊する場合に必要。最近は個々で食料を用意するグループも多いが、鍋を囲んで食べる楽しさもある。食事当番は夕食と朝食でそれぞれ決める。買い出しやボッカ(荷担ぎ)の担当は、すすんで引き受けよう。
登山計画書
計画内容がすべて決まったら、登山計画書にまとめる。上に掲げたのは一例だが、表が計画書、裏に装備表が印刷されている。ここに必要事項を書き、人数分印刷してメンバーに配る。また、計画書で設定してある「留守本部」の人にもかならず渡しておく。
登山届の提出
登山計画書を登山届として、道府県警本部か入山する山域の警察署に提出する。提出は一部の山域では条例などで義務付けられている。多くの山域では任意だが、かならず提出してほしい。その理由は、遭難事故発生のとき、登山届があるかどうかで、捜索活動の実効性が大幅に変わるからだ。
登山届は複数の方法で行なうことができる。推奨する順に次のとおり。
①自治体・道府県警への電子申請
②自治体・道府県警と連携しているSNS(コンパス、ヤマップなど)
③道府県警、管轄警察署、林業事務所などへの郵送、FAX、メール添付
④登山口などに設置された登山届ポストへの投函(回収は最も遅くなる)
プロフィール
野村仁(のむら・ひとし)
山岳ライター。1954年秋田県生まれ。雑誌『山と溪谷』で「アクシデント」のページを毎号担当。また、丹沢、奥多摩などの人気登山エリアの遭難発生地点をマップに落とし込んだ企画を手がけるなど、山岳遭難の定点観測を続けている。
雪山登山入門
雪山登山には、厳しくも美しい山々の表情に出合えるだけでなく、夏山とはまったく違う面白さがある。しかし、氷雪や天候に由来するリスクも多いため、確実な技術と充分な体力が必要だ。
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