登山道が雪に覆われる雪山。さて、どう登る?

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雪山登山の技術、装備、初級〜中級者におすすめの雪山ルートを一冊にまとめた書籍『入門とガイド 雪山登山 改訂版』から、雪山登山のアウトラインについての解説を抜粋。夏山とはまったく異なる雪山登山のイメージを膨らませよう。

文・写真=野村 仁

雪山登山のアウトライン

雪山登山がどんなふうに進むのか、それぞれの問題点を考えながら、アウトラインをたどってみよう。

車道・林道のアプローチ

現代の登山事情は路線バスなどの公共交通機関は不便で、マイカー利用中心になってしまう。雪山登山ではその傾向がさらに強い。

交通機関利用の場合は運行状況を調べるのが必須になる。豪雪地域の山ではアプローチの車道・林道をタクシーでどこまで入れるかが最初の関門になる。入山前夜の天気によって条件はすぐに変わる。前日に雪が降るとタクシーは山奥へ入れなくなり、登山者は手前で降ろされて長い車道歩きをしなくてはならない。

マイカーはもっと事情が悪く、無理に奥まで入りすぎると、帰りには雪で車を出せなくなる危険がある。

見方を変えると、車道歩き、林道歩きは危険も少なく、雪山の風景を眺めながら、純粋に歩きを楽しめる区間でもある。ただ、地形によっては側壁や沢筋から雪崩が起こることも充分にあり得るので注意しなくてはならない。

通行止めとなっている県道を歩いて下山(向白神岳)
通行止めとなっている県道を歩いて下山(向白神岳)

樹林帯

登山口からしばらくの間は樹林帯を登ることになる。樹林帯は雪は多いが、強風の影響のない安全な場所である。コースを外さないように注意しながら、歩くことに専念できる。

太平洋側の山、1000m級の低山や、日本海側の山でも初冬期で積雪が少ないときは、基本的に無雪期の登山道(一般に「夏道」と呼ばれる)を忠実にたどる。夏道を一歩外すと、新雪で隠された灌木やヤブに乗って、ズボッと踏み抜いてしまう。こうなると、足を引き抜こうとしてまた踏み抜き、なかなか抜けられずに、わずか数歩で大きく消耗してしまう。

積雪が多くなれば斜面のヤブや下草は完全に雪に埋まり、踏み抜きはなくなり、どこを歩いても大差ないような状況になる。ここを突破してゆくのは、ラッセルを続ける体力次第になってくる。雪山技術として説明されることが少ないラッセルだが、積雪の深さはもちろん、雪質によっても状況はかなり異なる。ひざを少し超すぐらいなら、無雪期のコースタイムの1.2〜1.3倍で歩けるかもしれない。腰の深さになれば1.5〜2倍でも足りないだろう。無雪期に1日で歩いた行程が丸2日かかってしまうことも、厳冬期の雪山では特別なことではない。

トレースのある樹林帯を行くのは楽しい(日光白根山)
トレースのある樹林帯を行くのは楽しい(日光白根山)
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プロフィール

野村仁(のむら・ひとし)

山岳ライター。1954年秋田県生まれ。雑誌『山と溪谷』で「アクシデント」のページを毎号担当。また、丹沢、奥多摩などの人気登山エリアの遭難発生地点をマップに落とし込んだ企画を手がけるなど、山岳遭難の定点観測を続けている。

雪山登山入門

雪山登山には、厳しくも美しい山々の表情に出合えるだけでなく、夏山とはまったく違う面白さがある。しかし、氷雪や天候に由来するリスクも多いため、確実な技術と充分な体力が必要だ。

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