一歩のつまずきが命取りになることも。アイゼン歩行は確実に

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アイゼン歩行は雪山に登る上で欠かせない技術だ。雪山登山の技術、装備、初級〜中級者におすすめの雪山ルートを一冊にまとめた書籍『入門とガイド 雪山登山 改訂版』から、アイゼン歩行の基本を紹介する。知識を得たら安全な斜面で繰り返し練習して、確実な歩行技術を身につけよう。

文=野村 仁、イラスト=江崎善晴、イメージ写真=PIXTA

アイゼン歩行

ピッケルの持ち方

ケインポジション

ピッケルのヘッドを持って杖のように使う持ち方。ピックを前にするときは、ブレードの上面に手のひらをおき、シャフト上部の穴に親指を添える。中指・薬指・小指の3本でブレードを包んで軽く握り、人さし指は自然に伸ばす。これが最も基本的なピッケルの持ち方だ。

ブレードを前にする持ち方もある。ヘッドの形から、ピックが前の持ち方よりも深く握り込む感じになる。この持ち方は滑落停止のフォームにすぐ入れるので、滑落の危険を感じる場面ではこれに替えるとよい。初級者は平地や登りではピック前、下りではブレード前の持ち方がいいだろう。

ピック前
登りで多く使う

ブレード前
滑落の危険があるときなどに使う

ブレード前
滑落の危険がある
ときなどに使う

クロスボディポジション

一方の手(多くは利き手)でブレードを前にしてヘッドを持ち、さらに親指をブレードの下に回し入れてしっかり握る。他方の手はスパイクの少し上でシャフトを握り、胸〜腰の高さに構える。これがクロスボディポジションだ。この持ち方は滑落停止でよく使うほか、急斜面で山側にスパイクを突いてバランスをとるときなどに使う。

クロスボディ
滑落停止のときなどに

スイング
ピックを打ち込みたいときなどに

スイング
ピックを打ち込みたい
ときなどに

アイゼンの装着

アイゼンの装着自体は簡単にできる。オーバーミトンやグローブで装着できるように何度も練習しておきたい。

実際の雪山では、まず雪を踏み広げてしっかりした足場を作り、安定した態勢でできるようにする。

靴についた雪をよく落とし、それから雪の上にアイゼンを置いてベルト類を広げる。靴底を合わせ、ビンディングをセット、ナイロンバンドを締めて装着すればよい。バンドは締め方が甘くならないようにするが、足が締めつけられるほどきつくしないこと。

ビンディングは確実にはめ込む

ビンディングは
確実にはめ込む

ベルト類はねじれやゆるみがないように

ベルト類はねじれや
ゆるみがないように

バックル類は外側に

サイズが合っていない場合、
出っ張り部分は外側に

サイズが合って
いない場合、
出っ張り部分は外側に

基本姿勢

ピックを前にしたケインポジションでピッケルを持ち、体の横に自然に構える。平地か緩斜面で、無理のない狭い歩幅で歩いてみよう。そのとき、両足のかかとの間を約10㎝(こぶし1個分)の距離をあけて歩く。これはふだんの歩き方とは大きく異なる点だが、しっかりと意識して行なう。

アイゼンをつけた靴底は、雪面に対して平行(フラット)に置いて荷重するようにする。こうすると全部の爪が雪に刺さるので安全度が高く、ふくらはぎの疲労も少ない。このことをフラットフッティングといい、アイゼン歩行技術の最重要事項となっている。

両足(かかと)の間隔を10cmぐらいあけて足を運ぶようにする

フラットフッティング
ソールを斜面にフラットに置いて、前爪以外の全部の爪が雪面に刺さるようにする

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プロフィール

野村仁(のむら・ひとし)

山岳ライター。1954年秋田県生まれ。雑誌『山と溪谷』で「アクシデント」のページを毎号担当。また、丹沢、奥多摩などの人気登山エリアの遭難発生地点をマップに落とし込んだ企画を手がけるなど、山岳遭難の定点観測を続けている。

雪山登山入門

雪山登山には、厳しくも美しい山々の表情に出合えるだけでなく、夏山とはまったく違う面白さがある。しかし、氷雪や天候に由来するリスクも多いため、確実な技術と充分な体力が必要だ。

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