バックカントリーでは滑走終了後の到着場所をイメージして準備、入山を 島崎三歩の「山岳通信」 第331号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2024年2月28日に配信された第331号では、バックカントリーでの遭難が相次いでいることを指摘。滑走後の行き先などをイメージして準備、入山するように呼びかけている。

 

2月28日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第331号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 2月16日、北アルプスの五竜岳で、3人パーティでバックカントリー滑走のために入山した36歳と25歳の男性、26歳の女性が、滑走中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。3人は無事に救出された。

  • 2月17日、根子岳で、3人パーティで入山した49歳の女性が、下山中に仲間とはぐれて行動不能となる山岳遭難が発生。女性は無事に救出された。

  • 2月23日、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、2人パーティで入山した65歳の男性が、硫黄岳付近を登山中に同行者とはぐれ、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 2月24日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、3人パーティで入山した58歳の男性が、御小屋尾根を下山中にスリップして転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 2月24日、戸隠連峰の西岳で、4人パーティで入山した41歳の男性が、P1尾根を下山中に滑落する山岳遭難が発生した。

  • 2月24日、戸隠連峰の西岳で、2人パーティで入山した58歳の男性が、P1尾根を下山中に滑落する山岳遭難が発生した。

  • 2月25日、北アルプスの唐松岳で、3人パーティでバックカントリー滑走のために入山した33歳の男性が、滑走中に同行者とはぐれて道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

2月3週は、2件の山岳遭難が発生しました。2件ともバックカントリー中の遭難で、道迷いや積雪が多く滑走中に身動きが取れなくなり行動不能に陥るといった遭難でした。
「バックカントリーエリアで道迷い?」と不思議に思う方も多いかと思いますが、スキー場管理区域外や沢筋など初めて滑走する場所では、「滑走後はどこに通じているか?」や「ハイクアップは必要なのか?」など事前にルートを調べる必要があります。「シュプールがあるから大丈夫だろう」と思わず、しっかりとした計画や装備を準備して入山しましょう。

2月4週は、八ヶ岳連峰で2件、戸隠連峰で2件、バックカントリーエリアで1件の計5件の遭難が発生しました。戸隠連峰で発生した遭難は、上級者向けのP1尾根で発生し、2件とも鎖が設置された急な尾根を下山中に滑落しました。
現場付近は、鎖が凍結し、稜線付近は岩と氷雪が混在したコンディションとなっていました。バリエーションルートでは、ほんのささいなミスが命取りとなりますので、アイゼンやピッケルを適切に使用し、危険箇所の通過にはロープを積極的に使用するなど、安全を第一に慎重な行動をお願いします。

バックカントリー遭難は、本年に入りすでに15件の遭難が発生し、うち9件が道迷い遭難です。バックカントリーエリアは雪の斜面を滑走するため、方向を見誤りやすく、尾根と沢の位置関係を把握していないと自分の現在地が分からなくなり、樹林帯や悪天候など見通しが利かない地形では、さらに迷い込んでしまいます。
滑走する前に、方向や全体の地形などをGPSや地図などで確認し、滑走中も自分の現在地をこまめに確認しましょう。

登山やバックカントリーは、自然を相手にするスポーツです。登山計画を立てる際には、行動ルートや天気予報の確認だけではなく、予定しているコースや山域にどのような危険があるのか、過去にどんな遭難が発生しているのか、といったところまで調べ、必要な装備を整えてから入山しましょう。
アクシデントに備えて、非常食・飲料、ビバーク装備や防寒着も忘れずに携行してください。 

 

スキー場およびバックカントリーエリアにおける日本人向け安全啓発動画

長野県では、スキー場およびバックカントリーエリアにおける安全啓発動画を日本人向けにも公開しています。

長野県内のスキー場利用の注意点、バックカントリースキーの魅力とリスクや安全に楽しむ方法について、ぜひ事前にご覧ください。

スキー場編

バックカントリー編

⇒長野県山岳総合センター啓発動画一覧 
(長野県山岳総合センター Youtubeチャンネル)

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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