テント泊を彩るランタン3種を岳沢→涸沢で連夜チェック オービット、ボーディ、エムパワードアウトドア

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今月のPICK UP

ブラックダイヤモンド/オービット [ロストアロー]

価格:3,600円+税
電源:単4アルカリ4本
最大点灯時間:70時間(ランタンモード/低照度)
重量:132g (電池込)

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エーデルリッド/ボーディ [マジックマウンテン]

価格:7,000円+税
電源:USB充電式リチウムイオン充電池
最大点灯時間:90時間
重量:90g (電池込)

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エムパワード/エムパワードアウトドア [エム・シー・エム・ジャパン]

価格:2,980円+税
電源:太陽電池+リチウムイオン電池
最大点灯時間:12時間
重量:125g

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カラフェス山行でいっきにテスト!

7月28~31日、北アルプスの涸沢を中心に行なわれたイベントが「ヤマケイ涸沢フェスティバル」。僕も「テント泊講座」などに出演し、まさにテント泊の数日を過ごしてきた。その際にお供に持っていったのが、ブラックダイヤモンド「オービット」、エーデルリッド「ボーディ」、エムパワード「エムパワードアウトドア」という小型ランタン3種である。

涸沢の会場に入るには、あえて遠回りのコースを選んだ。最短ルートである横尾経由ではなく、上高地から岳沢に上がり、まずは1泊。翌日は前穂高岳経由で奥穂高岳に登り、涸沢に下りて行くのである。たんに会場入りするよりも時間と体力を使うことになるが、せっかく穂高の山域に入るのだから山頂にも登ってやろうと考えたわけである。

というわけで、こちらは岳沢から見た上高地。

横尾に向かう梓川沿いの道に比べて人が少なく、岳沢は北アルプスのなかでも僕のお気に入りの場所のひとつだ。

居心地のよいポイントにテントを設営し、ひと安心。

しかし少しすると雨が降り始めた。本当は明るいうちにそれぞれのランタンの特徴がわかる細部カットを撮影しておきたかったが、こうなると仕方がない。早々にテントのなかにもぐりこみ、真っ暗になってからそれぞれのランタンを点灯してみた。詳しい特徴は後に述べるので、まずはテント内で使用しているイメージを簡単に確認してほしい。

こちらがブラックダイヤモンド「オービット」。

通常の使い方であれば、LEDライトが上部にあるため、光もテントの上に集まりがちだ。言い方を変えれば、床の方向は少々薄暗い。しかしランタンの下にも大きめのLEDがつけられており、スウィッチひとつで下の写真のように下方へ光を照射できる。

スポットライト的な光になり、広範囲には照らせなくなるが、こうすれば寝袋に入って寝転んでいても充分な光を得られる。

次にエーデルリッド「ボーディ」。

LEDの上に半球のホヤがつき、かなり理想的な状態でテント内へ光を拡散している。ただ、吊るす際に付属のフックがないために、別途なにかを用意する必要がある。今回は小型のカラビナを利用した。

最後にエムパワード「エムパワードアウトドア」。

ここ数年で増えてきた、空気を入れて膨らませる“エアランタン”の最新型だ。収納時は比較的コンパクトだが、使用時はかなり大きめに変身。明るさもなかなかのものだが、ホヤに当たる透明なビニール的な素材にはどうしても少しシワが寄ってしまう。そのためにテント内に拡散される光には線が入り、明るさにも濃淡もできてしまった。

簡単にテストしただけでも、それぞれの特徴が大雑把にはチェックできた。細かい部分は涸沢に到着してから改めて確認しよう。

翌日は重太郎新道で一気に標高を上げていく。

ガスが漂うなかに浮かぶ奥穂高岳から西穂高岳へと延びる稜線も美しい。しかしまあ、急登だ。通常のテント泊用の装備以外に、イベントで使うために持って来た山道具が加わり、さらにランタンも3種持っているわけで、僕の荷物はかなりの重量。歩いているうちに大汗をかいてしまった。ちなみに、「オービット」が132g(電池含む)、「ボーディ」が90g、「エムパワードアウトドア」が125gである。

奥穂高岳の山頂を越え、ザイテングラードから涸沢を見下ろす。

時間が早いのでテントの張り数はまだ多くはないようだ。しかし、巨大テントも設営され、どことなくこの日から始まる涸沢フェスティバルの活気が伝わってきた。

コンセプトの違うLEDランタンの詳細

会場に到着し、自分の出番の合間に3つのランタンを再度確認する。

左の写真が収納時で、右の写真が使用時。「オービット」はホヤを引き出し、「ボーディ」はグリーンのパーツを立て、「エムパワードアウトドア」は膨らませてある

では、「オービット」から。これは小型で軽量なLEDランタンとして、数年前に発売されると爆発的人気になった大定番である。僕も初期モデルを使い続けているが、このリニューアル版には底部にもライトがつけられ、いっそう進化している。

先のテント内の写真でもわかるように、この工夫によってテントの床面も明るく照らせるようになり、使い勝手がとても向上している。また、懐中電灯のように手で持てば、フラッシュライトとしても便利に使えるのがいい。テントまわりで使う程度なら、ヘッドランプをわざわざ頭に取り付けなくてもすむのである。

フックが二重になっているのは初期モデルと同様だ。

テント内のループに取り付けたときの安定度が高まり、強風でテントがあおられても頭上から落ちてくる心配がない。地味ではあるが、これがじつに有用な工夫であることは、これまで使い続けている僕自身がよく知っている。

必要なバッテリーは単4が4本。これで最大70時間点灯する。

今回は付属していたアルカリ電池をそのまま使った。そういえば、何度も充電できるのが便利だからと、山中でも繰り返し充電できる市販のニッケル水素電池を使う人も多いが、低温化では力を発揮しにくく、電圧が低いために光量が低くなるデメリットがある。山中ではやはりアルカリ電池の使用をお薦めしたい。

「ボーディ」にはさまざまな工夫がこめられている。例えば底部にはグリーンの平たいパーツがつけられており、これを引き出すとランタンの足になるのである。

足の角度によって光の方向も微調整でき、テント外のテーブルや石の上に置くときに重宝する。ただし、この部分がフック状になっていないためにテントのループに直接引っ掛けることができないのが難点だ。しかし底面はマグネットになっており、クルマのボディなどに貼り付けられるという工夫も加えられている。

半球のホヤは柔らかなシリコン製で、地面に落としても割れず、簡単に取り外せる。

ホヤをつけていれば光を柔らかく拡散し、外せばスポットライト風のいくぶん直線的な光になる。ホヤの着け外しはワンタッチとはいかないが、面白い工夫である。

バッテリーは乾電池ではなく、USB充電式リチウムイオン充電池。

自宅でフル充電して持っていき、光量を抑えれば90時間もつが、明るくして使用すると短時間でバッテリー切れの恐れもある。スマートフォンなどと兼用できるUSBポート付き充電器を持っていき、山中で充電しなおすことは可能だが、この点は少々心配だ。

しかしバッテリー切れの心配が少しでも減るようにと、サイドにはインジケーターがつけられている。

ブルーであればバッテリーにはまだ余裕があり、オレンジになるとバッテリー量が減少しているというわけである。オレンジになったら光量を抑えて使うなど、ひとつの目安になるだろう。

そして「エムパワードアウトドア」。ソーラーパネルをもち、定期的に太陽の光を浴びせておけば、乾電池もUSB接続による充電の必要もない“エアランタン”の最新型で、僕もすでに同種のランタンはいくつか使ってきた。

その「最新」の特徴のひとつは、ボーディ同様にバッテリー残量がわかるインジケーターを付属していること。ブルーのライトの3段階で残量が表示され、点灯数が少なくなったら、早めに太陽に当てておけばいい。だが、このインジケーターの光量はわずかなので、明るい日中はかなり判断しにくい。フル充電までは最短で7時間しかかからず、最大で12時間点灯するが、暗い場所や夜にこまめに確認しておくとよいだろう。

空気を入れて膨らませる“エアランタン”ゆえに、収納時と使用時のサイズの差は大きい。

ホヤが透明なので、つぶしたままでも中途半端に膨らませた状態でもかなり明るい。しかし先に述べたように、しっかりと膨らませてホヤのシワをできるだけとらないと、光に無用な影や濃淡ができてしまう。面倒でもパンパンになるまで膨らませて使いたい。

イベントが終わっても、夜はテストです。

今回のヤマケイ涸沢フェスティバルでは、さまざまな講演やイベントが行なわれた。

上の写真は、日本百名山を“ひと筆書き”で登る「グレートトラバース」で知られる田中陽希さんの講座の様子。僕のグリーンのテントはたまたまその会場の横にあり、ちょっと邪魔そうである。いやはや申し訳ない……。

この日の夜には会場内の大型テントのなかに3つのランタンを取り付け、それぞれの光量(最大の場合)をもう1度チェックした。下の写真の右が「オービット」、中央が「ボーディ」、左が「エムパワードアウトドア」である。撮影時に露出の調整はしているが、ほぼ見た目の明るさに近付いた画像に処理してある。

いちばん明るいのは、185ルーメンの「ボーディ」。次に105ルーメンの「オービット」。最後が「エムパワードアウトドア」(ルーメン数不明)となる。とはいえ、最大光量が高ければいいというわけではない。そもそもどのモデルも光量の調整ができ、「オービット」は乾電池、「ボーディ」はUSB充電池、「エムパワードアウトドア」はソーラーパネルと電源はさまざまで、バッテリーのもちも違えば、総重量も異なる。どれほどの明るさが必要か、何時間明るさを保てばよいのかなど、使う人それぞれの基準で選ぶのが現実的だ。

そのうえで、僕の好みでいちばん欲しいものといえば「ボーディ」だ。あらかじめフックが付いていればもっと使いやすく、乾電池も併用できる工夫があればバッテリー切れの心配がなくなるとは思うが、非常に小さいのに最大光量が高く、壊れないシリコン製のホヤもすばらしい。さらに、じつは防水でもあるのだ。

定番の「オービット」も、手持ちのものからこのリニューアルモデルにチェンジしたくなった。以前からテント内で使うには床面を照らしにくいと感じていたが、底部についた大型LEDによって問題は解決。バッテリー交換が簡単な乾電池式には安心感があり、手持ちで使えるのも便利だ。これで防水仕様に改良してくれれば、ますますうれしい。

LEDランタンの進化の方向を示しているのは、間違いなく「エムパワードアウトドア」だ。なにしろソーラーパネルで充電するので電池代がかからず、行動中にバックパックに取り付けておけば、ある程度は充電が進む。それに充電量があまり多くなくても一晩くらいは充分に明るい。
現在のこのようなエアランタンに共通する問題は、スウィッチの仕組みが単純過ぎ、バックパック内部に収納しておくと、他の荷物に触れていつの間にかボタンが押されてしまい、無用に点灯してしまうことだ。だから、到着後にバックパックを開けると、ランタンが点灯しているのである。自分自身の経験でいえば、消灯したまま持参できるほうが珍しいほど。せっかく自宅で充電しておいても山に到着したときにはバッテリーが少なくなってしまい、非常にもったいないのだ。なんらかのロック機能をぜひつけてもらいたい。そしてもう少し小型&軽量になり、ホヤなどの素材が向上すれば、一気に他のランタンに取って代わる存在になりえる。ランタン界の新顔だけに改良の余地はまだ多いが、その可能性は最大なのではないかと思う。

LEDランタンの個性はさまざまだ。各モデルの特徴を見極めたうえで、自分好みのものを見つけてもらいたい。

(写真協力=喜友名星華)

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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