魅了されて35年。菊池哲男さんと白馬岳

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

高山植物の宝庫で、北アルプスのみならず日本アルプスにおける花の王国と称される白馬岳(しろうまだけ、はくばだけ)。この山の四季折々を35年以上撮り続ける菊池哲男さんの写真展「白馬四季」が2024年4月5日に始まる。そのなかから、作品をいくつか紹介しよう。

文・写真=菊池哲男

野平(のだいら)の一本桜と残雪の白馬三山(5月上旬)/白馬の谷を挟んで白馬連峰と対峙する野平集落には有名なオオヤマザクラの一本桜がある。この日は白馬岳へと大雪渓を登る日だったが、ちょうど雲海が入って街並みが隠れ、理想的な条件となった(Nikon Z7 70-200mm f4G 1/1000秒 F4 ISO200 WB:自然光オート)
清水谷(しょうずたん)源頭のお花畑と剱岳遠望(7月下旬)/白馬岳は高山植物の宝庫。あちこちに大きな群落、お花畑があるのが特徴だ。この作品は清水谷源頭で撮影したもので、剱岳を背景にハクサンイチゲとシナノキンバイの共演となった(Nikon D800E 24-70mm f/2.8G 1/80秒 F16 ISO100 WB:晴天)
紅葉するナナカマドと白馬鑓ヶ岳(9月下旬 大出原)/白馬鑓温泉の上部にある大出原は、白馬鑓ヶ岳を背景にさまざまな高山植物が咲き乱れる広大なお花畑で知られているが、紅葉の話はあまり聞かない。それならばと狙って出かけたワンショット!(Nikon D850 24-70mm f/2.8G 1/100秒 F14 ISO200 WB:晴天)
白馬三山の夜空を彩る冬のダイヤモンドたち(2月中旬 栂池自然園上部)冬の夜空は1等星が多くてにぎやかだ。この作品はパーシャルソフトフィルターの利用により、明るい星が滲んで大きくなり、オリオン座や冬の大三角などがより認識しやすくなっている(Nikon Z6 24-70mm f/2.8G 15秒 F2.8 ISO3200 WB:オート パーシャルソフトフィルター)
晴れ行く白馬三山(1月下旬 八方尾根)/ゴンドラとリフト2基を乗り継いで八方池山荘に着いたときは北アルプスの上部はガスが垂れ込めてその姿を見せなかったが、日が傾くにつれて白いベールを脱ぎ、その容姿を現わしてくれた(Nikon Z7 Z24-200mm f/4-6.3 1/800秒 F8 ISO200 WB:晴天)


多種多様な高山植物の宝庫で、アルプスの女王と称される白馬岳(2932m)。冬には国内屈指の積雪量があり、この多量の降雪が夏には豊富な残雪となって数々の高山植物を育み、お花畑と呼ばれる大きな群落をつくる。山麓では例年GW頃に桜が満開になり、田植えが行なわれるが、3000m級の山々には多くの残雪があって、まだまだ雪も降る。

この山の四季折々を35年以上撮り続けてきた。2005年、最初に山と溪谷社から出版した写真集『白馬 SHIROUMA』は全作品がフィルムによる撮影だった。続いて2011年『白馬岳 自然の息吹き』は6点のみデジタル。そして13年ぶりの『四季白馬』は全作品がデジタルだ。

撮り方も変化してきた。フィルム時代はほとんどの撮影で三脚を使用したが、デジタルになるとISO感度を適時上げることでシャッタースピードが上がり、手持ち撮影でも充分鑑賞に堪えられるようになった。もちろん朝夕夜の撮影では相変わらず三脚を使用しているが、シャッターチャンスは確実に増えたと言える。しかし使用機材や撮影スタイルが変わっても白馬岳のすばらしさは何も変わらない。今年も白馬岳に会いに行こうと思う。

菊池哲男写真展「白馬四季」

高山植物の宝庫で、北アルプスのみならず日本アルプスにおける花の王国と称される白馬岳。この山の四季折々を35年以上撮り続けた最新作の写真展を開催します。白馬岳をテーマにした写真集三部作の完結編となる写真集も小社から上梓予定。

会場:
富士フォトギャラリー銀座
東京都中央区銀座1-2-4
サクセス銀座ファーストビル4F
https://www.prolab-create.jp/gallery/

期間:
2024年4月5日(金)~11日(木)

時間:
10時30分~19時(土日は11時〜17時、最終日は14時まで)


写真集『四季白馬 アルプスの楽園』

10年以上にわたって撮影された白馬岳を中心とする後立山連峰の、決定版写真集。2024年4月16日発売

菊池哲男
発行 山と溪谷社
価格 3,960円(税込)
Amazonで見る

プロフィール

菊池哲男(きくち・てつお)

写真家。写真集の出版のほか、山岳・写真雑誌での執筆や写真教室・撮影ツアーの講師などとして活躍。白馬村に自身の山岳フォトアートギャラリーがある。東京都写真美術館収蔵作家、公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員、日本写真協会(PSJ)会員。

関連記事

編集部おすすめ記事