新緑の乾徳山へ。スリル満点の鎖場と展望を楽しむ

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読者レポーターより連休の登山レポをお届けします。させよしさんは鎖場と展望が人気の山梨県・乾徳山(けんとくさん)へ。

文・写真=させよし


ゴールデンウイークに、以前から気になっていた乾徳山に日帰り登山をしてきました。山梨県北西部に位置する二百名山の一座です。

JR中央本線塩山駅からバスで登山口に移動します。西沢渓谷に向けてのバスなので乗車客も多く、この日は3台で運行されていました。連休の中日ということで登山者の多くは泊まりでアルプスなどに向かっているのでしょうか。乾徳山登山口入口のバス停で下車する登山者は20人程度とかなり少なかったと思いました。

だらだらとした登りの車道を歩き、乾徳山登山口へ。ここから本格的な登山道に入ります。山萌ゆる5月の若葉の中を歩くことができました。

左手に谷を見ながら登りましたが、途中に倒木がありました。ハチが飛び交っていたので巣でもあったのかもしれません。

乾徳山・錦晶水の水場
錦晶水

途中の錦晶水の水場で長めの休憩を取りました。水は透明で冷たく癖のない味。位置的にも休憩を取るにはぴったりでした。物音に振り返ってみれば、シカがきょとんとした顔で不思議そうにこちらを見ています。登山者にも慣れているのでしょうね。特に怖がる気配もなく足元の草を食んでいました。そんな姿に癒され、英気を養って先に進みます。

乾徳山で出合ったシカ
シカ

国師ヶ原(こくしがはら)の十字路を過ぎるとかわいらしい役小角像を右手に、草原に囲まれた道をゆっくりと登っていきます。たった今まで森の中を歩いてきたとは思えない光景。富士山が近くに見えて大迫力の眺望になります。暖かい日の光の中、広い草原の中を進み、気分はちょっとした天国のようでした。

草原の中にはひときわ大きく目立つ岩があり、月見岩と情緒のある名前を付けられていました。その前には絵入りの親切な道標があり、それによるとどうやらここからが本番ということがわかります。

乾徳山・月見岩
月見岩

岩場に入って以降は険しい道が続きます。ここからはトレッキングポールは畳み、両手で登った方がよさそうです。連続する鎖場はもちろん、ロープが張られたところもありますし、木をつかみながら登る箇所も数多くありました。よじ登りながら行くことが好きな人にはたまらない道ではないでしょうか。手がかりをよく探しながら慎重に進みます。途中でぽっかりと体を崖にさらす所もあります。当日は風もなく、視界の開けた解放感に浸ることができました。

乾徳山・険しい道が続く
険しい道が続く

岩をつかみ、鎖をたどって進めば山頂が近くなり、山頂直下の鳳岩を拝むことになります。白く険しくその先には空しか見えず実に美しい岩だと思いました。険しく見えますが近くで見れば手がかりも多くあります。鎖を頼りにしながらしっかりと岩をつかんで滑落しないように登りましょう。不安であれば、脇には階段が設置してある巻き道もあります。

乾徳山・鳳岩
鳳岩
乾徳山・鎖場
鎖場

登りきれば岩の立ち並ぶ2038mの山頂に立つことができます。三六〇度に開けた山頂からは遠く富士、南アルプスなどの山並みを見渡せます。当日は風もなくて暖かく見上げれば青空のみの山頂を堪能することができました。しばらく山の醍醐味を味わいながら早々に下山を始め、帰路に着きました。

乾徳山山頂
乾徳山山頂

乾徳山入口から山頂をピストンしたのですが、全行程は7時間ほどとなります。難所も多く長めに歩く体力も必要です。余裕をもって早めに入山するのが安全だと思いました。避難小屋の高原ヒュッテがかなり広くしっかりしているので、ここで一泊しても贅沢な山行が楽しめるのではないでしょうか。

乾徳山は森あり草原あり岩ありの贅沢な名峰でした。ぜひ足を向けてみていただければと思います。

乾徳山・高原ヒュッテ
高原ヒュッテ

MAP&DATA

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コース

乾徳山登山口~国師ヶ原~乾徳山・往復(参考コースタイム:7時間20分)

させよし(読者レポーター)

させよし(読者レポーター)

2017年の誕生日に思い立って登山を始めて、ゆるく関東近郊から北アルプス周辺までの登山を楽しんでいます。山のアクティビティ全般が好きなので、最近は仕事でなければ山に向かう日々です。

この記事に登場する山

山梨県 / 関東山地

乾徳山 標高 2,031m

 JR中央本線塩山・山梨市間で、北に奥秩父の前衛として、特徴ある山姿を見せてくれる。元徳2年(1330)、塩山の恵林寺を開山した夢窓国師が一夏座禅を組んで修行した山である。この恵林寺の乾(いぬい、易学では北西の意味)にあり、徳和村にあるので乾徳山というようになったそうだ。  山頂直下、国師ヶ原までの中腹は開拓牧場で、明るい草原である。山頂は巨岩累々、三角点を建植する余地もなかった。  山頂からの眺めは抜群である。1カ所に立って360度ぐるっと見渡せることを「1点360度の展望」というそうだ。  登山口の徳和まで車で行き(駐車場あり)、銀晶水、錦晶水、扇平を経て山頂へ。北側に下りて水のタル、国師ヶ原、道満尾根を経て徳和に帰ると、8の字回遊コースとなって登降に変化があって面白い。徳和から3時間強で山頂へ。

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