ヤマトイワナとは、なにものなのか?混沌とするイワナ分類の歴史【山釣りJOY】

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源流をめざして深山に分け入る山釣りの楽しみを紹介する雑誌『山釣りJOY』2024 vol.8から、地域差の大きいヤマトイワナの分類について考察するページを紹介する。

文=若林 輝、カバー写真=森田健太郎、イラスト=松島ひろし

DNA解析で分類学は大きく変わった

『淡水魚別冊 大島正満サケ科魚類論集』
ヤマトイワナの出自がわかる
『淡水魚別冊 大島正満サケ科魚類論集』

1981年に淡水魚保護協会から出版された、イワナ分類の大家とも言われる大島正満のサケ科魚類に関連する論集。「本邦産イワナ類に関する研究」[Ⅰ〜Ⅳ](1938年/植物及動物)や、「日本産イワナに関する研究」(1961年/鳥獣集報)など、日本のイワナの分類学に大きな足跡を残す研究が収められている。

それにしても、なぜイワナの分類は大きく変わってしまうのか? 形態的な検討を重ねた結果でもあるだろうし、オショロコマとイワナ(アメマス)のように生活史の研究が進み、別種である認識が深まった例もある。

加えて、ここ数十年で飛躍的に進歩したDNA解析による系統分類の発展が分類学を大きく変えたことも知っておきたい。たとえば亜種はそれまで体色などの形態を頼りに「似ているけど見分けがつくもの」とされてきた。だがDNA解析では「近縁なのに似ていないもの」や「遺伝的には大きく違うのに見分けがつかないもの」の存在も見えてきた。新たな混乱が生まれながらも、系統分類に基づく亜種分類の解釈が、より定着していったのではないか。亜種とは遠い将来、種に分化する過程であるという解釈だ。

雑誌『山釣りJOY』vol.8では、過去のイワナ分類の経緯をたどりながら、地域個体差の大きいイワナの謎について考察している。


山釣りJOY 2024 vol.8「ヤマトイワナ 釣り人が愛してやまない、深山幽谷の赤い点」

山釣りJOY 2024 vol.8
「ヤマトイワナ 釣り人が愛してやまない、深山幽谷の赤い点」(別冊山と溪谷)

発行 山と溪谷社
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山釣りの世界へ

源流域に生息するイワナとの出合いを求めて、釣り竿を手に谷を遡行し、沢音を聞きながら眠る。登山とは異なる角度から山を楽しむ山釣りの世界をご紹介します。

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