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長距離耐久レース仕様の高照度ヘッドライトをナイトハイクでテスト レッドレンザー/MH10

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2017年09月25日

今月のPICK UP レッドレンザー/MH10 [レッドレンザー]

価格:12,000円+税
重量:158g

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明るさ、照射距離、バッテリーなど、山行前に細かい仕様をチェック!

山道具のなかでも進化の度合いが目に見えて早いのが、ヘッドランプだ。単純な性能のモデルはともかく、山岳用の高機能なものほど開発が難しいため、新規参入してくるメーカーは少ないが、既存の会社はそれぞれに高機能な製品を毎年のように出している。そのなかでも、ここ数年で評価が高まっているメーカーが、レッドレンザーだ。今回はそんな会社の最新機種、「MH10」をピックアップしたい。

MH10の説明をする前に、まずはレッドレンザーのヘッドランプ自体の説明をしたほうがよいだろう。

最大の特徴は、遠近の照射の仕方だ。ヘッドランプのなかにはもとから近距離用、遠距離用に特化したものもあるが、最近の山岳用は、ひとつで遠近ともに照らせるものがメインになっている。その際、一般的なモデルでは、近距離は小型で少光量のLEDを使い、遠い場所は大型で大光量のLEDを使うなどと、別のLEDで照らしわけるが普通である。
だが、レッドレンザーのヘッドランプは、その多くが大型のLEDが一灯のみ。その代わり、LEDを覆うようにつけられたレンズが付けられ、これを調整することで近距離も遠距離も照らせるようになっている。

そのレンズの周囲につけられているのが、円形のリングだ。これを回すとレンズが前後に移動し、LEDとのあいだの距離が変わる。それによって、光が届く位置が変わっていくのだ。

左は遠距離を照らすべくレンズが出ている状態で、右は近距離を照らすためにレンズが引っ込んでいる状態。2枚の写真でレンズ内部のLEDの見え方が変わっているのがわかるはずだろう。

レンズが前後に移動する様子を別の角度から見た状態が、以下の写真だ。同様に、左が遠距離用のレンズが出ている状態で、右が近距離用のレンズが引っ込んでいる状態である。

レンズの可動域は5mmほど。無段階で調整できるので、実際には遠距離~中距離~近距離と照らせるわけである。また、上部のグリーンの部分は、オン/オフ、光量の調節など、すべての操作を行なうボタンとなっている。

実際にライトをつけてみると、以下のような状態になる。左が遠距離、右が近距離だ。遠距離を照射するときは前方に光を集中させ、近距離を照射するときは光を広範囲に拡散していることがわかる。

この写真は日中に撮影したもの。薄曇りだったとはいえ、昼間でもこれだけの光を感じさせるのだから、かなりの光量である。詳しいことは後述するが、MH10のパワーはなんと600ルーメンなのである。

光の方向はライト自体の角度を変えることで行なう。角度は5段階で変更可能だ。

わずかに下を向いているが、左がいちばん上向きな状態で、右はもっとも下向き。その差は45度ほどである。

バンドにはこんなパーツも付けられている。小型のクリップだ。

この部分を使うと、テント内に吊るすこともできる。行動中に使わないときはこれでバックパックなどに取り付ければ、紛失の心配も減るだろう。

ここまでは、レッドレンザーの既存のモデルにもあった機能である。だが、ここからはMH10ならではの特徴だ。

先ほど述べたように、MH10は600ルーメン。一般的には200~300ルーメンもあれば、大光量のヘッドランプなのだから、これはすごい数値だ。だが一方で、大光量のまま使用するとバッテリーの減りがひどく、一般の乾電池や充電池ではとてももたない。そのためにMH10には専用のリチウムイオン充電池が用いられている。単三乾電池を2回りほど大きくしたようなサイズ感で、少々重いが大容量だ。これをUSB接続で充電する。

このバッテリーは、最大光量(600ルーメン)で10時間、最小光量(10ルーメン)で120時間もつ。相当な充電量だが、80%までの充電であれば3時間で済むので、思いのほか時間はかからない。

バッテリーは防水性のケースに収められ、後頭部に位置する場所へバンドで固定される。ちなみにMH10の防水性は、「IPX4」。ごく簡単に説明すると、水中に沈めるといずれ浸水してくるが、水圧さえかからなければ全方位から水がかかっても内部への浸透がない、ということを表す指標だ。つまり、アウトドアでの通常使用であれば、まったく問題ないレベルである。

そのバッテリーケースの一部には、小さな赤いライトが付けられている。これは後部ライト。後ろにいる人に自分の居場所を知らせる役目を持っている。

MH10は、このような後頭部に位置するバッテリーケースと、前頭部にくるライト本体をバンドで連結し、頭をはさみこむようなスタイルで使用する。それぞれの裏側にはクッション性素材が使われているので、頭部へのフィット感もよく、違和感を覚えない。

大きめのバッテリーなどのためにMH10は重量158gになる。軽くはない。だが、このように頭に取り付ければ、さほど重さは感じない。

MH10には、2枚のフィルターとそれらを装着するためのカバーも付属している。

暗視用として使われる赤は目に優しく、消灯した直後でも視力があまり低下しない。緑は野生動物に警戒されにくいなどのメリットを持っている。

専用ケースも付属しているのもうれしい点だ。

一般的なヘッドランプよりも複雑な構造のMH10はバンドが絡みやすく、まとめて収納できるこのようなケースは重宝するだろう。

いざ、山へ! 日没を待ってギアインプレッション開始

今回、MH10を持って登ったのは、群馬県の小野子山。標高1208mの小高い山だが、前橋や高崎の街並みも遠望できる好展望地でもある。

MH10の性能を試すべく、僕はあえて午後遅めの時間から登り始めた。

山頂に到着したのは、17時過ぎ。それでも日没までには時間があり、涼しい風に吹かれながら、しばしのんびりする。

1時間以上も待つと、やっと太陽が山陰に隠れ始めた。僕はさらに暗くなってから、やっと下山を始める。テストのためのナイトハイクというわけだが、夜間行動はやはり緊張するものだ。

まだぼんやりと明るい状況だったが、早速MH10を点灯してみた。左がレンズの位置が遠距離用で、右が近距離用。600ルーメンの最大光量である。

周囲を樹木で囲まれていると、遠距離照射では照らせる範囲が少なすぎ、登山道がどこにあるのかわかりにくい。だが、リングを回して近距離照射にすると、登山道が浮かび上がってくる。こういう場所では、やはり近距離用のほうが歩きやすい。

次の写真は、左が10ルーメンの低光量にしたときで、右は600ルーメンの最大光量だ。うす暗い状態では道標の位置がわからず、見落としてしまいそうである。暗いときに低光量のライトをしか持たなかったり、バッテリーが消耗したライトを使ったりすることの危険性がよくわかる。

もっとも多くの登山道では600ルーメンの光量が必要な場面は多くはない。バッテリーを温存するためにも、普段はある程度は光量を落として使用したほうがよいだろう。しかし遭難を避けるためにむやみに移動しないようにと考え、止まったまま遠くにある道標や道を探すときには、最大光量にセットすればいいわけである。

先ほど登山道の上で遠距離照射、近距離照射を切り替えたように、今度は林道で同じことを行なってみる。ここでも左が遠距離照射で、右が近距離照射だ。

林道のような広い道では、遠距離照射の威力が明確に出る。何しろ、600ルーメンの状態であれば、カタログ的なスペックでは150mも光が届くのだ。距離を計測したわけではないので不確かだが、実際に自分の目で見た感じだと、もっと先まで認識できるような気がする。遠くにあるものを見定めるには、非常に便利だ。一方、近距離照射にすると、周囲の景色がクリアにわかる。ゆっくり歩いている分には、むしろこのほうが便利だ。

今度は頭上を照らしてみた。同様に、左が遠距離照射で、右が近距離照射だ。

枝葉で前方が完全に遮られていると、さすがに遠距離照射の意味はない。こういう場所で動物などを観察する際には、近距離照射のほうが向いている。

ここで先ほどの緑のフィルターを使うと、このような色合いになった。

今回はフィルターをしっかりとはめたわけではなく、試しにレンズ前にあてがってみただけなので、あまりきれいに撮影できているとは言い難いが、雰囲気はつかめるだろう。

完全に真っ暗になり、周囲はブラックアウト。樹木が邪魔で星や月も見えない。僕の頭のヘッドランプだけが、唯一の光だ。

光量を上げているとうまく写真に撮れないので、ここでは光を暗くしている。

こちらも左が遠距離照射で、右が近距離照射。

足元を照らすには、近距離照射のほうが適している。まあ、これほどの近距離もないのだから、当たり前だ。

さて、今度は頭の位置を変えないように心掛け、光の角度を変えてみる。左がいちばん上向きで、右がもっとも下向きだ。

同じ位置で撮影しているのに、光が当たっている場所が、ほぼ完全に上下にわかれる。状況に応じて、自分の使いやすい位置に調整するとよさそうだ。

ナイトランでも◎! 長距離・耐久レース仕様の実力を発揮

その後、僕はナイトハイクからナイトランへ移行した。そもそも、MH10はたんなる夜間行動というよりも、長時間の耐久レースなども想定したヘッドランプなのだ。僕も以前、「ハセツネ」の呼び名で知られ、24時間内に71.5kmを走る「日本山岳耐久レース」に出場したことがあるが、そのときのことが思い出される。ただし、こうなるともうまともには撮影できないので、次からはイメージカットのみで、あとは簡単に使用感だけを説明したい。

山中での夜間走行という行為は、夜間歩行に比べれば、段違いに難しいのは間違いない。通常はなんらかのレースでもなければ行なわないことだ。しかし、そんなときでもMH10の光量は申し分なく、最大光量時の照射距離、照射範囲は充分だ。ただし、600ルーメンの状態では10時間しかもたないため、秋以降の日照時間が短い季節には一晩続けて行動することはできない。先ほど述べた「ハセツネ」に出場するとしたら、光量をいくらか抑え、あと数時間使えるようにしなければならないだろう。もっとも600ルーメンは明るすぎるほど。むしろ光量を控えたほうがちょうどよいはずだ。

バンドのフィット感も上々で、上下動が激しい路面でも頭部でのずれは少ない。前方のライト本体、後方のバッテリーボックスの重量バランスもよさそうだ。ただし、遠距離照射と近距離照射の具合を変えようとしてリングをまわすときに、手荒くすると頭から外れそうになることもある。かためのリングを回すときに、少々力を入れなければならないからだ。もう少しリングが楽にまわるとよいのだが、そうすると今度は緩みやすくなるのだろう。この点だけは気をつけて使わねばいけない。

そういえば、後部の赤いライトも予想以上に目立っていた。写真の左側でほのかに赤味を帯びている部分のことである。

ひとりで撮影していると、使用時の写真がどうしてもうまく撮れないのが残念だが、これも雰囲気だけは伝わるのではないかと思う。

ナイトランに使えるのだから、ナイトハイクには当然使える。むしろMH10は、一般登山の観点からはオーバースペックといえるかもしれない。早朝の行動や、なにかのトラブルで夜間行動をしなければならなくなったときのことを考えても、ここまでの光量は必要ないと思える。だが、ナイトランナーにはとてもよさそうだ。レースなどに出場する際にはハンドライトなどと併用する人も多いだろうが、MH10はメインとして使うヘッドライトとして、大きな選択肢になるはずである。

その後も僕は林道を歩き続け、駐車場近くまで到達。おおむね近距離照射で使っていたMH10を遠距離照射にして、自分のクルマを探してみる。

おお、いた! 光がリフレクターに反射し、遠くからでもクルマの位置が確認できる。これで一安心。無事にテスト用のナイトハイク&ナイトランを終え、僕は闇深い小野子山をあとにしたのだった。

登山グッズ 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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