ついに登場!ライペン(アライテント)の1kg以下軽量山岳用テント ライペン/SLソロ|高橋庄太郎の山MONO語りVol.109
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はライペンの「SLソロ」を紹介します。
文・写真=高橋庄太郎
かつて、どこかのアウトドア系雑誌にこんなことを書いたことがある。「近年のテントはますます軽くなってきたが、ダブルウォールテントで1kgを切る時代は訪れるのだろうか?」などと。おそらく10年以上前のことだ。
現在の状況を見れば、そんなことを書いたことが信じられないほど、“ダブルウォールで1kgを切る”テントが珍しくなくなってきている。なにしろ日本の山岳テントの代表格であり、質実剛健なイメージがあるライペン(アライテント)までが1kg以下のテントを開発してきたのだから。それが今回取り上げる1人用テント「SLソロ」。重量はなんと900gである。
しかも、完全な“自立型”。ほかのメーカーの超軽量テントは、どれも“非自立型”もしくは、“半自立型”の設計ばかりなのだが、SLソロは重くなりやすい自立型なのである。
もっとも、ライペンは昨年「SLドーム」という2人用テントを販売し始めており、そちらも980gと1kg以下であった。しかし、なぜもっと軽く作れるはずの1人用ではなく2人用から販売開始をしたのか、僕は少し不思議に思っていた。メーカーとしてはまずは1kgを切るのが目的で、そこから逆算して大きさ(210×120×H95cm)が決まり、結果的に余裕がある2人用になったのかもしれない。あくまでも僕の想像であるが。
ともあれ、SLソロはダブルウォールで900gという超軽量テントだ。大きさは205×90×H95cmとSLドームよりも一回り小さくなっている。
まずはパーツをチェック
以下がSLソロのすべてのパーツだ。

インナーテント、フライシート、ポール、ペグという“基本パーツ”に加え、アンダーシート(グラウンドシート)があらかじめ加えられているのがポイントだ。
こちらがインナーテントとフライシート、そしてスタッフバッグ。

実測では、インナーテントが395g(ガイラインを含む)、フライシートが240gであった。
インナーテントの上側(黄色)の生地は、12デニールのリップストップナイロン。

フロア部分(茶色)は30デニールリップストップナイロンをPUコーティングして、防水性を高めたものだ。
それらに対し、フライシートは15デニールのリップストップナイロン。こちらもPUコーティングの防水加工が施されている。

インナーテントにせよ、フライシートにせよ。どちらも触っただけでその軽さと柔らかさが伝わってくる。
ポールの素材は、NFL8.7フェザーライト。重量は273gだ。

同じ素材の修理用ポールスリーブも付属している。
超軽量テントだけに、このポールはライペンの他のテントのポールよりも少し細身だ。

全体は視認性が高い青で、接合部分は赤になっている。
ここまでの「インナーテント、フライシート、ポール」までが、重量900gとしての“SLソロ”だ。なお、インナーテント395g、フライシート236g、ポール273gを足すと904gになったが、これは僕がざっくりと計測した数値でしかなく、誤差の範囲だろう。
必要なペグは12本。しかし、今回はテスト用のサンプルのため、先の写真では別のペグ(スティックペグ)になっているが、実際は新しいトライアングルペグ(1本10g)が付属する。
余談だが、総重量を軽く見せるためか、価格を抑えるためか、他社のテントにはテントとしての形状を作り出すだけの最低限の本数しかペグが付属せず、ガイラインなどの分は自分で買い足さねばならないものがとても多い。要するに、付属のペグだけでは正しい強度を出せないままで販売されているのだ。僕はそれが非常に不親切だと感じているが、さすがはライペン。SLソロにはガイラインを含むすべてに必要な本数が付属している。
そして、テントの下に敷いて使うアンダーシート。カタログ的なスペックでは150gとなっていたが、実測では143gとより軽かった。

これはもちろん軽量テントゆえの薄くて弱いフロア部分の生地の傷みを抑えるために使うものだが、地面が柔らかな草地の場合や、フロアが少々傷んでも徹底的に軽くしたいという人は使う必要はない。だから、“900g”のなかからは外されているわけである。
収納時の大きさは、スタッフバッグに入れたインナーテントとフライシートが25×19×8cm。これはカタログ的なスペックで、ストラップを絞ると実際はもっと圧縮できる。ポールは38cmである。

手で持ってみてもその小ささがよくわかる。
ちなみに、以下は同社のトレックライズ1と並べてみた写真だ。トレックライズ1は設営時の大きさが210×110×H105cmと、そもそものサイズがSLソロとは異なることには留意しなければならないが、「ソロ≒1」と似たサイズ感ではある。

トレックライズ1の収納サイズ(30×Φ14cm)と比べると、SLソロの小ささは際立つ。SLソロは超軽量性という点だけではなく、収納時のコンパクトさにも秀でているのである。
では、実際に山中で使ってみた……と進みたいところだが、その前にライペンのテントはフィールドで使用するために“いつも”の儀式を行なわねばならない。

すなわち、付属のシームコート(防水液)をフロア付近の縫い目に塗り、防水性を高めるのである。
こちらが塗った後。同様の作業をインナーテントの四隅で行なう。

この付属のシームコートは量が多いので、僕は裏側から防水されているような箇所にも念のために塗付しておいている。
フィールドでテスト開始
事前にシームコートを塗り終えておいたSLソロを山中で設営していく。地面は小石が多く、SLソロを直接張ると一発でフロアに穴が空きそうだった。

そこでアンダーシートをセット。この上に小石が散らばってフロアとの間に挟まったりしないように注意しながら、SLソロを張っていった。
次の写真は、アンダーシートの上に張り終わったテントの様子だ。

アンダーシートを使うのはちょっと面倒だが、SLソロの超軽量性を考えれば、こういう地面の場所では致し方ない。
以下は設営しながら撮影した、さまざまなSLソロの姿である。

少し引いて眺めると超軽量テントという印象はなく、既存のライペンのテントの新色、もしくは他社の山岳テントの新作にも見えなくはない。それだけ外見的なフォルムはこれまでのライペンのテントとほとんど変わらないのだ。
こちらは裏側から見た様子。

無駄をそぎ落とし、じつにシンプル。まさに日本の山岳テントの本流を行くデザインだ。
ポールは筒状のスリーブに通すタイプ。他のライペンのテントと同様である。

最近、他社の新作には吊り下げ式テントが多く、スリーブ式は減りつつあるタイプだが、簡単に設営できるのがいい。
インナーテントとフライシートはバックルで固定。

細いペグは地面への固定力が限定的であり、実際に付属することになるトライアングルペグも細身だ。場合によってはほかのものに変更するとよいだろう。
ガイラインはインナーテントにつけられている。

これをフライシートのスリット部分から外に出し、ペグで固定する。
出入り口のパネルはダブルファスナー。

開け方をいろいろと変えることができ、シングルよりも圧倒的に使いやすい。
内部の天井部には4カ所、小さなループが受けられており、ここにロープなどを通せば、モノを吊り下げられる。

また天井部近くにはベンチレーターもつけられている。
このベンチレーターはフライシートのベンチレーターと位置が同じで、連動して換気を行なう。

インナーテントのほうはメッシュで閉じられ、虫の侵入を防いでくれる。
このような特徴は、どれもライペンのテントらしいディテールだ。外観はもちろん細かな部分からも、SLソロはこれまでのライペンのテントの特徴を引き継いでおり、どこかのパーツを失くしたりするわけではなく、基本的には素材を軽くすることで超軽量に作り上げたテントなのだと理解できる。
だが、SLソロならではの工夫も見られる。

インナーテントの出入り口が正面右側に少しずらしてあるのだ。これはフライシートを張ったときに出入りがしやすいようにという工夫である。
これは昨年発売されたSLドームと同様だ。

ずらしてある位置は10cmほどでしかないが、使い勝手は予想以上に違う。なかなか優れたアイデアだ。
テント上部のベンチレーターと連動して換気を促す出入り口下部のベンチレーターは、少し小さい。

メッシュ生地と二重にすると使用する生地の面積が増え、テントとしての重量増になる。もっと大きくて風通しが良いほうが僕の好みだが、軽量化のためには仕方ないのかもしれない。
少し気になったのは、フライシートのファスナー部分だ。本来はフラップで覆われ、ファスナー部分からの雨水の浸透を和らげる働きがあるのだが……。

この日は風が吹いており、フラップが風でずれ、どうしてもファスナーが露出してしまうのだ。SLソロのフライシートの超薄手生地は軽量でもあり、それゆえにわずかな風でもまくり上げられてしまうのだろう。風とともに雨が降っていたら、インナーテントが濡れる原因になっていた可能性もある。小さな面ファスナーなどを取り付け、少々の風ではフラップがずれないようになっているとよさそうだ。
日が暮れ始める前に、内部スペースに装備を並べ、使いやすくセッティングしていった。

この日は快晴。テントのテストにはあまり向いていない天気だが、こればかりはどうしようもない。
さて、SLソロの縦幅は90cmである。

マットを敷いても横に40cmほどの余裕があり、1人分の荷物は充分に置ける。
こちらは荷物を配置し終わった、足元の様子。

ボリュームのある寝袋を広げてみると、過不足ないサイズだとわかる。
こちらは頭側の様子。

横幅は210cmで、身長177cmの僕が寝転んでも狭苦しくはない。
内部スペースで少しだけ残念だったのは、ポケットの位置と大きさだ。

ポケットは中央につけられているので、寝転んでいると手が伸ばしにくい。また、小さすぎて、ヘッドランプをひとつ入れられる程度しかない。これはより大きめにして、頭に近いほうにあったほうが便利そうだ。出入り口の位置を考えると、多くの人は僕と同じ方向に横たわるはずなので、正面右側ということである。
前室の奥行きは38cm。登山靴や水筒類は余裕で置ける。

これまた過不足ない広さであった。
それにしても、内部に入ってみると、SLソロの生地の薄さにあらためて驚かされる。

ちょっとしたフィルターがかかっているように見える程度で、外の景色がほとんど透けてしまうのだ。フライシートを閉じずには着替えなどできない感じだが、解放感があって僕は好きである。
新品のテントで眠る夜が近づいてきた。

これまでに屋外で何百泊もしてきたのに、今でもテント泊の夜はうれしくなるのが自分でも不思議だ。
そんなわけで夜も快晴と、良好なコンディションのまま、僕はSLソロのなかで快適に眠った。

しかし、これではSLソロの基本性能は把握できたものの、悪天候時の実力はよくわからないというのが正直なところなのであった。
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