南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑤徳島県の遍路道 区間ごとのアドバイス

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弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。

写真・文=岸田 明 トップ写真=玉ヶ峠の先にある神山遍路小屋付近から見る里の風景

目次

【区間1】第一番霊山寺から第十番切幡寺 1泊2日
公共交通の区切り:鳴門西PA/板東(ばんどう)駅~阿波川島(あわかわしま)駅/鴨島(かもじま)駅

第一番霊山寺(りょうぜんじ)から第十番切幡寺(きりはたじ)までの各霊場は、中央構造線上の吉野川左岸の平野部にある。心落ち着く美しい吊り灯籠が本堂にある霊山寺から遍路の旅をスタート、弁慶の力石のある第三番金泉寺(こんせんじ)にお参りした後、遍路道はおおむね住宅地や田畑の中を歩く。東西に連なる讃岐山脈の懐にある第四番大日寺(だいにちじ)へは、果樹園や林の中を歩く昔ながらの本格的な遍路道(現地では「旧遍路道」と表示)となる。遍路道の方向指示は大型ステッカー(下写真参照)や、小さな立て看板、矢印のシールなどがある。もし慣れれば、古い標石を確認しながら歩くのも趣きがある。

〉畑の中を通る大日寺への旧遍路道
畑の中を通る大日寺への旧遍路道

第六番安楽寺(あんらくじ)、第七番十楽寺(じゅうらくじ)は、竜宮城のような山門がかわいい。第八番熊谷寺(くまだにじ)には八十八霊場最大の立派な山門があり、第十番切幡寺では真言宗において重要な建造物である立派な大塔(多宝塔)が目をひきつける。ちなみに切幡寺は、山門は平野部にあるが本堂は333段の階段の上にあるので、遍路にとって初めての小さな試練かもしれない。切幡寺から第十一番藤井寺(ふじいでら)に向かって、正面に四国山地の山並みを見ながら進む。2つの大規模な潜水橋で吉野川を渡り、阿波川島駅に着く。

第六番安楽寺山門
第六番安楽寺山門
第七番十楽寺山門
第七番十楽寺山門
〉第八番熊谷寺の山門
第八番熊谷寺の山門

●アドバイス
第一番霊山寺への陸路は、高松自動車道(徳島自動車道ではない)鳴門西PAの高速バス停、またはJR高徳(こうとく)線の板東(ばんどう)駅下車が近い。霊山寺には遍路用品店があり、すべての遍路用品をそろえることができる。本区間は、里の遍路道である。第十番切幡寺山門までは平地を歩くので、自身の通常の平地歩行速度で歩けるだろう。

以下の参考行程データでは1泊目を第五番地蔵寺周辺としているが、第六番安楽寺、第七番十楽寺には宿坊もある。霊山寺出発時刻で宿泊場所を決めればよいだろう。

さらに本区間で重要なのは、次に控える【区間2】の初日が1日を要する長い「遍路ころがし」焼山寺道(しょうざんじみち)なので、本区間終了地点(継続の場合2泊目)を、遍路ころがし入口・第十一番藤井寺に近い阿波川島(あわかわしま)駅、または鴨島(かもじま)駅付近に設定する必要がある点だ。なお川島ルートにはコンビニエンスストアがないので、事前に食料などを購入しておくか、あるいはコンビニエンスストアのある鴨島ルートをとる。なお両ルート間で所要時間に大きな差はなく、川島ルートは2本の潜水橋を渡り、鴨島ルートは大河・吉野川の眺めのよい堤防を歩く。

行程・コース

最適日数:1泊2日 9時間40分
総歩行距離:36,318m /上り標高: 455m 下り標高: 474m
行程:鳴門西PA・・・第一番霊山寺・・・第二番極楽寺・・・第三番金泉寺・・・大日寺分岐・・・第四番大日寺・・・大日寺分岐・・・五百羅漢・・・第五番地蔵寺(※周辺で宿泊)・・・第六番安楽寺・・・第七番十楽寺・・・第八番熊谷寺・・・第九番法輪寺・・・切幡寺(仁王門)・・・第十番切幡寺(本堂)・・・切幡寺(仁王門)・・・大野島潜水橋左岸土手道・・・川島潜水橋北詰・・・川島駅八坂神社脇踏切・・・阿波川島駅
高低図
コースの詳細を見る
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プロフィール

岸田 明(きしだ・あきら)

東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。

四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/

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