奥武蔵に涼を求めて、滝と湖とスカリ山
読者レポーターより登山レポをお届けします。スラ男さんは奥武蔵の涼しいスポットを巡る真夏の低山歩きへ。
文・写真=スラ男
連日の猛暑、つらいですよね。そんな夏は標高の高い山で避暑と絶景を楽しみたいところですが、本レポートはどうしても低山がいい!というこだわりの強い方向けです。
盛夏の低山は一般的に避けた方がいいとされますが、滝や沢沿いを歩ける山なら涼を感じられそうです。埼玉県毛呂山町(もろやままち)から二つの滝と湖をめざします。
東武東上線を利用して毛呂山町へ。最初の目的地である公園までは東毛呂駅から路線バスが便利ですが、町なかを歩いていくのが好きなぼくは最寄りの武州長瀬駅で下車。駅から少し歩くと奥武蔵の山並みが風景に溶け込んでおり、町と山の近さを感じます。途中には「花の道ふくだ」というスポットがあり、季節の花々が鮮やか。お花好きのご夫婦が趣味で育てているとか。
炎天下の舗装路を1時間弱はなかなかつらいものですが、夏ならではのお花がここ毛呂山総合公園で見られます。濃い緑色の中で際立つピンクのハス。これは行田市から株分けされた古代蓮で、以前は公園内のプール跡地に咲き乱れ独特の景観を作っていましたが、ハスの成育環境を考えこちらの池に移転されたそうです。
公園からまた舗装路を歩いていくと、宿谷の滝(しゅくやのたき)の看板が見えてきました。滝までは遊歩道が整備され、これまでの暑さを吹き飛ばすほどの涼感を得られます。ただちょっと気になるのが、これまでかいてきた汗を探知してやってくる羽虫の群れ。ハッカスプレーなど虫対策が必須でした。
羽虫を振り払いながら奥まで行くと、宿谷の滝が間近に迫ります。水量豊富な美しい滝で、夏休みになれば子どもたちが水遊びにもやってくるそうです。脇の岩壁にはイワタバコも咲いており、しばし夏を忘れる涼しさでした。
滝の上にある休憩所からか細い登山道を経て鎌北湖(かまきたこ)にたどり着きました。湖面をじっと見つめていると、勢いよく魚がジャンプ!釣り人やサイクリストが思い思いに過ごす湖畔を散策し、水辺の涼を得ようと試みましたが、さすがに暑さが勝りました。木陰は涼しいのですが。
鎌北湖からようやく本格的な登山道に入るのですが、これまでの暑さによるダメージが蓄積しています。焦らず無理せず臨みましょう。今年は驚異的な暑さにより、SNS上でも登山中の熱中症による遭難が話題になっていました。手間でもこまめな水分・塩分補給と適度な休憩を。睡眠不足や栄養不足も大敵です。
スカリ山は極めてマイナーな山ですが、奥武蔵好きの間では好展望の山として知られています。ベンチも設置されているので、火照った体をここでしっかり休ませます。吹き抜ける風の気持ちよさたるや。
スカリ山に隣接する観音ヶ岳も展望はありますが、それよりも山頂下にある大きな岩が存在感を際立たせています。北面の岩壁が観音様に見えることが由来だそうで、古くは修行の場だったのでしょう。この巨岩ももしかしたら磐座なのかもしれません。
観音ヶ岳からは奥武蔵グリーンライン上にある北向地蔵へ。日和田山方面へ行くことも可能ですが、この暑さでの山行継続は好ましくないので、ここから最短の下山ルート・五常の滝に向かいます。再び襲ってきた羽虫の大群と戦いながらたどり着いた五常の滝は、思っていたよりも迫力がありました。管理人さんのお話によると、ここ数日でいきなり羽虫が大量発生したとか。
ゴールの武蔵横手駅へたどり着くや否やゲリラ豪雨に見舞われました。これには駆け込んできたランナーさんたちも苦笑い。いや、まさか今日一番のクールダウンがゲリラ豪雨とは(笑)。西武秩父線で飯能駅まで戻り、食事や温泉でしっかりと体を労わってから帰途に着きました。
(山行日程=2024年7月20日)
グルメ激戦区!?名店ぞろいの奥武蔵

MAP&DATA
コース
毛呂山総合公園バス停~宿谷の滝~鎌北湖~スカリ山~北向地蔵~五常の滝~西武秩父線武蔵横手駅(参考コースタイム:4時間)※武州長瀬駅から毛呂山総合公園までは徒歩約50分

スラ男(読者レポーター)
関東近郊の低山をメインに活動。低山で出会う、人と山とが深く結びついた歴史や民俗などを調べるおもしろさにのめりこみ、低山ワールドのさらなる深みへ。そのおもしろさを親子で分かち合いたく、子どもたちの原体験を育む意味も込めて親子ハイキングを始める。
プロフィール
山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
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