南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑥南海トラフ地震と遍路

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。

写真・文=岸田 明 トップ写真=高知県土佐市にある安政地震(1854年)・津波の碑

目次

対策と装備

津波浸水想定区域には、数多くの津波避難場所や浸水域/域外に関する看板が設置されているので、歩いていれば必ず目に留まるだろう。また避難タワーも多く設置されているが、残念ながら遍路道の脇に立っているタワーは少ない。津波最重要警戒区間を歩く場合は、事前にその所在を確認しておこう。

歩き遍路であれば、津波対策として必要な追加装備は特にないだろう。ただし荷物軽量化の理由で普段携行していない装備がある場合は、一度見直しをしよう。対策として必ず持っておいてほしいものとしては、例えばスマートフォンの予備バッテリー、携帯ラジオ、サバイバルシート、ヘッドランプ(電池式)と予備電池、オレンジ色の手ぬぐいやタオル、手袋、非常食などだ。マイカーやツアーの遍路であっても長距離歩ける靴を履き、レインウェアも省かないでほしい。

〉高知県甲浦(白浜地区)にある防災タワー
高知県甲浦(白浜地区)にある防災タワー

さらに考えるべき災害

今回は主に地震に関する被害と対策について述べているが、遍路道は山間部を行く区間も多く、その一部には土石流の危険地帯もある。第六十番横峰寺(よこみねじ)への旧遍路道はその代表であるが、鴇田(ひわだ)峠の久万高原側の道、そして結願の寺・第八十八番大窪寺へ向かう女体山越えはそのリスクが高く、豪雨の後の通過は非常に危険だ。土石流や洪水の被害予測に関しても、ハザードマップで情報を得ることができるので、確認しておきたい。

また、夏から秋にかけては台風や大雨についても、注意を払う必要がある。場合によっては高波や、地盤が緩むことによる土砂災害のリスクがある。遍路歩き前であれば計画の見直しをしたり、遍路中でも天気予報や最新情報の確認をして、冷静な判断のもと、くれぐれも無理をしないでほしい。

〉女体山越えの美しい渓谷。ただし土石流特別警戒区域にある
女体山越えの美しい渓谷。ただし土石流特別警戒区域にある
NEXT 津波浸水想定区域の区間と霊場
1 2 3 4 5

目次

プロフィール

岸田 明(きしだ・あきら)

東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。

四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/

歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス

登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録

編集部おすすめ記事