パーティ登山では下山まで行動を共にすることが大原則。共に助け合い登山を楽しみましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第360号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第360号では、パーティーが別行動後に起きた遭難事案について言及。パーティ登山中は行動を共にすることが大原則であることを重ねて強調している。


9月19日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第360号では、期間中に起きた8件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 9月17日(火)、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、単独で入山した52歳の男性が、硫黄岳から赤岳鉱泉に向けて下山中に道に迷い、行動不能となった。

  • 9月17日(火)、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、2人パーティで入山した50歳の女性が、テント泊中に体調不良により行動不能となった。

  • 9月18日(水)、南アルプスの光岳で、単独で入山した66歳の男性が、南アルプス易老渡から光岳に向けて登山中、光石付近で滑落、負傷した。

  • 9月18日(水)、北アルプスの奥穂高岳で、4人パーティで入山した52歳の男性が、涸沢に向けてザイテングラートを下山中に滑落、負傷した。

  • 9月18日(水)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した63歳の男性が、涸沢に向けてザイテングラートを下山中に滑落、負傷した。

  • 9月19日(木)、八ヶ岳連峰の赤岳で、3人パーティで入山した40歳の女性が赤岳の地蔵尾根を下山中、足を滑らせて転倒、負傷した。

  • 9月20日(金)、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、2人パーティで入山した10歳の男性が、白馬鑓ヶ岳の山小屋に宿泊中に、体調不良により行動不能となった。

  • 9月20日(金)、南アルプスの南駒ヶ岳で、2人パーティで入山した59歳の男性が、登山後に同行者とは別ルートで下山中に道に迷い、行動不能となった。その後、9月22日に自力で下山した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週、長野県内では、8件の山岳遭難が発生しました。9月20日(金)、中央アルプス南駒ヶ岳で発生した山岳遭難 (2人パーティのうち1人が道に迷い、行動不能)について説明すると――

<1日目>
伊奈川ダム登山口から入山、空木岳周辺の山小屋に宿泊

<2日目>
南駒ヶ岳、仙涯嶺、越百山を経由して下山予定。
南駒ヶ岳で、Aさんが「予定通りのルートでは下山する自信がない」と別行動を開始。

  • Aさんは南駒ヶ岳から登山口に向けて下山
  • Bさんは予定通り、越百山を経由して下山

Bさんが登山口に到着するも、短いルートを下山したAさんが現われないため、Bさんが電波の通じる場所まで移動して、スマートフォンを確認すると――

  • 遭難をして、登山道に戻れない
  • バッテリーがなくなる

などのメッセージがあり、Aさんが遭難したことが判明しました。

<3日目>
Aさんの捜索救助を開始するも

  • 位置情報(GPS情報)が不明
  • 悪天候のため地上部隊は途中で撤退
  • 悪天候のためヘリコプターによる捜索ができない

などの理由から捜索は難航する。

<4日目>
Aさんは自力で登山道に登り返し、下山。

*   *   *

幸いにも、Aさんは無事に下山することができましたが、パーティ登山は行動を共にすることが大原則です。パーティ登山において、「疲れたから、先に行って」「○○で落ち合おう」「別行動してでも○○山に登りたい」という考えは単独行動中にアクシデントに遭った場合、対処が後手に回ります。共に助け合い、楽しいことも苦しいことも共有して、秋山登山を楽しみましょう!

また、予備バッテリーの携行やGPS機器やスマートフォンを使用して、位置情報を確認する方法の確認、登山地図アプリで行動の軌跡を残しておくこともお忘れなく!

 

令和6年度“秋山情報”を作成しました。#合言葉は無事下山

鮮やかな紅葉に包まれる秋山は、多くの登山者を魅了し、毎年、紅葉シーズンを中心に県内外から多くの登山者が信州の山々に訪れるほか、きのこ採りなど「山の幸」を求めて入山する人も数多く見られます。一方で、この時期、滑落や道迷い、低体温症、準備不足による行動不能などの山岳遭難が多発しています。

秋山は周期的な晴天に恵まれやすく、気候的にも登山に適していますが、日没時刻が早く、天候もひとたび崩れると真冬並みの寒さになるなど、秋山特有のリスクがあります。

“秋山情報”では、過去の遭難事例や秋山登山における注意点などを紹介します。安易な気持ちで登山することなく、最新情報の収集と事前準備を入念に行ない、体調を万全にして入山しましょう!

⇒長野県警察「登山Safety Book」 ~秋山山岳情報~ 
 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

編集部おすすめ記事