南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑧高知県の遍路道 区間ごとのアドバイス

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弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。

写真・文=岸田 明 トップ写真=塚地峠から見た、宇佐の集落と青龍寺のある横浪半島の宇都賀山

目次

【区間4】宿毛から第四十番観自在寺を経て宇和島へ(愛媛県区間含む) 1泊2日
公共交通の区切り:宿毛駅~宇和島駅

高知県最後の町・宿毛を出発、地元の小学生が作った小さなプレートに励まされながら松尾峠に立つ。松尾道は3つのピークを越えがある緩やかなアップダウンが続く楽しい道だ。松尾峠から愛媛県となる。一本松札掛周辺は高原状の台地になっている。札掛とは、この先の観自在寺から宇和島へのもう一本の遍路道である篠山(ささやま)神社経由を歩けない遍路が遙拝し、札を掛けたことに由来するという。到着した第四十番観自在寺(かんじざいじ)は四国遍路第一番の霊山寺(りょうぜんじ)から最も遠くにあることから、「四国霊場の裏関所」とも呼ばれている。

〉一番奥の山が三百名山の篠山
一番奥の山が三百名山の篠山。一本松交差点から900mほど観自在寺に向かって歩いた地点からの撮影。なおバス停の「札掛」からは篠山は見えないので、この地点が遙拝可能な最後の場所

観自在寺から宇和島へはかつては3本の遍路道があったそうだが、真ん中を行く中道は廃道、一番海岸線から離れた篠山道は距離も長く遠回りになることに加え完全な山越えになるのであまり歩かれておらず、大半の遍路は海岸線に近い灘道を利用している。灘道は「灘」と名前がつくものの峠越えの山道で、長いトラバースの登りが続き、厳しさの点では遍路道でも上位にランクされる(第3回コラム「歩き遍路の難所について」参照)。

そのようにつらい灘道ではあるが、つわな奥展望台からは由良半島と宇和海の筆舌につくしがたい絶景が待っている。その峠越えの後、古い町並みの残る津島・若松地区に降り、短い登りの松尾峠を越えて宇和島に到着する。

〉つわな奥展望台から由良半島の眺め
つわな奥展望台から由良半島の眺め。リアス海岸ではあるが東北の三陸海岸とは姿は大きく異なり、由良半島は陸地が沈降、または水面が上昇してできたリアス式沈降海岸だ

●アドバイス
この区間は単独で歩くというよりも、「はじめに」で述べたように、区間3と合わせて歩くのが自然だろう。その意味で、行程は朝出発としている。加えて、この区間は松尾峠と灘道の2つの長い峠越えがあり、どちらも体力を必要とするので、朝一番に通過するように計画するのがよいだろう。朝に宿毛を出発し観自在寺をお参りするとその日は泊になる。宿は複数あるものの周辺の宿泊地は柏以外にないので、早めの予約が必要だ。

宇和島からの帰路はJR以外に松山と大阪方面へのバスもあり、帰宅に都合のよい手段を選ぶとよいだろう。バスに乗ると、これから歩くことになる卯之町(うのまち)や大洲(おおず)の遍路道を通るので、予習になる(遍路道は新鮮な気持ちで歩きたい、という考え方ももちろんある)。

〉桜が咲き始めたころの、宇和島城天守前
桜が咲き始めたころの、宇和島城天守前

MAP&DATA

高低図
最適日数:1泊2日(区間3と続けて歩く場合はプラス1泊2日)
コースタイム: 18時間25分
行程:【1日目】
宿毛市中心部・・・松尾坂口番所跡・・・松尾峠・・・札掛・・・上大道休憩所・・・第四十番観自在寺・・・旧菊川小学校入口・・・柏(周辺宿泊想定)

【2日目】
柏・・・柳水大師・・・清水大師・・・芳原川橋・・・津島大橋・・・津島・・・松尾峠(宇和島)・・・宇和島南IC・・・JR宇和島駅
総歩行距離:約62,149m
累積標高差:上り 約1513m 下り 約1512m
コース定数:68
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プロフィール

岸田 明(きしだ・あきら)

東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。

四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/

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