目に見えないリスクが多数潜んでいるバックカントリー、遭難事例を確認して安全最優先の行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第378号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第376号では、期間中に起きたバックカントリーでの遭難事故を取り上げ、スキー場のゲレンデとバックカントリーエリアのリスクの差を理解し、入山することを説明している。


1月29日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第378号では、期間中に起きた3件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 1月26日(日)、北アルプスの白馬乗鞍岳で、2人パーティでバックカントリー滑走のために入山した39歳の男性が、白馬乗鞍岳の天狗原を滑走していた際に転倒して負傷した。

  • 1月26日(日)、北安曇郡小谷村の黒川沢付近で、10人パーティでバックカントリー滑走のために入山した45歳の男性が北安曇郡小谷村黒川沢を滑走中に転倒して立ち木に衝突、負傷した。

  • 1月26日(日)、中央アルプスの千畳敷で、2人パーティで入山した50歳の男性が、千畳敷の八丁坂付近を下山中に転倒して負傷した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週、長野県内では、3件の山岳遭難がありました。このうち2件はバックカントリーでの遭難でした。

バックカントリーエリアは、非圧雪のパウダースノーが楽しめる一方、目には見えないリスクが多数、潜んでいます。以下は、過去に発生したバックカントリー中の遭難事例です。

  • 雪崩に巻き込まれる(自然発生、自身や仲間の誘発)
  • 地図やGPSを所持しておらず、道迷い
  • 他者のシュプールを頼ってしまい、道迷い
  • クライミングスキンやスノーシューを持っておらず、登り返しができなくなり、行動不能
  • 滑走中に転倒し、靱帯や腰の負傷により、行動不能
  • 悪天候により(ホワイトアウト)行動不能
  • 悪天候により低体温症
  • 沢や崖への転落(水没)
  • 新雪に埋没し、窒息
  • 立木や岩へ衝突し、骨折
  • 転倒してスキーが外れて紛失し、行動不能

バックカントリーは、ゲレンデのように管理されておらず、アクシデントが発生してもスキーパトロールの方が救助に来てくれるわけではありません。そのために、アクシデントに対応できる知識・技術・装備が必要です。スキー場と同じような感覚での滑走は、致命的な遭難に直結します。

事前に天候や積雪の状況、滑走ルートの確認をするほか、携行する装備品をチェックし、安全を最優先とする行動・判断をお願いします。

 

外国人向け啓発動画&雪山・バックカントリー安全啓発動画 公開中!

昨年末からバックカントリーでの遭難が相次いでいます。こうした遭難を防止するため、入山者に対する啓発活動を実施します。長野県警山岳安全対策課、県山岳高原観光課、各地域振興局、地区遭対協らの各担当者がチラシやステッカーを配布したり、スキーヤーから聞き取りを行なったりして、安全なスキーを呼びかけます。  
 

■Ski Safety in NAGANO    
https://db.go-nagano.net/en/staying-safe-in-the-backcountry/

■バックカントリー装備    
https://www.youtube.com/watch?v=6wSpi_ufRlo

■雪山での危急時に役立つ簡易雪洞    
https://www.youtube.com/watch?v=EEnTxQRrieM

また、バックカントリースキーなどによる冬山遭難を防止するため、 白馬および志賀高原スキー場への玄関口である長野駅で 、主に訪日外国人に向けた冬山安全啓発を実施します。

啓発ステッカー

2月7日(金)には野沢温泉スキー場で活動予定です。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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