ルポ・奥多摩前衛の里山で、知られざる巨木と廃線跡に出合う。南沢あじさい山から勝峰山へ
梅雨入りの便りが迫る週末、アジサイの開花状況を見に、東京西部・あきる野市にある南沢あじさい山へ。さらに勝峰山(かつぼうやま)までつないで歩いたところ、予想外に数々の発見があった。
写真・文=中島タツヤ、トップ写真=巨樹が立ち並ぶ勝峰山山頂
斜面に屹立する杉の巨木
深沢山からしばらくして、左側に分岐が現われた。立派な道標には、「千年の契り杉」(せんねんのちぎりすぎ)とある。いったいどんな杉なのか、少し寄り道をすることにした。分岐から、なかなかの急斜面をジグザグに下ること10分強。目の前に忽然と杉の巨木が姿を現わした。
周囲にはほかに巨木は見当たらず、孤高の存在である。山側の斜面から契り杉に向かってわずかに水が流れ出ており、そのおかげでここまで大きくなったのではないかと推測する。ぐるりと一周して、再び急斜面をがんばり尾根に戻った。
最後のピーク、勝峰山へ
やがて日の出山方面への分岐を過ぎて、勝峰山(かつぼうやま)に到着。広々とした頂上には多くの登山者が休憩中だった。山頂には「幸せの鐘」や平将門伝説についての案内板があり、立ち並ぶサクラの巨樹が印象的である。案内板によると、将門が追手から逃れる際、この勝峰山に一夜城を築いたそうだ。
山頂からよく整備された道を下っていくと展望台が2つあり、横沢丘陵の山並みなどが見下ろせた。
さらに下っていくと、石灰岩の露出したカルストの小径や、血の池と呼ばれる窪地、鈴石など、地質的に興味深い見所が点在している。ちなみに一連の解説板をはじめ登山道の整備などは、「勝峰山エリアプロジェクト」という地元ボランティア団体によって行なわれており、勝峰山が大切に守られていることがうかがえた。
山道が終われば、あとは長い林道歩きとなる。上部は結構急な道で、疲労がたまった足への負担が大きい。途中で山道に入り、やがて山麓の登山口に下り立った。ここからは広い平坦地を進んで車道へ飛び出し、武蔵五日市駅へと戻った。
セメント産業の名残り。石灰石輸送で使われた鉄道跡
後で知ったことだが、勝峰山から降り立った平坦地は、かつて五日市線の岩井支線が通っていた場所で、現在ではセメント会社の私有地となっている。登山者はそこを通らせていただく形だ。石灰石輸送のために大正時代に開通した岩井支線は、一時期旅客輸送も行なわれ、大久野(おおぐの)地区はセメント産業の発展とともに大変にぎわったそうである。その後トラックによる輸送が普及したことにより、1982年に支線は廃止された。
ちなみに勝峰山への登山口はまた別にもあり、つるつる温泉に向かう都道の途中にある岩井橋からアプローチできる。岩井橋付近の道路脇には大きな看板が立っているとのことで、むしろそちらが正規ルートかもしれない。
今回歩いた箇所は、狭い範囲にもかかわらず色々な発見があった。日の出町、あきる野市周辺には、まだまだ隠れた魅力がありそうなので、また時間を見つけて訪れてみたい。
記事協力:
・日の出町観光協会 https://www.hinodekanko.jp//
・日の出町役場
・勝峰山エリアプロジェクト
MAP&DATA
この記事に登場する山
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