【ルポ】埼玉・坂戸に「グランドキャニオン」と都電!?城跡の崖と森をめぐる里山ハイキング

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「キワ」や「端」、「境目」には、なにかおもしろい発見がある気がする。今回取り上げるのは、埼玉県坂戸市の西の端あたり。地図を見ると坂戸市西端の境界線がまるでパズルのようにぽっこりと出っ張っている場所がある。市街地と里山の混ざり合うエリアの、ちょっとニッチな自然探索。

写真・文=中島タツヤ

目次

坂戸市西端のぽっこりエリア

地形図を見ると、毛呂山町(もろやままち)、鶴ヶ島市、日高市に囲まれたこのぽっこりエリアには高麗川(こまがわ)が蛇行し、市街地のそばには城山(しろやま)という文字。今回はこのあたりの探索だ。

坂戸市西の端付近の地図(地理院地図をもとに作成)
坂戸市西の端付近の地図(地理院地図をもとに作成)

起点は、東武越生線の川角(かわかど)駅。駅前の踏切を渡って南西に向かうと、遠くに城西大学の建物が見えてくる。丘の上に立つさまは、まるで「城塞」のようだ。

星宮神社前から見る城西大学
星宮神社前から見る城西大学

星宮神社の前で左に曲がり、しばらくして高麗川(こまがわ)にかかる多和目(たわめ)橋に出た。多和目橋は木の板が敷かれた冠水橋(沈下橋)で、車が通る際にガタガタという音が響く。

多和目橋
多和目橋。大型車の行く手をはばむ頑丈な支柱

穏やかな高麗川を見ながら橋を渡り、いよいよ日高市西端のぽっこりエリアに突入する。高麗川右岸の、舗装された高麗川ふるさと遊歩道へ。大学の運動場を過ぎると左手に広がる林ではピクニックをしている人がいて、なごやかな雰囲気だ。やがて多和目天神橋に到着。

多和目天神橋
多和目天神橋。めざす城山が見える。左奥は奥武蔵の山並み

これも木の板が敷かれた橋だが、先ほどの多和目橋よりもさらに狭い。味わい深い年季の入った橋は、時代劇に出てきそうでタイムスリップしたような錯覚になる。

多和目天神橋を振り返る
多和目天神橋を振り返る。侍が走るシーンが撮影できそう

その先、学校脇を過ぎて城山橋に到着。付近には魚道(ぎょどう)を備えた堰がある。そして橋の上からは、左岸側に露出した崖が見えた。

城山橋付近の堰にある魚道
城山橋付近の堰にある魚道
城山橋から城山方面
城山橋から城山方面

もう少し近くで崖を眺めてみようと、右岸車道下のトンネルをくぐって上流部に向かって進む。しばらく進んでいくと、対岸に荒々しい崖が迫ってきた。

澄みきった高麗川に迫る城山の断崖
澄みきった高麗川に迫る城山の断崖

長い年月をかけて高麗川の流れが削ったに違いない。非日常的な地形のためか、一帯の雰囲気は何か隔絶感があり、地形マニアにはたまらなそうな場所だ。以前、「横浜のグランドキャニオン」と呼ばれる場所を訪れたことがあるが、ここを「坂戸のグランドキャニオン」と言うのは、ちょっと言い過ぎか......。

関連リンク

さらに先に行くと、飛び石伝いに渡れる「ぽんぽん橋」がある。その少し先まで遊歩道は続いていくが、今回は城山をめざすべく、もと来た遊歩道を引き返すことにした。

ぽんぽん橋
ぽんぽん橋。飛び石の大きさの違いが気になる

ちなみにここからさらに上流部には、曼殊沙華で有名な巾着田がある。高麗川の蛇行によって形成されたことはよく知られているが、高麗川にはそんな湾曲地形がいくつも見られる。地図を見ると、その巾着田あたりからこの城山付近にかけて特に集中していて興味深い。

高麗川の蛇行
高麗川の蛇行(地理院地図vectorをもとに加工して作成)
NEXT 多和目城跡と城山の森
1 2 3

目次

この記事に登場する山

埼玉県 /

城山(坂戸) 標高 113m

埼玉県坂戸市の西端に位置する、多和目城の城跡。山頂の水道施設建設の際、土塁のほか、縄文住居跡も発見されたという。南を流れる高麗川から見ると、そそり立つ崖となっている。北側には城山の森が広がり静かな森散策が楽しめるが、場所によっては草が繁茂している箇所もある。

都市近郊の自然探索ハイキング

都市近郊の里山を歩いていると、道や分岐が結構多く、また小さな尾根を隔てて風景がガラッと変わることもあっておもしろい。この道はどこにつながっているのだろう?また、どんな景色が広がっているのだろう?まだ見ぬトレイルや風景を求めて、都市近郊の自然探索へ

編集部おすすめ記事