危険性が見えない登山道でも漫然と行動せず慎重な行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第403号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第403号では危険性の少ない場所で起きている遭難事故について言及。特に下山中は注意力が散漫にならないように、気持ちを引き締めて行動するよう促している。
7月17日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第403号では、期間中に起きた8件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
7月8日(火)、北アルプスの燕岳で、単独で入山した60歳の女性が、燕岳から中房温泉登山口に向けて合戦尾根を下山中にバランスを崩して転倒、負傷した。
7月9日(水)、北アルプスの燕岳で、入山した4人パーティ(45歳女性、34歳女性、32歳女性、32歳女性)が、燕岳から大天井岳を経由して槍ヶ岳に向けて表銀座を縦走中に道に迷い、行動不能となった。
7月12日(土)、八ヶ岳連峰の赤岳で、4人パーティで入山した35歳の女性が、赤岳から地蔵尾根を下山中に転倒、負傷した。
7月13日(日)、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、2人パーティで入山した44歳の女性が、白馬鑓ヶ岳から猿倉登山口に向けて下山中に雪渓で足を滑らせて滑落して負傷した。また、同行者である44歳の男性は技量不足により、行動不能となった。
7月13日(日)、北アルプスの白馬岳で、7人パーティで入山した43歳の女性が、白馬大雪渓を登山中に落石のため負傷した。
7月13日(日)、北アルプスの白馬岳で、単独で入山した51歳の女性が、白馬大雪渓を登山中に落石のため負傷した。
7月13日(日)、北アルプスの唐松岳で、2人パーティで入山した74歳の男性が、唐松岳に向けて八方尾根を登山中に発病により、行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では8件の山岳遭難が発生し、うち7件が北アルプスでの発生でした。白馬大雪渓では先々週に続き、落石による遭難が2件発生しました。雪渓上では音を立てることなく落石が転がってくるため、常に上部を気にしながら登山する必要があります。また、落石が発生した際は、「ラーク!!」と叫んで周囲の登山者へ落石の発生を知らせてください。
夏山シーズンが始まり、多くのみなさんが登山を楽しんでいるかと思いますが、山岳遭難の発生が後を絶ちません。遭難の多くは、疲労が溜まりやすい下山中に発生し、転倒・滑落の多くは、梯子や鎖が設置されている危険箇所よりも比較的、危険性の少ない場所で発生しています。
危険性が明らかな場所では、自然と緊張感が増して慎重な行動を心掛ける一方、一見すると危険性が見えない登山道では、つい油断をしてしまいがちです。これは、厳しい暑さによる疲労や脱水により注意力が散漫になっていることが間接的な要因でとして挙げられます。山頂はあくまで通過点であり、無事に下山することがゴールです。下山中は気持ちを引き締め、漫然と行動することなく、自身の体力にゆとりを持った計画をお願いします。
また、夏山は午後になると、急激に天候が悪化し、雷が発生することがあります。稜線の行動は、落雷の危険が伴うため、早出早着を意識して行動しましょう。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
“夏山登山Safety Book”が完成しました!
槍・穂高連峰、後立山連峰、八ヶ岳連峰、南アルプス、中央アルプス、御嶽山など各山域の最新情報を盛り込んだ登山者必見の資料です。常駐隊の常駐予定、山岳診療所の開設予定も掲載しています。安全登山の参考にご活用ください。
⇒夏山Safty Book(PDF)
御嶽山は剣ヶ峰まで通行できます!
御嶽山の登山道の立ち入り規制は、7月1日(火)から規制が緩和されました。黒沢登山口(木曽町)に続いて、王滝登山口(王滝村)も7月5日(土)午前6時から通行できます。
<規制が緩和されたルート>王滝登山口(田の原駐車場)~王滝頂上~剣ヶ峰、王滝頂上~二ノ池トラバース~黒沢十字路
詳細は、地元自治体にご確認ください。
⇒【黒沢口・開田口】木曽町役場 総務課危機管理室 0264-22-4280
⇒【王滝口】王滝村役場 総務課 0264-48-2001
白馬大雪渓(猿倉登山口)の通行にご注意ください!
白馬岳周辺は、例年に比べると、残雪がかなり多く、道迷いや転倒、滑落による遭難が相次いでいます。計画段階で山小屋に連絡するなど、事前にルート確認を行ない、当日も地図情報GPSなどを活用して道迷いに備えてください。
また、白馬大雪渓ルートは、10本爪以上のアイゼンとピッケルが必携です。チェーンスパイクや軽アイゼンは通用しません。亀裂が入っているところ、斜面の雪が固いところ、融雪が進んでいるところなど、アイゼン歩行の技術が必要なうえ、落石も頻発しています。気持ちを引き締めて通行してください。
⇒詳しくはこちら
北アルプス地域に「ツキノワグマ出没注意報」
北アルプス地域における6月8日から6月14日までの里地でのツキノワグマ目撃件数が、前週の1.5 倍以上と増加するなど、クマの移動が活発になっています。みなさんにあらためて注意いただき人身被害を回避するため、北アルプス地域を対象に「ツキノワグマ出没注意報」を発出します(長野県林務部)。
発出期間: 6月19日(木)~7月31日(木)
対象区域: 北アルプス地域
人身被害: 令和7年度(6月18日現在) 5件 8名
①朝夕の行動はできるだけ避け、複数人で行動する
②クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯する
③クマのいる場所に近づかない
④子グマを見たら立ち去る
⇒ツキノワグマ出没注意報
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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