暑さと疲労が原因の遭難が増加中。こまめに休憩を取り安全で楽しい登山を 島崎三歩の「山岳通信」 第404号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第404号では疲労や熱中症などのために行動不能や、集中力低下による転倒や滑落が増えていることを説明。暑さ対策の徹底と余裕のある行動を促している。
7月23日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第404号では、期間中に起きた16件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
7月14日(月)、甲武信ヶ岳で、3人パーティで入山した64歳の男性が、甲武信ヶ岳から下山中に転倒して負傷した。
7月17日(木)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した65歳の男性が奥穂高岳に向けて登山中に疲労により行動不能となった。
7月19日(土)、北アルプスの燕岳で、2人パーティで入山した41歳の女性が、燕岳の合戦尾根を下山中に転倒して負傷した。
7月19日(土)、北アルプスの燕岳で、3人パーティで入山した61歳の女性が、燕岳の合戦尾根を下山中に疲労により行動不能となった。
7月19日(土)、伊那市・諏訪市の守屋山で、3人パーティで入山した37歳の女性が、山頂から下山中に疲労により行動不能となった。
7月19日(土)、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で入山した71歳の男性が、登山中になんらかの原因で滑落して死亡した。
7月20日(日)、北アルプスの野口五郎岳で、単独で入山した56歳の男性が、七倉登山口から登山中に野口五郎岳付近で疲労により行動不能となった。
7月20日(日)、北アルプスの槍ヶ岳で、4人パーティで入山した49歳の女性が、槍ヶ岳に向けて北鎌尾根を登山中に落石により負傷した。
7月20日(日)、北アルプスの大黒岳で、単独で入山した44歳の男性が、五竜岳から大黒岳に向けて縦走中に転倒、負傷した。
7月20日(日)、北アルプスの大天井岳で、2人パーティで入山した54歳の女性が、常念岳から大天井岳に向けて縦走中に転倒、負傷した。
7月20日(日)、中央アルプスの空木岳で、3人パーティで入山した47歳の女性が、空木岳山頂から下山中に転倒、負傷した。
7月20日(日)、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した28歳の男性が、白馬岳に向けて大雪渓を登山中に、疲労により行動不能となった。
7月20日(日)、南アルプスの大横川で、2人パーティで入山した63歳の男性が、大横川を沢登り中に滑落して負傷した。
7月20日(日)、北信の岩菅山で、渓流釣りのため単独で入山した55歳の男性が、入山中に疲労により行動不能となった。
7月21日(月)、北アルプスの鹿島槍ヶ岳で、2人パーティで入山した54歳の女性が、柏原新道登山口から入山して鹿島槍ヶ岳の山小屋に宿泊中、ハシゴから転落して負傷した。
7月21日(月)、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した64歳の男性が、槍ヶ岳から北穂高岳に向けて縦走中に疲労により行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では16件の山岳遭難(1件は死亡遭難)が発生しました。このうち、3連休中には14件の遭難が発生しました。発生した16件のうち、転倒による遭難は5件、疲労による遭難は7件でした。
遭難の多くは、下山時に集中しています。特にこの暑い時期は、登山者が気温や高度差により体力を消耗し、疲労とともに注意力も散漫となります。すると整備された登山道でも、浮石やガレ場などちょっとした不注意でバランスを崩して転倒することがあります。もうすぐゴールと油断しがちなタイミングこそ、最大なリスクが潜んでいるため、最後まで気を抜かずに登山をしましょう。
県内では先週、梅雨明けとなり、夏本番の厳しい暑さになっています。標高の高い山域でも気温が上がり、疲労や熱中症などのために行動不能になったり、暑さと疲労で集中力が低下して転倒や滑落したりするリスクが非常に高くなります。普段であれば問題なく通過するところも、気温が高かったり登山行程が長くなったりすると、集中力が低下して、転んだり滑ったりすることもあります。
あらかじめ、
- 余裕ある登山計画を立てる
- こまめに休憩を取り、意識して水分・エネルギーを補給する
- 下山するまで体力や集中力を切らさない
などを心がけ、安全で楽しい登山をしましょう。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
中房温泉につながる県道の通行規制について
中房温泉登山口に向かう一般県道槍ヶ岳矢村線(通称:中房線)は、今年4月14日に発生した路肩崩落に伴い、一般車両の通行止めが続いています。その後、時間規制により、歩行者およびバス、タクシーでの通行が可能になっています。
歩行者の通行が可能な時間帯は、5時30分から17時30分までです。現地では、道路の復旧作業が進められており、順調に行けば8月のお盆前に通行再開となる見込みです。詳細は、長野県安曇野建設事務所のHPで確認してください。
⇒長野県安曇野建設事務所
白馬大雪渓(猿倉登山口)につながる県道の通行規制について
県道白馬岳線(猿倉登山口~二股ゲート)は、白馬館ヘリポート(猿倉登山口の手前、車両転回場)と二股ゲートとの間の車両の通行規制が解除されました。この区間は、タクシーや路線バス等の車両に限って通行できます。一般車両の通行はできません。
ただし、この区間における歩行者の徒歩による通行は可能です。現在、県道の復旧工事が行われていますが、全面復旧の見通しはたっていません。
白馬大雪渓(猿倉登山口)の通行にご注意ください!
白馬岳周辺は、例年に比べると、残雪がかなり多く、道迷いや転倒、滑落による遭難が相次いでいます。計画段階で山小屋に連絡するなど、事前にルート確認を行ない、当日も地図情報GPSなどを活用して道迷いに備えてください。
また、白馬大雪渓ルートは、10本爪以上のアイゼンとピッケルが必携です。チェーンスパイクや軽アイゼンは通用しません。亀裂が入っているところ、斜面の雪が固いところ、融雪が進んでいるところなど、アイゼン歩行の技術が必要なうえ、落石も頻発しています。気持ちを引き締めて通行してください。
⇒詳しくはこちら
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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