疲労や気の緩みによって足元がおろそかになりがち、慎重な行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第405号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第405号では北アルプスで下山時に滑落する事故が多発したことを取り上げ、疲労や気の緩みによって下山時はリスクが高まることを説明している。


7月31日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第405号では、期間中に起きた13件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月22日(火)、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した78歳の男性が、猿倉登山口から入山して白馬岳に向けて白馬大雪渓を登山中、疲労により行動不能となった。

  • 7月23日(水)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した69歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けてザイテングラートを下山中に滑落、負傷した。

  • 7月23日(水)、中央アルプスの千畳敷で、5人パーティで入山した71歳の女性が、千畳敷から入山して八丁坂を登山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月24日(木)、北アルプスの白馬岳で、3人パーティで入山した29歳の男性が、白馬岳に入山して栂池に向けて下山中、落石により負傷した。

  • 7月24日(木)、北アルプスの燕岳で、97人パーティで入山した17歳の女性が、燕岳から中房登山口に向け下山中にスリップして転倒、負傷した。

  • 7月25日(金)、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した75歳の男性が、北穂高岳から涸沢に向けて下山中にスリップして滑落、負傷した。

  • 7月25日(金)、北アルプスの北穂高岳で、11人パーティで入山した65歳の女性が、槍ヶ岳から北穂高岳に向けて縦走中に滑落、負傷した。

  • 7月26日(土)、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で入山した52歳の男性が、七倉登山口から入山して槍ヶ岳に向けて北鎌尾根を登山中、疲労により行動不能となった。

  • 7月26日(土)、北アルプスの南岳が、単独で入山した72歳の男性が、北アルプスの南岳から天狗原に向けて下山中に何らかの原因により滑落、死亡した。

  • 7月26日(土)、北アルプスの奥穂高岳で、12人パーティで入山した71歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けてザイテングラートを下山中に何らかの原因により滑落、死亡した。

  • 7月27日(日)、北アルプスの霞沢岳で、3人パーティで入山した69歳の男性が、霞沢岳から下山中に転倒して負傷した。

  • 7月27日(日)、長野市松代の奇妙山で、2人パーティで入山した64歳の女性が、山頂付近で疲労により行動不能となった。

  • 7月27日(日)、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、2人パーティで入山した78歳の男性が、白馬鑓ヶ岳から猿倉登山口に向け下山中、疲労で行動不能となった。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週、長野県内では、2件の死亡遭難を含む、13件の山岳遭難が発生しました。死亡遭難は先週に続き、北アルプス槍穂高連峰で発生し、いずれも滑落によるものでした。

槍・穂高連峰の登山道は、急峻な岩場が続き、鎖場やハシゴ場が連続する箇所が多数あります。危険箇所を通過する際には、ひと呼吸を置くなど普段以上に注意するとともに、特に下山時は疲労や気の緩みによって足元がおろそかになり、滑落するリスクが高まるため、慎重に行動しましょう。

また、先週末は槍・穂高連峰で天候が急変し、激しい雷雨や雹となったことから、これらに起因する滑落遭難や低体温症による行動不能が多発しました。山の上では、朝のうちは天気が良くても、午後になると天候が急激に悪化し、雷雨の可能性が高まり、稜線では落雷の危険性があります。登山する際には、「早出早着」を心掛け、ゆとりある登山ができるよう心掛けましょう。

 

長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ

中房温泉につながる県道の通行規制について 

中房温泉登山口に向かう一般県道槍ヶ岳矢村線(通称:中房線)は、今年4月14日に発生した路肩崩落に伴い、一般車両の通行止めが続いています。その後、時間規制により、歩行者およびバス、タクシーでの通行が可能になっています。
歩行者の通行が可能な時間帯は、5時30分から17時30分までです。現地では、道路の復旧作業が進められており、順調に行けば、8月のお盆前に通行再開となる見込みです。
詳細は、長野県安曇野建設事務所や燕山荘のHPで確認してください。
 ⇒長野県安曇野建設事務所
 ⇒燕山荘

白馬大雪渓(猿倉登山口)につながる県道の通行規制について 

県道白馬岳線(猿倉登山口~二股ゲート)は、復旧工事の終了に伴い、白馬館ヘリポート(猿倉登山口の手前、車両転回場)と二股ゲートとの間の車両の通行規制が解除されました。詳細は白馬村や白馬館のウェブサイトなどで確認してください。
 ⇒白馬村ホームページ
 ⇒白馬山荘ホームページ
 ⇒猿倉登山口までの行き方ガイド(白馬山荘)

また、大雪渓の最新状況と必要な装備については、必ず事前にご確認ください。現場付近では、落石による遭難が発生しています。通行の際には落石に警戒してください。
 ⇒白馬村登山情報

御嶽山は剣ヶ峰まで通行できます!

御嶽山の登山道の立ち入り規制は、7月1日(火)から規制が緩和されました。黒沢登山口(木曽町)に続いて、王滝登山口(王滝村)も7月5日午前6時から通行できます。
<規制が緩和されたルート>
王滝登山口(田の原駐車場)~王滝頂上~剣ヶ峰、王滝頂上~二ノ池トラバース~黒沢十字路
詳細は、地元自治体にご確認ください。
【黒沢口・開田口】木曽町役場 総務課危機管理室 0264-22-4280  
【王滝口】王滝村役場 総務課 0264-48-2001

信州の山岳遭難防止対策プロジェクト~寄付を募集しています!

登山の楽しい思い出作りを陰から支える活動をご支援ください。長野県では長野県山岳遭難防止対策協会の活動等を通じ、登山者の安全確保に向けた啓発活動や遭難救助に取り組んでいます。信州の山岳を安全に楽しんでいただくため、全国の皆様の温かいご支援を心からお待ちしています。なお、1万円以上の寄付をしていただいた方には、「安全登山啓発カード」を差し上げます。
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プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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