脱水や熱中症、疲労に起因する転倒・転落・滑落が多発。体力レベルに見合った計画を 島崎三歩の「山岳通信」 第406号

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長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第406号では7月の遭難件数が64件(過去ワースト2)に達していることに言及、レベルに見合った登山計画を促している。


8月7日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第406号では、期間中に起きた34件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月28日(月)、北アルプスの唐松岳で、単独で入山した59歳の男性が、唐松岳に入山して山小屋で宿泊中に、疲労と体調不良により行動不能となった。

  • 7月28日(月)、戸隠連峰の戸隠山で、8人パーティで入山した71歳の女性が、戸隠山に向けて登山中に「蟻の塔渡り」付近で滑落、負傷した。

  • 7月28日(月)、北アルプスの槍ヶ岳で、5人パーティで入山した36歳の男性が、槍ヶ岳から上高地に向けて槍沢を下山中に、発病により行動不能となった。

  • 7月28日(月)、北アルプスの中遠見山で、2人パーティで入山した19歳の男性が、五竜岳から遠見尾根を下山中に中遠見山付近で疲労により行動不能となった。

  • 7月28日(月)、中央アルプスの木曽駒ヶ岳で、3人パーティで入山した52歳の男性が、木曽駒ヶ岳から濃ヶ池付近を登山中にスリップして転倒、負傷した。

  • 7月28日(月)、北アルプスの横尾谷で、6人パーティで入山した74歳の男性が、奥穂高岳から横尾に向けて下山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月29日(火)、北アルプスの唐松岳で、5人パーティで入山した75歳の女性が、唐松岳から五竜岳に向けて縦走中に滑落して負傷した。

  • 7月29日(火)、車山で、2人パーティで入山した68歳の女性が、車山山頂から下山中に浮石でバランスを崩して転倒、負傷した。

  • 7月29日(火)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した66歳の男性が、奥穂高岳南稜を下山中に技量不足により行動不能となった。

  • 7月29日(火)、北アルプスの横尾で、単独で入山した82歳の男性が、槍ヶ岳から横尾に向けて下山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月30日(水)、南アルプスの仙丈ヶ岳で、2名パーティで入山した74歳の女性が、仙丈ヶ岳から藪沢ルートを下山中に転倒、負傷した。

  • 7月30日(水)、北アルプスの餓鬼岳で、単独で入山した71歳の男性が、餓鬼岳から白沢登山口に向けて下山中に岩につまずいて転倒、負傷した。

  • 7月30日(水)、北アルプスの白馬岳で、単独で入山した75歳の女性が、白馬岳から猿倉登山口に向けて大雪渓を下山中に疲労により行動不能となった。

  • 7月30日(水)、北アルプスの槍ヶ岳で、3人パーティで入山した65歳の男性が、東鎌尾根を槍ヶ岳に向けて登山中に滑落、負傷した。

  • 7月30日(水)、北アルプスの五竜岳で、単独で入山した78歳の男性が、五竜岳から鹿島槍ヶ岳に向けて縦走中、G5付近でバランスを崩して転倒、負傷した。

  • 7月30日(水)、北アルプスの餓鬼岳で、単独で入山した65歳の男性が、餓鬼岳から白沢登山口に向けて下山中に滑落、負傷した。

  • 7月31日(木)、北アルプスの燕岳で、単独で入山した41歳の男性が、燕岳に向けて登山中にめがね岩付近で登山道を外れ、登山道に戻れなくなり行動不能となった。

  • 7月31日(木)、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した71歳の男性が、北穂高岳に登頂後に山頂付近で写真撮影中にバランスを崩して滑落、負傷した。

  • 7月31日(木)、北アルプスの常念岳で、単独で入山した66歳の男性が、常念岳から常念乗越に向けて下山中に転倒、負傷した。

  • 7月31日(木)、戸隠連峰の戸隠山で、単独で入山した53歳の男性が、鏡池付近を散策中に戸隠山方面に迷い込み、行動不能となった。

  • 8月1日(金)、北アルプスの槍ヶ岳で、4人パーティで入山した68歳の男性が、北鎌尾根を登山中に独標付近で疲労により行動不能となった。

  • 8月1日(金)、北アルプスの針ノ木岳で、2人パーティで入山した63歳の女性が、針ノ木峠から扇沢に向けて下山中に転倒、負傷した。

  • 8月1日(金)、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した51歳の女性が、柏原新道を下山中に雪渓上で滑落し、その後技量不足により登山道に戻れなくなり、行動不能となった。

  • 8月1日(金)、八ヶ岳連峰の縞枯山で、24人パーティで入山した80歳の女性が、縞枯山から下山中に転倒、負傷した。

  • 8月1日(金)、北アルプスの北穂高岳で、2人パーティで入山した25歳の女性と24歳の男性(いずれもドイツ人)が、北穂高岳に向けて大キレットを登山中に「飛騨泣き」付近で技量不足により行動不能となった。

  • 8月1日(金)、北アルプスの水晶岳で、4人パーティで入山した31歳の男性が、野口五郎岳から縦走中に疲労により行動不能となった。

  • 8月2日(土)、北アルプスの北穂高岳で、2人パーティで入山した67歳の女性が、北穂高岳から下山中に南稜取り付き付近でバランスを崩して転倒、負傷した。

  • 8月2日(土)、北アルプスの唐松岳で、5人パーティで入山した50歳の男性が、唐松岳に向けて八方尾根を登山中に転倒、負傷した。

  • 8月2日(土)、北アルプスの中遠見山で、2人パーティで入山した58歳の男性が、遠見尾根を下山中に発病により行動不能となった。

  • 8月3日(日)、北アルプスの涸沢で、単独で入山した57歳の男性が、涸沢から横尾に向けて下山中に転倒、負傷した。

  • 8月3日(日)、北アルプスの蓮華岳で、6人パーティで入山した51歳の男性が、針ノ木岳から七倉岳に向けて縦走中に蓮華の大下り付近で発病により行動不能となった。

  • 8月3日(日)、北アルプスの槍ヶ岳で、3人パーティで入山した60歳の女性が、北鎌尾根を登山中に落石を受けて行動不能となった。

  • 8月3日(日)、北アルプスの槍ヶ岳で、3人パーティで入山した61歳と47歳の男性2人が、北鎌尾根を登山中だった上記の同行者が遭難したため、技量不足により行動不能となった。

  • 8月3日(日)、北アルプスの烏帽子岳で、2人パーティで入山した67歳の男性が、烏帽子岳に通じるブナ立尾根を下山中に疲労により行動不能となった。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

先週、長野県内の山岳では、34件、36人の遭難が発生しました。

県内では山岳遭難が連続して発生しており、7月中の発生件数は64件で、過去10年間で2番目に高い状況となりました(※令和6年7月の65件が過去10年間で最多)。
平野部では猛暑日に見舞われ、山岳地帯でも気温が高い状況が続いています。このため、脱水や熱中症による行動不能、疲労に起因する転倒・転落・滑落が多発しています。登りたい山は、本当にみなさんの体力に見合っていますか?

また、山域としては、北アルプスで遭難が多発しています。県内の人気山域である「○○アルプス」とか「△△連峰」と名の付く山は、伊達ではありません!! 体力的・技術的に厳しい山が多数あり、日頃のトレーニング習慣がない方には、リスクが高い山となります。
さらに、先週の遭難者は、36人のうち21人が60歳以上の方で、高年齢層の方が遭難の多数を占めています。いま一度、ご自身の体力に見合った山行計画を立て、安全・安心な登山を心がけるようお願いします。

 

長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ

燕岳登山口に通じる県道の通行止め解除の見通しについて 

中房温泉登山口に向かう一般県道槍ヶ岳矢村線(通称:中房線)は、今年4月14日に発生した路肩崩落に伴い、一般車両の通行止めが続いていますが、8月8日(金)15時から通行止めが解除され、全面開通となりました。詳細は、長野県安曇野建設事務所や燕山荘のHPで確認してください。
 ⇒長野県安曇野建設事務所 
 ⇒燕山荘

「登山計画書」を作成・提出しましたか?

登山のリスクを意識し、自分の体力や技術に見合ったゆとりある山行計画をたてましょう。登山計画書は必ず提出してください。その際、山小屋・地元自治体・観光協会などを通じて、登山口までの道路や登山道の状態、残雪の状況など、現地の最新情報を事前に把握しておきましょう。
そのうえで、家族や知人等にも詳細な予定(行き先・登山ルートなど)を伝えましょう。登山計画書を提出し、情報を共有しないと、入山場所や遭難地点の特定に時間がかかり、捜索活動が遅くなってしまいます。
 ⇒詳細はこちら

信州の山岳遭難防止対策プロジェクト~寄付を募集しています!

登山の楽しい思い出作りを陰から支える活動をご支援ください。長野県では長野県山岳遭難防止対策協会の活動などを通じ、登山者の安全確保に向けた啓発活動や遭難救助に取り組んでいます。信州の山岳を安全に楽しんでいただくため、全国の皆様の温かいご支援を心からお待ちしています。なお、1万円以上の寄付をしていただいた方には、「安全登山啓発カード」を差し上げます。 
 ⇒詳細はこちら

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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