山では天候の急変により一瞬で命がおびやかされることもあります 島崎三歩の「山岳通信」 第406号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第407号では、天候の急変で起きた遭難事故について言及。山では天候が急変すると一瞬で命がおびやかされる事態が発生することを念頭におき、登山の可否を判断するよう注意喚起している。
8月14日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第407号では、期間中に起きた13件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
8月4日(月)、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した54歳の女性が、槍ヶ岳の北鎌尾根を登山中に山頂付近で滑落、負傷した。
8月4日(月)、北アルプスの白馬乗鞍岳で、2人パーティで入山した76歳の男性が、白馬乗鞍岳から下山中に天狗原付近で転倒、負傷した。
8月5日(火)、御嶽山で、4人パーティで入山した53歳の男性が、御嶽山から9合目付近を下山中に、疲労と体調不良により行動不能となった。
8月7日(木)、北アルプスの白馬岳で、8人パーティで入山した3人が、白馬岳に向けて登山中に悪天候により低体温症に陥り行動不能となった。うち78歳の男性がの死亡、75歳の男性と65歳の女性が救助された。
8月8日(金)、八ヶ岳連峰の赤岳で、4人パーティで入山した67歳の女性が、山小屋で宿泊中に疲労と体調不良により行動不能となった。
8月8日(金)、北アルプスの燕岳で、19人パーティで入山した66歳の男性が、燕岳から合戦尾根を下山中に疲労により行動不能となった。
8月9日(土)、北アルプスの唐松岳で、3人パーティで入山した49歳の男性が、唐松岳から八方尾根を下山中に転倒、負傷した。
8月9日(土)、北アルプスの涸沢で、単独で入山した64歳の男性が、涸沢から横尾に向けて下山中に、膝の痛みにより行動不能となった。
8月9日(土)、南佐久郡川上村の小川山で、クライミングのために4人パーティで入山した61歳の男性が、クライミング中に転落、負傷した。
8月9日(土)、北アルプスの明神岳で、3人(47歳男性、59歳女性、51歳女性)で入山したパーティが、明神岳から奥明神沢を下山中に、技量不足により行動不能となった。
8月9日(土)、北アルプスの唐松岳で、単独で入山した53歳の男性が、唐松岳から八方尾根を下山中に転倒、負傷した。
8月10日(日)、北アルプスの五竜岳で、4人パーティで入山した70歳の男性と65歳の女性が、鹿島槍ヶ岳から五竜岳に向けて縦走中に、悪天候により低体温症に陥り行動不能となった。
8月11日(月)、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した59歳の男性が、白馬岳から猿倉登山口に向けて大雪渓を下山中に転倒、負傷した。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では13件の山岳遭難が発生し、18人のうち1名の方が亡くなりました。先週、県内の天候は一時、弱い冬型の気圧配置となり、北アルプスの稜線では気温が10℃以下と急激に冷えて積乱雲が発達、風速20m以上の暴風雨に見舞われました。
夏山でも雨や風、気温の低下によって体温が奪わる低体温症の危険性があります。低体温症は、震え・動作の鈍化・判断力の低下といった症状が出て、進行すると、意識障害や心停止に至ることがあります。
山は天候が急変すると厳しい環境となり、一瞬で命がおびやかされます。「安全第一」で、無事下山を心がけましょう。 登山される方は以下の項目を徹底してください!
- 天気予報を必ず確認する (前線、低気圧の通過が予想される場合、山は大荒れ!)
- 雨具・防寒着・非常食は必ず携行する
- 無理な登山計画は中止・変更する
- 体調不良や天候悪化時は、引き返す勇気をもつ
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
「登山計画書」を作成・提出しましたか?
登山のリスクを意識し、自分の体力や技術に見合ったゆとりある山行計画をたてましょう。登山計画書は必ず提出してください。その際、山小屋・地元自治体・観光協会などを通じて、登山口までの道路や登山道の状態、残雪の状況など、現地の最新情報を事前に把握しておきましょう。
そのうえで、家族や知人等にも詳細な予定(行き先・登山ルートなど)を伝えましょう。登山計画書を提出し、情報を共有しないと、入山場所や遭難地点の特定に時間がかかり、捜索活動が遅くなってしまいます。
⇒詳細はこちら
信州の山岳遭難防止対策プロジェクト~寄付を募集しています!
登山の楽しい思い出作りを陰から支える活動をご支援ください。長野県では長野県山岳遭難防止対策協会の活動などを通じ、登山者の安全確保に向けた啓発活動や遭難救助に取り組んでいます。信州の山岳を安全に楽しんでいただくため、全国の皆様のあたたかいご支援を心からお待ちしています。なお、1万円以上の寄付をしていただいた方には、「安全登山啓発カード」を差し上げます。
⇒詳細はこちら
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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