過去最多の遭難件数から考える、季節の変わり目における登山リスク 島崎三歩の「山岳通信」 第410号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第410号では、2025年の夏山シーズンは2年連続で過去最多の遭難件数であったことについて言及。秋山シーズンに入り、季節の変わり目における登山中のリスクについて説明している。
9月3日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第410号では、期間中に起きた16件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
8月25日(月)、北アルプスの爺ヶ岳で、3人パーティで入山した65歳の男性が、爺ヶ岳から下山中に転倒、負傷した。
8月26日(火)、八ヶ岳連峰の東天狗岳で、単独で入山した48歳の男性が、中山峠から東天狗岳に向けて登山中に転倒、負傷した。
8月27日(水)、北アルプスの奥穂高岳で、単独で入山した58歳の男性が、奥穂高岳から涸沢に向けて下山中に転倒、負傷した。
8月28日(木)、八ヶ岳連峰の東天狗岳で、単独で入山した68歳の男性が、根石岳から東天狗岳へ登山中にスリップし、滑落、負傷した。
8月28日(木)、北アルプスの烏帽子岳で、2人パーティで入山した73歳の男性が、烏帽子岳付近の山小屋に滞在中に発病により行動不能となった。
8月29日(金)、北アルプスの蝶ヶ岳で、単独で入山した64歳の女性が蝶ヶ岳付近の山小屋に滞在中に疲労により行動不能となった。
8月29日(金)、北アルプスの白馬乗鞍岳で、2人パーティで入山した52歳の女性が、栂池登山口から白馬乗鞍岳に向けて登山中に岩場でバランスを崩して転倒、負傷した。
8月29日(金)、南アルプスの易老岳で、2人パーティで入山した70歳の男性が、光岳から易老渡に向けて下山中に足を滑らせて転倒、負傷した。
8月29日(金)、北アルプスの横通岳で、14人パーティで入山した66歳の男性が、大天井岳から常念岳に向けて縦走中に転倒、負傷した。
8月30日(土)、北アルプスの燕岳で、単独で入山した43歳の女性が、燕岳から中房登山口に向けて下山中にバランスを崩して転倒、負傷した。
8月30日(土)、南アルプスの仙丈ヶ岳で、3人パーティで入山した81歳の女性が、北沢峠から仙丈ヶ岳に向けて登山中に木の根につまづき転倒、負傷した。
8月30日(土)、八ヶ岳連峰の蓼科山で、単独で入山した62歳の男性が、蓼科山から下山中に転倒、負傷した。
8月30日(土)、霧ヶ峰の蝶々深山で、31人パーティで入山した81歳の女性が、蝶々深山の山頂付近で疲労により行動不能となった。
8月31日(日)、中央アルプスの千畳敷で、3人パーティで入山した58歳の女性が、千畳敷から宝剣岳に向けて登山中に転倒、負傷した。
8月31日(日)、南佐久郡川上村の小川山で、5人パーティで入山した47歳の女性が、小川山でクライミング中に転落、負傷した。
8月31日(日)、南佐久郡川上村の天狗山で、単独で入山した61歳の男性が、天狗山から下山中にルートを誤って道に迷い、行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では16件の山岳遭難が発生し、転倒や滑落による遭難が多発しました。
夏山(7月~8月)が終了しましたが、この期間中の遭難は、143件154人(死亡:6人 行方不明:0人 負傷者:75人 無事救助:73人)で、昨年に続き、2年連続で過去最多となりました。
遭難の態様別では、①転倒:44件 ②疲労:33件 ③滑落:28件の順となり、猛暑による脱水等に起因する遭難も相次ぎました。
秋山も、しばらく厳しい残暑が続きます。体力的にゆとりある計画と熱中症対策に万全を期すようにお願いします。秋山は朝夕と日中の寒暖差が大きくなり、日没も日ごとに早まります。気象状況によっては、低体温症の恐れもあるため、防寒装備やヘッドランプの携行をお忘れなく。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
「秋山情報」が完成しました!
鮮やかな紅葉に包まれる秋山は、多くの登山者を魅了し、毎年、紅葉シーズンを中心に県内外から多くの登山者が訪れるほか、きのこ採りなど「山の幸」を求めて入山する人も数多く見られます。
この時期は、滑落や道迷い、低体温症、準備不足による行動不能などの山岳遭難が多発しています。秋山は周期的な晴天に恵まれやすく、気候的にも登山に適していますが、日没時刻が早く、天候もひとたび崩れると真冬並みの寒さになるなど、秋山特有のリスクがあります。
「秋山情報」では、過去の遭難事例や秋山登山における注意点などを紹介します。安易な気持ちで登山することなく、最新情報の収集と事前準備を入念に行うとともに、体調を万全にして入山をしましょう。
⇒「秋山情報(PDF)」はこちら
クマにご用心!
8月中旬、知床の羅臼岳で登山者がヒグマに襲われ、死亡する事故が発生しました。長野県内でも春先からクマによる人身被害が相次いでおり、夏山シーズンに入ってから上高地をはじめ、各山域の登山道周辺でも目撃情報が寄せられています。
山の中では、どこでクマと遭遇してもおかしくありません。登山の際は、クマとの遭遇を避けるための対策を必ず行ないましょう(以下、プレスリリースから抜粋)。
- 朝夕は特に注意、複数人で行動する
- クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯して存在を知らせる
- クマの存在を意識する
- 子グマを見たらそっと立ち去る
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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