北アルプスでの遭難事故が多発。ルートの難易度を確認して準備を入念に行ない入山を 島崎三歩の「山岳通信」 第412号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第412号では、今年の夏山シーズンの遭難のうち71.3%が北アルプスで発生していることに言及。ルートの難易度を確認して準備を入念に行ない、北アルプスへ入山することを促している。
9月18日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第412号では、期間中に起きた12件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
9月8日(月)、北アルプスの槍沢で、単独で入山した61歳の男性が、槍ヶ岳から槍沢を下山中に転倒、負傷した。
9月8日(月)、中央アルプスの空木岳で、2人パーティで入山した61歳の男性が、宝剣岳から空木岳に向けて縦走中に東川岳付近で転倒、負傷した。
9月9日(火)、北アルプスの燕岳で、2人パーティで入山した58歳の女性が、燕岳付近の山小屋に滞在中に腰痛により行動不能となった。
9月9日(火)、北アルプスの五竜岳で、3人パーティで入山した64歳の男性が、遠見尾根を下山中に滑落、滑落後に登山道に戻れず行動不能となった。
9月9日(火)、北アルプスの燕岳で、2人パーティで入山した60歳の男性が、燕岳から中房温泉登山口に向けて下山中に石につまずき転倒、負傷した。
9月9日(火)、松本市の十石山で、2人パーティで入山した47歳の男性が、入山後に別々に行動中、疲労と体調不良により行動不能となった。
9月9日(火)、北アルプスの蝶ヶ岳で、4人パーティで入山した74歳の女性が、蝶ヶ岳から横尾に向けて下山中に疲労により行動不能となった。
9月15日(月)、北アルプスの唐松岳で、14人パーティで入山した59歳の男性が、唐松岳に向けて登山中に発病により行動不能となった。
9月15日(月)、中央アルプスの千畳敷で、2人パーティで入山した72歳の女性が、千畳敷の乗越浄土から八丁坂を下山中に転倒、負傷した。
9月15日(月)、木曽町の城山で、7人パーティで入山した74歳の女性が、木曽福島城跡を登山中に虫に刺され、行動不能となった。
9月15日(月)、北アルプスの焼岳で、2人パーティで入山した61歳の女性が、焼岳から下山中に浮石でバランスを崩して転倒、負傷した。
9月15日(月)、飯田市の万古川で、4人パーティで入山した69歳の男性が、万古川を沢下り中に滝壺に入り、脱出できなくなり死亡した。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週の山岳遭難の発生は、12件で、うち1件は死亡遭難です。
本格的な秋山シーズンとなりましたが、先週は12件中7件が北アルプスで発生し、人気の高さをうかがわせます。今年の夏山シーズンでは143件中、102件(71.3%)が北アルプスで発生しました。魅力ある北アルプスですが、急峻な岩稜帯や体力的に厳しいルートが多く、挑戦には日々のトレーニングや装備品を万全にするなど事前準備が非常に重要です。
体力や技術に自信のない方で「登山のトレーニングってどうすればいいの?」、「山の難易度(グレーディング)ってどうやって確かめるの?」とお困りの方は、県警ホームページで公開中の「令和7年長野県登山Safety Book」をぜひご覧いただき、参考にしてください。
県内の標高が高い山域では、日中と朝夕の寒暖差が非常に大きく、稜線では朝夕の気温は10度以下になります。日中でも、天候によっては低体温症のリスクが高まりますので、防寒装備やビバーク装備を携行しましょう。
長野県山岳遭難防止対策協会からのお知らせ
北アルプス横尾登山口に入山ゲート設置 試行実験を開始!
「北アルプストレイルプログラム」では、槍ヶ岳や涸沢に通じる横尾地区の登山口に入山ゲートを設置しました。近年、登山計画の不備や登山装備の準備不足などが原因となる山岳遭難の発生が後を絶たないため、入山前に、登山準備と登山のルールやマナーを確認する取り組みを始めるものです。ゲートにて、「登山準備・登山ルート確認票」を確認のうえ、署名と指定ポストへの投函をお願いします。
- 実施期間:2025年9月13日(土)~10月13日(火)
- 実施場所:横尾登山ゲート(横尾避難小屋横に設置)
「秋山情報」が完成しました!
鮮やかな紅葉に包まれる秋山は、多くの登山者を魅了し、毎年、紅葉シーズンを中心に県内外から多くの登山者が訪れるほか、きのこ採りなど「山の幸」を求めて入山する人も数多く見られます。
この時期は、滑落や道迷い、低体温症、準備不足による行動不能などの山岳遭難が多発しています。秋山は周期的な晴天に恵まれやすく、気候的にも登山に適していますが、日没時刻が早く、天候もひとたび崩れると真冬並みの寒さになるなど、秋山特有のリスクがあります。
「秋山情報」では、過去の遭難事例や秋山登山における注意点などを紹介します。安易な気持ちで登山することなく、最新情報の収集と事前準備を入念に行なうとともに、体調を万全にして入山しましょう。
⇒「秋山情報(PDF)」はこちら
クマにご用心!
8月中旬、知床の羅臼岳で登山者がヒグマに襲われ、死亡する事故が発生しました。長野県内でも春先からクマによる人身被害が相次いでおり、夏山シーズンに入ってから上高地をはじめ、各山域の登山道周辺でも目撃情報が寄せられています。
山の中では、どこでクマと遭遇してもおかしくありません。登山の際は、クマとの遭遇を避けるための対策を必ず行ないましょう(以下、プレスリリースから抜粋)。
- 朝夕は特に注意、複数人で行動する
- クマ鈴、ラジオ、笛などを携帯して存在を知らせる
- クマの存在を意識する
- 子グマを見たらそっと立ち去る
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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