世界一の雪をゲレンデで楽しもう
海外から日本の雪を求めてやってくるスキーヤーは多い。雪に恵まれたこの国には400以上のスキー場が存在する。環境に恵まれたゲレンデで雪山体験をしてみてはいかがだろうか。
文・写真=中橋秀和
ヨーロッパや北米、南半球の人々がナンバーワンという日本の雪。周囲を海に囲まれた日本では、冬になるとたっぷりと水蒸気を含んだ雪雲が次々にやってきて、日本海側を中心に毎日新しい雪が積もっていく。ヨーロッパや北米のスキーエリアは内陸にあるケースが多く、大型の低気圧により数日大雪が降った後は、1週間晴れが続くことも珍しくない。日本のように毎日新雪が降り積もるということはあまりない。1993年に日本で2週間スキーの国際大会が開催された際、北欧のスキー選手が「こんなに安定して悪天候(雪)が続くことは経験したことはない」といっていたが、今では連日降り続くこの日本の雪は「ジャパウ(ジャパンパウダーの略)」として世界にその名を轟かせている。
そんな恵まれた環境ながら、国内のスキー・スノーボード人口は2021年まで減少し続け、『レジャー白書』(日本生産性本部)によると、2020年で430万人と、1990年代の半分以下になってしまった。一方で訪日外国人のスノーリゾートの訪問者数は、観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると2015年が59.5万人、2018年には88万人まで増えている。2020年以降は新型コロナウィルスの影響でほぼゼロとなってしまったが、世界中で緊急事態宣言が緩和された2023年、日本のスキー・スノーボード人口は460万まで回復、外国人のスノーリゾート地域訪問者数も2015年とほぼ同じレベルの54.9万人まで回復している。2024年の数字はまだ出ていないが、国内の人口減少にはブレーキがかかり、インバウンドはまた右肩上がりの曲線を描こうとしている。
現在の国内のスキー場が抱える課題は、リフトやゴンドラなどの老朽化だ。これらの耐用年数は30年程度といわれているが、日本索道工業会によると全国の索道の7割が築30年以上、9割が築20年以上となっている。このため各スキー場は大規模更新の資金が必要となっている。来るシーズンは国内の多くのスキー場がリフト料金を値上げするが、このような設備投資、さらに燃料費や人件費の高騰を考えると当たり前の流れとも言えるだろう。
一方で、値上げによって得た資金によってゴンドラやリフトの架替えや、造雪機や圧雪車の入れ替え、チケットにICカードの導入、レストハウスのリニューアルなどが行なわれており、我々滑る側もより快適にゲレンデで過ごせるようになっている。
「スキーよりミッキー」というCMを東京ディズニーランドが作ったのが90年代前半。それから間もなく半世紀が経過しようとしているが、今日本のスキー場は訪日外国人の登場で大きく変わり始めている。ニセコや白馬エリアなど特に外国人に人気のエリアは、平日は外国人がスキー場も街も埋め尽くしている。スキー場ではさまざまな国の言葉が飛び交い、まるで外国のスキー場に来たかのようだ。
とはいえ、1990年代と比べればスキー場はよりゆったりと楽しめるようになった。ゴンドラが2時間待ちなどということもなければ、朝からレストハウスの席取りをしなければランチも食べられないなどということもない。また多くのスキー場が地元の方への割引サービスを用意している。なかには岐阜県郡上市のように、高校生以下なら指定のスキー場を無料で滑れるサービスを実施している自治体もあれば、県民割、道民割などのシステムを導入しているスキー場もある。世界中の人が憧れる日本の雪を、手軽に身近に楽しめる環境も広がってきているのだ。
現在、国内のスキー場の数は400超。そしてそのほぼすべてが山岳エリアにあり、スキーと同時に雪山も体験できる。ゲレンデを快適に滑走するのはもちろん、つむじ風によりゲレンデに模様ができるのを確認したり、時折ドスッという音をたてながらブナ林に降り積もっていく雪を眺めたり、ほっぺたが痛いほどの吹雪などの体験も、スキー場ならではの思い出になる。訪日外国人だけではもったいない。
プロフィール
中橋秀和(なかはし・ひでかず)
競技スキー専門誌の編集長を経て山と溪谷社に入社。高校時代はスキー部に所属し、その後大学までは競技スキーを行なう。以後、さまざまなスタイルのスキーを楽しんでおり、山と溪谷社入社以降は山スキーがメインになっている。火打山(新潟県)に初めて登って滑ったのは中学生のとき。元skier編集人。『山スキールート212』(山と溪谷社)共同執筆。
スキー場をもっと楽しもう!
日本には400を超えるスキー場があります。リフトが整備され、ゲレンデの雪面が整備されたスキー場は、安全に雪山を楽しむための条件がそろっています。
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