圧倒的な景観と、乾いたパウダースノーの浮遊感。バンフ、世界自然遺産カナディアンロッキーを滑る【海外スキー事情2025】
圧倒的な景観をもつ世界自然遺産カナダディアンロッキー。バンフを起点に、スケールの大きなスキー場でパウダースノーの浮遊感を満喫した。冬のアルバータ州を滑るスキートリップを紹介しよう。
文・写真=中橋秀和 取材協力=アルバータ州観光公社・フェロートラベル
1990年代からコロナ前まで、海外のスノーリゾートは多くの日本人でにぎわっていた。なかでも世界自然遺産カナディアンロッキーの中心地であるバンフは、1990年代から2000年代のはじめにはスキーツアーの行き先として日本人に人気のエリアだった。
数億年前の堆積岩がプレート運動により持ち上がり、特徴的な岩と雪のモノトーンに彩られた山々。圧倒的な景観をもつ世界自然遺産カナダディアンロッキー。バンフは、その中心に位置する街で、周辺にはレイクルイーズ、サンシャインビレッジ、マウントノーケイの3つのスキーエリアを擁している。
バンフからはこれらのスキー場への無料シャトルバスが用意されており、最も遠いレイクルイーズでバンフから約1時間、サンシャインビレッジなら約40分でスキー場に到着する。レイクルイーズはカナダでトップクラスのエリア面積を誇るスキー場で、環境に配慮してリフトやゴンドラの本数は少ないが、日本であれば管理区域外までスキー場のエリア内だ。一方、サンシャインビレッジにはカナダで最も長いゴンドラがあり、こちらもエリア内には、まるで岩稜帯のシュートのような超難コースも存在する。どちらも世界遺産を滑る醍醐味を味わえるスキー場だ。
筆者は30年前にバンフを訪れ、世界遺産を滑っている。今回、カナダ・アルバータ州観光公社とフェロートラベルのプレスツアーで再び同地を訪れる機会を得た。今回もバンフは世界各地からの観光客でにぎわっていたのだが、30年前と決定的に違っていたのが、日本からのツーリストがほとんどいなかったということ。
「新型コロナウイルス以降、日本からのツーリストはほとんどいなくなった」というのはバンフの日本人のガイドだ。かつては、バンフの街やスキー場で日本人と会うのは普通のことだった。しかし、今回はバンフでもスキー場でも日本人に会うことはほとんどなかった。今でもショップや飲食店の店頭には日本語の「いらっしゃいませ」の看板が残っている。が、滞在中ガイドさん以外から日本語を聞くことは一度もなかった。
造山運動と氷河期を経て3000メートル級の岩山と氷河湖が点在する唯一無二の地形は、30年ほどのわずかな時間では変わりようもない。また、訪れた3月の平均気温は−5℃。日本よりも乾いて軽いパウダースノーで、カナディアンロッキーに囲まれて滑る感覚は、まるで飛んでいるかのような浮遊感を与えてくれる。異邦人が一人で滑っても、大満足の滑走だった。
「ジャパウ」として日本のパウダースノーが世界中で注目されるようになって約10年。今回、ウエストジェットの直行便で飛んだカルガリー空港のスタッフには「なんでわざわざ日本から滑りに来たんだ」と言われた。が、少なくとも3月の雪としてはレイクルイーズやサンシャインビレッジの雪は、日本の本州のスキー場の雪よりもはるかによかった。また、バンフの街はお店が変わっているところはいくつもあったが、街を象徴する山や建物、スキー場からの山の景観は全く変わらず、冬のカナディアンロッキーを堪能できた8日間だった。
プロフィール
中橋秀和(なかはし・ひでかず)
競技スキー専門誌の編集長を経て山と溪谷社に入社。高校時代はスキー部に所属し、その後大学までは競技スキーを行なう。以後、さまざまなスタイルのスキーを楽しんでおり、山と溪谷社入社以降は山スキーがメインになっている。火打山(新潟県)に初めて登って滑ったのは中学生のとき。元skier編集人。『山スキールート212』(山と溪谷社)共同執筆。
スキー場をもっと楽しもう!
日本には400を超えるスキー場があります。リフトが整備され、ゲレンデの雪面が整備されたスキー場は、安全に雪山を楽しむための条件がそろっています。
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