一度体験すると抜け出せなくなる。「山とスキー」の世界にようこそ
自然の雪山を滑るバックカントリースキーは、雪山登山とスキーのおもしろさを同時に体感できるアクティビティだ。ある程度の体力も技術もリスク管理のスキルも必要だが、一度体験すると抜け出せなくなるほどおもしろい。
文・写真=中橋秀和 トップ写真=PIXTA
何年か前、会社の後輩と新潟県の浅草岳(あさくさだけ)を登っているときに、高齢の女性登山者とすれ違った。女性はスキーを履いて登っている我々を見て、「登ったら、さーっと滑って降りるのでしょ。すてきね。ビックカントリーって言うのよね」と話しかけてきた。正しくは“バックカントリー”だ。でもビックカントリーのほうが、このアクティビティーを正確に表現しているのではないかとも思った。「バックカントリー」、「山スキー」、そして「ビックカントリー」。呼び方は何でも構わない。雪山を、スキーを履いて登り滑る。ただそれだけのことなのに、非日常の別世界で、一度体験すると抜け出せなくなる。すばらしい世界、それは危険な世界でもある。
山スキーは、雪山登山でもある。さらに滑走中の転倒は大きなリスクがあり、少なくともスキー場のゲレンデは転倒することなく滑り切るスキー技術も求められる。そのため、経験のない人に簡単にすすめられるアクティビティーではない。でも、リスクも覚悟の上で挑戦しようという方は、まずはガイドツアーで山スキーを体験してほしい。もちろん、経験のある仲間がいれば仲間と一緒にトライするのもありだ。ただし、スキーガイドはいろいろなレベルの参加者を雪山に案内しており、トラブルの際にいくつもの解決策を持っている。また、エリアに密着したスキーガイドなら、そのエリア内の雪のコンディションなども熟知しているので、よりベターなルートの提案などもできる。そういう意味では山スキーのリスクを減らすための手段なのだ。
ただし、ガイドツアーだろうが、経験豊富な仲間との山行だろうが、もしもの時は自己責任の世界でもある。たとえば、どんなにベテランのスキーガイドでも、雪崩の発生を100パーセント予測できるわけではない。行動中にギアが故障してしまうこともある。何度も同じコースをたどったことのある仲間が、積雪量の違いからルートロスをすることもある。そんな時に、最後に頼りになるのはあなた自身のトラブル解決のスキルだ。これらのスキルは、さまざまな情報に接しておくことはもちろんだが、実際に経験して身につくことも多々ある。たとえば救助要請のタイミングを適切に判断することも、大切なスキルなのだ。ただこれらの困難を乗り越えても、体験したものにしかわからない感動が山スキーにはある。だから山スキーヤーたちはターンのたびに雄叫びを上げるのだ。
プロフィール
中橋秀和(なかはし・ひでかず)
競技スキー専門誌の編集長を経て山と溪谷社に入社。高校時代はスキー部に所属し、その後大学までは競技スキーを行なう。以後、さまざまなスタイルのスキーを楽しんでおり、山と溪谷社入社以降は山スキーがメインになっている。火打山(新潟県)に初めて登って滑ったのは中学生のとき。元skier編集人。『山スキールート212』(山と溪谷社)共同執筆。
バックカントリースキーの世界
自然の雪山を滑るバックカントリースキーは、雪山登山とスキーのおもしろさを同時に体感できるアクティビティだ。雪山の美しさも厳しさもダイレクトに感じることができるぶん、ある程度の体力も技術もリスク管理のスキルも必要だが、一度体験すると抜け出せなくなるほどおもしろい。
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