バックカントリーはリスクと隣り合わせ。もしもの時、あなたならどうする

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バックカントリースキーは自然の雪山で行なうアクティビティだけに、遭難のリスクと隣り合わせだ。

文・写真=中橋秀和 トップ写真=PIXTA


山スキーで常について回るのが遭難のリスクだ。雪山では雪崩や道迷い、天候急変によるホワイトアウト、転落などリスクは大きい。そのために登山計画書を提出していることは当たり前だ。では、雪山で遭難した場合どのような救助活動が行なわれるのか。ガイドツアーなどグループで行動している場合は、まずは動ける人間が携帯電話など通信機器の電波が入るところに移動して救助要請ということになると思う。

一般的に、消防でも警察でも救助要請が入った場合は、それぞれが連携して救助の計画を作り実施する。同時に遭難対策協議会(遭対協)が組織されているエリアであれば遭対協、なければ現場近くのスキー場や山小屋にも協力が要請され、たとえばスノーモービルや圧雪車などで駆けつけることができれば、すぐに出動することになる。

単独の場合は少し状況が異なり、たとえば雪崩や転落で本人が通報できない状況になった場合は、帰ってこないことを心配した家族や、スキー場などの駐車場に残された車を施設管理者が心配して問い合わせをすることから捜索が始まることが多い。グループに比べて初動はかなり遅いことになる(最近ではアップルウオッチの転倒検知機能で検知され通報されることもある)。

遭難の捜索や救助で警察や消防が動く場合は、ほとんどのケースで遭難者が費用を支払うことはない。しかし、ほぼすべての遭難で遭対協やスキー場、山小屋などのスタッフも動いており、その場合スッタッフの人件費、保険料、スノーモービルや圧雪車、ゴンドラやリフトの稼働費は、遭難者に請求される。たとえばスタッフの人件費は1人1日3万円、スノーモービルは5万円、リフトを稼働させたら1回10万円(各金額は仮定)など、それぞれの施設が金額を定めており、遭難者はそれをすぐに支払うことになる。以前は遭難の際に民間のヘリが飛べば100万単位のお金がかかるといわれていたが、冬山ではスキー場が捜索や救助に協力すれば、同じように100万単位のお金が請求されることもある。たとえばビーコンを持っていないスキーヤーが雪崩に巻き込まれ行方不明になった場合、数十人でのプロービングによる捜索を行なうこともあるが、このような場合捜索の金額はあっというまに膨らんでいく。

登山届を提出するポスト
雪山でも入山口に登山届を提出するポストがあることが、ないケースも多くその際は警察署やコンパス、スキー場のパトロールなどに提出しよう

とはいえ、遭難の際の捜索や救助は、お金がかかるから行なわないというわけにはいかない。そのために、遭難の際の捜索や救助の保険に入っておくことはとても重要だ。また、雪山の遭難では初期捜索だけで見つからないケースもある。通常、公的機関の捜索は数日程度で打ち切りになるが、家族としては簡単に諦められるものでもない。そうなると家族としてはどうやって捜索すればよいのかもわからなくなってしまう。なにをすればよいのかまったくわからないのが実際なので、費用とともに「どう探すか」もとても大きな問題になるのだ。もちろんネットで検索を行なえば、遭難者の探索を行なってくれる団体は見つかる。ただ実際は、遭難場所が特定されていない場合、これらの団体でも捜索方法を決めるのは簡単ではない。

たとえばココヘリは登録者に捜索電波の発信機を渡した上で、捜索サービスを提供する山岳捜索サービスだ。事前に提出された登山届と発信機の電波を頼りに遭難者を捜索するのだが、生死は別にしてその発見率は、発信機を正常につけていれば非常に高い。スキー場アクセスでバックカントリーエリアにアクセスできるスキー場のなかには、スキー場の管理エリアから出る際は、ココヘリを必須にしているスキー場もある。

まずは遭難しないことが大切だが、リスクがあることにチャレンジする以上、山岳保険や捜索サービスもしっかり調べて、自分に合ったものを用意しておく必要がある。
(C-2511-0004)

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プロフィール

中橋秀和(なかはし・ひでかず)

競技スキー専門誌の編集長を経て山と溪谷社に入社。高校時代はスキー部に所属し、その後大学までは競技スキーを行なう。以後、さまざまなスタイルのスキーを楽しんでおり、山と溪谷社入社以降は山スキーがメインになっている。火打山(新潟県)に初めて登って滑ったのは中学生のとき。元skier編集人。『山スキールート212』(山と溪谷社)共同執筆。

バックカントリースキーの世界

自然の雪山を滑るバックカントリースキーは、雪山登山とスキーのおもしろさを同時に体感できるアクティビティだ。雪山の美しさも厳しさもダイレクトに感じることができるぶん、ある程度の体力も技術もリスク管理のスキルも必要だが、一度体験すると抜け出せなくなるほどおもしろい。

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