登山道・山岳景観の維持に待ったなし! 登山地の昨日・今日・明日と日本山岳遺産基金の役割

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登山愛好者が安全に山を楽しみ、山からの自然を享受できているのは、山を守っている人々の活動なしには語れない。登山道の整備、希少植物の盗掘防止、自然環境教育など、日本各地でさまざまな活動がされている。日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために設立された日本山岳遺産基金は、こうした活動に支援を行っている。

 

山に登る際には、ほとんどの人が登山道を歩いているはずだ。ふだんは気に留めることは少ないが、その道に目を向けると、安全に歩けるようにさまざまな整備が行われていることに気づく。

急登には階段が整備され、木道が延々と続いている場所もある。また、本来は鬱蒼と茂るはずの草が刈払いされていたり、飛び出した枝が通りやすいように切られていたりもする。さらには、分岐点での道標や山頂の看板など、登山に行けばさまざまな整備が行われていることが確認できる。

また、安全面だけではない。高山植物自生地などの自然保護地域では、登山道以外に踏み入らないようにロープやネットが張られていることがある。湿原に木道が延々と敷かれているのも、自然保護が目的だ。山の美しい自然は、人によって守られている部分も少なくない。

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登山道の整備、山岳環境保全の活動をする人々

 

こうした登山道の整備や環境保全活動は、当然、人の手によって作業されているが、「誰」が行っているのかご存じだろうか?

国立公園や国定公園に指定されているような山岳エリアや、北アルプスや富士山のように登山者が多く訪れるような登山地では、国や自治体が中心になり、また、周辺の山小屋のスタッフも積極的に整備を行っている。しかし、多くの山域では、地域の人々の懸命な努力によって成り立っているのである。

地域の人々とは、山岳会であったり、地元の企業であったり、NPOなどのボランティア団体であったりとさまざまだが、登山道などの維持に活動する人々の姿がある。こうした熱心な人々によって成り立っている活動も、厳しい現実にさらされている場合も少なくない。その原因の1つが、資金不足だ。

例えば登山道整備を行うためには、さまざまな資材・物品が必要になる。階段の丸太やロープなど、材料調達のコストはもちろん、これらの運搬や設置の経費はバカにならない。自然保護活動も同様だ。各所で外来種の植物の除去作業などが行われているが、その作業を支えるには、やはりさまざまな資金は必要となる。さらに、ボランティアといっても、人が集まって活動を支えるには、旅費・交通費、宿泊費、通信連絡費などもかかるものだ。

また、経済問題だけではない。参加する人の減少・高齢化も頭を痛めている。熱心に活動する人が減り、十分に山の保全活動が行われないままになっている場所も増えている。

こうした登山地の現実な問題を改善すべく、2010年に山と溪谷社は「日本山岳遺産基金」を設立した。次世代に伝えたい豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」と認定し、そのエリアにおいて活動をする団体に助成金の支給や各種活動の広報支援などを行っている。

 

 

2010年、愛媛県・石鎚山、山梨県・乙女高原、山梨県・小金沢シオジの森、山梨県・櫛形山の4箇所が日本山岳遺産として認定したのを皮切りに、2020年までに39箇所が選ばれ、基金の支援を受けている。

それぞれの活動に着目すると、どこも地域に根ざし、趣向を凝らしながら活動の環を広げるものばかりだ。各団体の活動については、日本山岳遺産のホームページにダイジェストで掲載しているが、さらに具体的な内容について、今後紹介していく。

日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費等の経費。
  • 資料の翻訳、印刷、出版等に係る経費。

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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