十分な睡眠や休養を取れるような登山計画を立てましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第159号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2019年8月20日に配信された第159号では、夏休みに入り遠方からの登山者が増え、移動時間の考慮と体調管理の重要さについて言及している。

 

8月20日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第159号では、8月5日~8月12日に起きた22件の山岳遭難事例について説明している。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月5日、北アルプス槍ヶ岳で、家族と2人で入山した63歳の男性が、槍ヶ岳山頂から下山中に足を踏み外し転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月6日、北アルプス大天井岳で、仲間と4人で入山した49歳の男性が、燕山荘から大天井岳に向けて縦走中に足を滑らせ転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月6日、北アルプス常念岳で、家族と3人で入山した68歳の男性が、常念岳から下山中につまづいて転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月6日、湯の丸高原烏帽子岳で、単独で入山した76歳の女性が、烏帽子岳から下山中に道に迷い、さらに転倒・負傷し行動不能となる山岳遭難が発生。女性は上田署員、上田広域消防署員により救助された。

  • 8月6日、南アルプス鋸岳で、64歳の男性2名が、鋸岳付近を登山中に崖に迷い込み、行動不能となる山岳遭難が発生。2人は翌7日に県警ヘリにより救助された。

南アルプス鋸岳の遭難場所/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月14日付
 
  • 8月8日、北アルプス白馬岳で、登山ツアーに参加中の65歳の男性が、大雪渓を登山中に疲労及び体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は大町署山岳遭難救助隊員、北アルプス北部地区遭対協白馬班救助隊員により無事救出された。

  • 8月8日、北アルプス八方尾根で、単独で入山した61歳の男性が、八方尾根を下山中に登山道から滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は大町署山岳遭難救助隊員、北アルプス北部地区遭対協白馬班救助隊員により救助された。

  • 8月8日、北アルプス常念岳で、単独で入山した42歳の男性が、8月1日に付近の山小屋に宿泊した以降、行方不明となる山岳遭難が発生(8月8日認知)。8月9日に常念岳から蝶ヶ岳の間で遺体が発見され、県警ヘリで収容された。

  • 8月8日、北アルプス赤岩岳で、単独で入山した67歳の男性が、燕岳から西岳方面へ縦走中に赤岩岳付近で滑落して負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月9日、北アルプス大天井岳で、単独で入山した43歳の男性が、大天井岳から西方面へ縦走中に登山道上で石を踏みはずし、転倒・負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月9日、北アルプス白馬鑓ヶ岳で、家族と2人で入山した50歳の男性が、白馬鑓ヶ岳から下山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月9日、北アルプス奥穂高岳で、家族と4人で入山した10歳の女性が、奥穂高岳方面に向け登山中、休憩場所で腰掛けた岩が動いてバランスを崩し、転倒・負傷する山岳遭難が発生。女性は県警山岳遭難救助隊により救助された。

  • 8月10日、北アルプス唐松岳で、家族と2人で入山した67歳の女性が、唐松岳から下山中に足を滑らせて負傷する山岳遭難が発生。女性は大町署山岳遭難救助隊及び長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐パトロール隊により救助された。

  • 8月10日、北アルプス乗鞍岳で、仲間と2人で入山した50歳の男性が、剣ヶ峰から下山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警山岳遭難救助隊、松本広域消防局救助隊により救助された。

  • 8月11日、北アルプス湯俣川で、仲間と4人で沢登りのために入渓した61歳の男性が、沢登り中に掴んだ石を足に落とし負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月11日、北アルプス槍ヶ岳で、仲間と5人で入山した77歳の男性が、北鎌尾根から槍ヶ岳へ向け登山中に疲労と体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は翌12日に県警ヘリで救助された。

  • 8月11日、中央アルプス権現山で、単独で入山した61歳の男性が、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性は翌12日に捜索していた伊那署員により発見、救助された。

  • 8月11日、北アルプス槍ヶ岳で、仲間と3人で入山した56歳の女性が、槍ヶ岳へ向け登山中に滑落、負傷する山岳遭難が発生。翌12日に救助要請を受け、女性は県警ヘリで救助された。

  • 8月12日、北アルプス白馬乗鞍岳で、家族と3人で入山した14歳の男性が、栂池方面へ下山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐パトロール隊、北アルプス山岳遭難防止対策協会小谷班救助隊、大町署山岳遭難救助隊により救助された。

  • 8月12日、北アルプス常念岳で、仲間と4人で沢登りのために入渓した65歳の男性が、一ノ俣谷を常念岳方面へ沢登り中に転倒、負傷する山岳遭難が発生。男性は県警ヘリで救助された。

  • 8月12日、北アルプス白馬乗鞍岳で、仲間と2人で入山した35歳の女性が、白馬乗鞍岳方面へ下山中に疲労及び体調不良(熱中症疑い)のため行動不能となる山岳遭難が発生。女性は長野県山岳遭難防止対策協会夏山常駐パトロール隊、大町署山岳遭難救助隊により救助された。

  • 8月12日、北アルプス餓鬼岳で、仲間と2人で入山した54歳の男性が、白沢登山口へ下山中に滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は大町署山岳遭難救助隊により救助された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月2週は、22件の遭難が発生しました。山域別では22件のうち19件が北アルプスで発生しています。
夏季は長期休暇を利用して、遠方から山深い北アルプスを訪れる登山者が増える一方で、登山前日の深夜あるいは当日早朝に、自宅から登山口までの移動のため十分な睡眠や休養を取らない方がいます。その結果、登山中に疲労や体調不良で行動不能となったり、不慣れな登山道で疲労によりバランスを失い転倒・滑落するといったケースが見受けられます。
また、車両やロープウェイなどを利用して標高の高い登山口から入山する場合は、標高が身体に与える影響も十分に考慮しなければなりません。これらのことから、登山前は体調管理に努め、自宅からの移動時間等も考慮し、自身やメンバーの体力・経験に見合ったゆとりのある日程を計画し、安全に登山を楽しんでください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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