林の中で存在感を示すチゴユリは、春から秋まで楽しめる

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本格的な春が訪れ、山にも様々な花が咲きだしています。数ある花の中でも、林の中で存在感を示す花の1つがチゴユリ。星型の端正な姿のこの花について、植物写真家の高橋修さんが詳しく教えてくれました。

 この連載は去年の春、スミレの原稿から始めている。気がつくと、また春が来てスミレの季節になった。一年がたつのは早いものである。植物を見ながら山を歩いていると、季節の移り変わりが強く感じられる。

 ようやく木々も芽吹きだし、明るい緑の光の中、色豊かな春の低山を歩いていると、足元に咲く小さい、なぜかとても気になる花がある。林の中に白く星のような形の花を下向きに咲かせるチゴユリだ。

 ほかに似た花はなく、見分けるのは簡単だ。北海道から本州、四国、九州まで広い場所に分布し、個体数も多いのだが、なぜか強く心惹かれる植物なのである。

 地中に伸びた根で増えるので、たいていひとつだけでなく、いくつかまとまって生えている。花びらの長さは1~1.8cm。小さいけれどもユリのような端正で美しい形をしている。

 茎は20cm程度で、まれに40cmほどの大きさになる。チゴユリは漢字で書くと「稚児百合」。小さく可憐なその花から名づけられた。ユリと名前が付いているが、植物学上ではユリ科ではなくイヌサフラン科に分類される。

 秋になると葉は黄葉し、果実もなる。果実は直径1cm弱と大きく、チゴユリは春から秋まで長時間楽しむことができる植物なのである。

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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