冬の山の特徴を知ろう! ベストシーズンとなる低山を登る際の注意点とは?

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本格的な冬に向かうと、日本の山は日本海側を中心に、深い雪に包まれます。一方、太平洋側の標高の低い山は、好天に恵まれベストシーズンとなります。そんな太平洋側の低山を楽しむために知っておくべき、山岳気象情報をお伝えします。

 

北日本では平地でも雪が降るようになり、いよいよ本格的なウィンターシーズンの到来です。東日本や西日本でも、高い山は雪化粧して夏とは異なる装いに様変わりしました。

冬の登山というと、雪山に登ってみたいと思う方もいれば、自分は雪のない低山の方が好きだという方もいることでしょう。冬の山とは、いったいどのような世界なのでしょうか。冬の山の天気の特徴と、雪のない低山を登る際のポイントを解説します。

 

日本の冬の山の特徴

日本の高山がヨーロッパアルプスやヒマラヤの山々と大きく異なるのが、夏になると一部の谷氷河や雪渓を除いて全ての雪がとけてしまう、という特徴です。日本の夏山シーズンでは、降雪や雪崩、雪上歩行の心配をさほどすることなく高い山を楽しむことができます。

ところが、冬の高山は山肌が真っ白に染まります。冬型の気圧配置になると、北西の季節風が山にぶつかり、大量の雪が山に降るのです。

とはいえ、全ての山で同じように雪が降るわけではありません。主に地形の条件から、日本の山の天候はいくつかのタイプに分けられます。

最も雪が降りやすいのが、日本海側の山々です。日本海側の地域は、冬型の気圧配置になるたびに多くの雪が降り、比較的低い山であっても本格的な雪山の世界になります。

対照的なのが、太平洋側の山々です。こちらは、冬型の気圧配置になると晴れやすく、標高の高い山を除いて積雪はそれほど深くなりません。

ただし、「南岸低気圧」と呼ばれる低気圧が日本の南の海上を通ったときには、一度に多くの雪が降るのが特徴です。日本海側の地域と太平洋側の地域を分けているのは脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)と呼ばれる山々で、奥羽山脈や谷川連峰、中国山地が主な例です。これらの山は積雪量が多く、本格的な雪山になります。

登山のメッカである中部山岳エリアは、日本列島の中で最も日本海と太平洋が離れている地域にあたり、内陸の気候の特徴を持っています。八ヶ岳や中央アルプス、南アルプスはしっかりと雪が積もりますが、冬型の気圧配置の時には晴れる場合が多く、多くの雪山登山愛好者が入山します。

ただ、雪は日本海側で降りつくしても、風は山を越えて吹き付けます。気温も低く、登山道の凍結は当たり前です。確実なアイゼンワークが求められます。

 

低山ってどんなところ?

冬は低山の季節と言われることがあるようです。低山の明確な定義があるわけではありませんが、一般的には雪が積もる頻度が少ない標高1000メートル以下の山で、登山道が整備されている山を指します。

関東圏では、高尾山や筑波山、関西圏では六甲山をイメージすると分かりやすいでしょう。これらの山は、降雪直後であっても登山道がわからなくなるほど積もることは少なく、これから冬の登山を始めるという方でも挑戦しやすいと言えます。

夏山シーズンには暑さに悩まされる低い山も、冬は体を動かすのにちょうどいい気温です。また、夏は気になる羽虫やヒルも、冬場はほとんど見かけません。空気が澄んで、遠くの展望がよくききます。このような理由から、冬は低山の季節と言われるのでしょう。

ただし、冬ならではの注意点があることを忘れてはいけません。やはり、山地は平地よりも気温が低いため、登山道の凍結には注意が必要です。特に、沢にかかる鉄製の橋や、渡渉ポイントの足場は滑りやすく、私自身、何度も転倒したことがあります。

また、冬は夏に比べて日の出が遅く、日没が早いです。日没後は足元も見えないほど暗くなり、明かりなしで行動することは不可能です。行動可能な時間が夏に比べて短いことに留意しつつ、もしものためにヘッドライトを必ず持っていきましょう。

運行している交通機関が夏より少ない地域があり、公共交通機関では登山口までアプローチできない山があることも知っておいてください。車道歩きが増えれば、それだけ行動可能な時間も削られます。

 

冬の低山登山に必要な装備 

冬であっても、装備の基本の考え方は夏と変わりません。まず、服装ですが、夏同様、山のウェアはレイヤリング(重ね着)が重要です。気温や体温に合わせてこまめに服を脱ぎ着しましょう。汗を良く吸うベースレイヤー・暖かい素材のミドルレイヤー・風から身を守るアウターの3層を基本にすると良いです。特に、ベースレイヤーの選択を間違えると、汗をかいたときにすぐに不快になり、体温を下げる原因にもなります。

綿素材は避け、登山用のインナーを選びましょう。わからなければ、登山ショップ店員などに聞けば、快くアドバイスをもらえると思います。パンツも概ね夏同様ですが、夏より保温力の高いものがおすすめです。中に穿く登山用のタイツも売られているので、ご活用ください。

冬の登山では、手袋・グローブは用意しておきましょう。体の末端部分は冷えやすく、保護する必要があります。帽子はミットのような保温力のあるものが良いでしょう。

登山靴は、アイゼンを装着することがなければ、夏と同じものを使えます。アイゼンが必要な山かどうかは、必ず事前に調べて確認してください。

必ず持って行って欲しいものが、先ほども触れたヘッドライトです。冬の日没はあっという間に訪れます。山中で一夜を過ごす予定がなくても、リュックサックに入れておいてください。また、時々点灯させてみて、電池が残っているかを確認しましょう。

ぜひ持って行って欲しいのが日焼け止めや保湿クリームです。案外冬もしっかり日焼けします。また、夏より空気が乾燥しています。快適に登山するために、肌が空気に触れる部分のケアも忘れずに。安全面に配慮しつつ、ぜひ冬も思いきり山に親しんでください。

 

プロフィール

宮田雄一朗

日本気象協会所属の気象予報士。山梨県で気象キャスターをしています。天気予報をきちんと伝えられるように奮闘中。日々の天気の話題の中で、登山にちょっと役立つ知識もお届けします。

日本気象協会

日本の気象コンサルティングサービスのパイオニアとして1950年に創立。以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行っている。
近年ではAIやIoT、気象ビッグデータの活用を通じ気象の調査解析、情報提供の精度を向上させ、気候変動への適応など持続可能な世界を実現する活動を支援している。
 ⇒tenki.jp

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