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これからの登山情報収集術 第3回 ガイド著者・星野秀樹さんに聞く、頼れるガイド本作りの背景

安全登山について考える。これからの登山情報収集術
たしなみ 2020年02月10日

文・写真=吉澤英晃

登山を安全に楽しむためには情報収集が欠かせません。書籍や雑誌も存在しますが、今では本を読まない、インターネットだけで充分、という方もいるでしょう。しかし一方で、インターネットの情報をうのみにするな、という声もよく耳にします。

安全に山を登るための情報収集の方法について考えていく本企画。第三回に登場するのは、豊富な登山経験と剱・立山エリアに対する見聞の広さから『ヤマケイ アルペンガイド 剱・立山連峰』(山と溪谷社)の執筆を担当された星野秀樹さん。著者として考えるガイド本を読むメリットや執筆時の苦労話を聞かせていただきました。

⇒第1回 ITジャーナリストに教わる信頼性の高い情報を集めるコツ【高橋暁子さん】

⇒第2回 花谷泰広さん直伝、インターネットを賢く活用する方法【花谷泰広さん】

星野秀樹

1968年生まれ。同志社山岳同好会OB。ヒマラヤなどで高所登山の経験もあり。1999年からフリーランスとして独立し山岳雑誌などでカメラマンとして活動するほか、著書に剱・立山をテーマに取材を重ねた『剱人 剱に魅せられた男たち』(山と溪谷社)など。

 

コースタイムや危険箇所など一貫して読者目線で情報を収集

ライター吉澤:インターネットが普及する前はガイド本で情報を集めるのが一般的でした。各コースの所要時間について、著書である『ヤマケイ アルペンガイド 剱・立山連峰』(以下、『剱・立山連峰』)には「30〜50歳の登山者が山小屋利用1泊2日程度の装備を携行して歩く場合を想定した標準的な所要時間です」と書かれています。どのように客観的な時間を出しているのか知りたいです。

星野さん:ガイド本を作るときは全てのコースを歩いて取材します。このとき、歩くペースに気を配りましたね。読者のことを考えながらガレ場ではあえてゆっくり歩いたり、単調な登りではペースが速くならないようにしたり、疲れても歩く速度を遅くしないようにしようとか。そして実測したデータをGPSや写真の記録時間、過去のデータなどと検証して、本には微調整したタイムが掲載されています。

『ヤマケイ アルペンガイド 剱・立山連峰』より

 

ライター吉澤:個人的な山行で他人のペースを考えて歩くことはありません。これは個人の記録とガイド本の大きな違いといえますね。地図にはコースタイムのほかに展望スポットや危険箇所なども細かく記されています。これらの情報はどうやって集めたのですか?

星野さん:実際に歩きながら展望がいい場所や高山植物の群生地、危険と思われる箇所などをGPSでチェックするんです。そのときメモ帳にも一言二言詳細を書き込みます。そして、それらを帰宅してから新しい地図に全て落とし込む。最終的にはすごい情報量になるので、掲載にあたっては読者の役に立つと思われるものだけに絞りました。

ライター吉澤:本文を書くときも読者のことを考えて意識していることはありますか?

星野さん:例えばクサリ場やハシゴ場などの危険箇所について説明するとき、何が危険なのか具体的に書くように努めています。ただ“危険”と書くのではなくて、足元が切れ落ちているから危険とか、乗り移る時にバランスを崩しそうになるから危険とか。その危険性をリアルに読者が想像できるように、どれだけ情報を具体化、客観化できるかを常に意識しています。

 

ガイド本を読めば季節を問わず概況が把握できる

ライター吉澤:チェックするポイントは一回の取材でどれくらいの数になりますか?

星野さん:最近歩いた谷川岳の天神尾根だと56。巻機山だと28とか。それとは別に、取材は季節を変えて複数回行うこともあって、新緑と紅葉のシーズンだとチェックすべきポイントが違ってくるので、そうするとまた違うデータを得ることができます。

取材時のメモ

 

ライター吉澤:異なる時期の情報をひとつの文章で知ることができるのもガイド本の特徴といえますね。例えば『剱・立山連峰』のP16、浄土山から雄山への一文では「・・・浄土山と室堂山との分岐に出る。このあたりは時期によっては残雪におおわれているので、分岐を見落とさないように気をつけたい」とあります。季節にとらわれずコースの概況を把握しやすいです。

星野さん:でも最新の情報を得るという点で比べると書物はインターネットには敵わない。インターネットは積雪状況とか高山植物の開花情報とか、ライブの情報を調べる使い方に適していますね。

 

登山計画 危機管理 知識・雑学
教えてくれた人

星野秀樹

1968年生まれ。同志社山岳同好会OB。ヒマラヤなどで高所登山の経験もあり。1999年からフリーランスとして独立し山岳雑誌などでカメラマンとして活動するほか、著書に剱・立山をテーマに取材を重ねた『剱人 剱に魅せられた男たち』(山と溪谷社)など。

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