会津檜枝岐温泉 旅館ひのえまたで山菜・地酒・郷土料理を楽しみ、残雪の会津駒ヶ岳に登る

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※緊急事態宣言による外出自粛要請が出ている状況ですが、来年以降の登山の参考のため、また、外出ができないなかでも山行の楽しみを記事を読んで感じていただければと思います。

ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第4回は檜枝岐村で春の山の幸を楽しんでから、会津駒ヶ岳へ。

写真・文=月山もも

4月から5月にかけて、福島県の会津駒ヶ岳に登るのがとても好きです。雪の残り方は年によって違いますが、残雪の稜線を歩きながら、燧ヶ岳を始めとした尾瀬の山々が青空に白く照り映えるのを眺められるのは、この季節ならではの楽しみだなと思います。

バス停のある「滝沢登山口」から往復し、山頂直下の山小屋「駒の小屋(素泊まりのみ・予約制・2020年は5月末まで休業予定)」に一泊するルートで登りました。

晴れれば、小屋の目の前から日の出を眺めることができるのもうれしいポイントです。
会津駒ヶ岳は高山植物が美しい山としても知られているので、次は7月頃に登るのもいいな、と考えているのですが、気がつくといつも残雪の頃に登っています。

もちろん、残雪期の会津駒ヶ岳がとびきり美しいから、ということも大きいのですが、もう一つ理由があります。麓にある会津檜枝岐温泉の宿に泊まって、採れたての山菜や筍を使った料理をいただきたいからです。山菜や筍の一番おいしい季節を選ぶと、残雪期に登ることになってしまうというわけで。

今回も、前泊で檜枝岐温泉の「旅館ひのえまた」に宿泊しました。最寄り駅の会津高原尾瀬口駅から1時間以上バスに乗ってたどり着く、山あいの秘湯と言う呼び方がぴったりくる温泉地ですが、旅館ひのえまたは建物も立派で大きく、とてもサービスの良い温泉旅館です。

宿泊するお部屋は8畳の和室で、一人で泊まるには十分すぎるほど広く、きれいなお部屋でした。

旅館ひのえまたには大浴場が2つあり、時間帯で男女の浴室が交換になります。

それぞれの浴室に内湯と露天風呂があり、露天風呂からは遠くに山の姿を眺めることもできます。露天風呂は浴室ごとに雰囲気が少し異なっているので、時間が許すなら両方入ってみたいところ。

お風呂の後は、お待ちかねの夕食です!

旅館ひのえまたでは、食事は1階にある個室の食事処でいただくのですが、今回は1人での宿泊ということでお気遣いいただき、夕食は部屋に運んでいただくことになりました。

個室なので食事処でも人目が気になったりということはないのですが、お部屋食だとテレビを見ながらのんびり、食事とお酒を楽しめるのでやはりうれしいですね。

お酒は、奥会津の地酒三種の利き酒セットをオーダーしました。

「筍の和え物」「ぜんまい煮」「地こごみ」など、山の春の恵みが目白押しのメニューが並びます。

山菜や筍のほのかな苦みを感じながら、辛口の地酒を味わう。幸せな瞬間です……。

鍋料理は「山人鍋」と言う、味噌仕立ての鍋です。舞茸、きくらげ、山菜、鴨肉、などの山の食材に、会津の名物料理だという蕎麦粉を練ってつまんだ「つめっこ」が入っています。

鴨肉ときのこから良い出汁が出て、全部飲み干したくなるおいしさでした。

それから、檜枝岐村名物の「はっとう」も。蕎麦粉ともち米を練ってのばし、菱形に切ったものを茹でて、きな粉とエゴマをつけていただくというものなのですが、素朴な甘さで箸休めにも最高の一品です。

蕎麦は檜枝岐名物の裁ち蕎麦。つなぎを一切使わない十割蕎麦で、蕎麦包丁を使わずに菜切り包丁で布を裁つように切ることから裁ち蕎麦と呼ばれているのだそうです。今日女将が裁ったばかりの蕎麦からはとても良い香りがしました。

だいぶお腹はいっぱいになったものの、〆のご飯が舞茸ご飯とあれば食べないわけにはいきません。明日たくさん歩くから大丈夫……と自分に言い聞かせながらたっぷりといただいて、翌日の登山に向けて早めに就寝します。

翌日は、早起きして朝風呂に入り、1階の食事処で朝食をいただいてから出発します。

鍋の中には近くで取れたきのこと、長芋の細切りが入った具沢山のお味噌汁が入っており、体が温まります。温泉卵や山菜、納豆、川魚の甘露煮など、山のお宿らしい朝食を味わい、食後にサービスのコーヒーをいただいた後は、身支度を整えてチェックアウト。

チェックアウト後は、宿の車で登山口まで送っていただきました。また、着替えやお風呂セットなどの登山中に必要のない荷物は、下山まで宿で預かっていただくことができ、少し身軽に登山を楽しむことができたのもありがたかったです。

いつもは「下山後に一泊」することのほうが多いのですが、前泊登山もたまにはいいものですね。次こそは春以外の季節に行ってみて、その季節らしい山の恵みを味わってみたいものだなと思いました。

(取材日=2018年5月上旬)

*掲載情報は、取材時の内容です。

旅館ひのえまた

尾瀬の玄関、福島県桧枝岐村にある温泉旅館。

料金:1泊2食付き/1室1名15000円~、1室2名13000円~
住所:〒967-0521福島県南会津郡檜枝岐村居平705
電話:0241-75-2324
HP:http://www.oze-rhinoemata.com/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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