| 唐松岳頂上山荘
2024.05.01
GW営業4/27~5/6迄(事前に電話必須)。八方尾根は冬道(尾根ルート)。6本爪以上のアイゼン必要
梅雨が開けると、いよいよ日本のアルプスも本格的な登山シーズンの幕開けとなる。登山道を覆っていた残雪は融け、変わって雪解けの下からは高山植物たちが芽を出し花を咲かせる。険しい山並み、眼下には雲海、そして稜線に遥か続く縦走路――。そんなアルプスの景色を味わうためにも、夏はぜひとも北アルプス・南アルプス・中央アルプスのいずれかに足を運びたい。
一方で、そこは国内でも屈指の標高の山域。遠足登山気分で登れるような場所は少ない。里山と比較すれば、圧倒的に登る距離も高さもスケールが大きい。また、一度天気が崩れれば、その厳しさは想像以上のものとなる。
そんなアルプスの中でも、比較的安心して登山できる、初心者でも安心できるコースを今回は紹介する。
「初心者向け」といっても、そこはアルプス。しっかりとした登山用の装備(とくに靴と雨具と服装!)で向かうのは当然、ある程度の登山経験は必須だ。また、険しい岩場や狭い尾根道がある箇所もあるし、濃いガス(霧)に覆われれば、迷いやすい場所もある。あくまでも「アルプスの中では初心者向け」であることを念頭に置いて行動したい。
また、紹介コースは「雪がない条件」ではアルプス初心者向けだが、雪があれば様子は変わってくる。一般的に雪の心配がなくなるのは、早い場所でも6月下旬だ。8月初旬頃まで雪の心配のある箇所もあるので、残雪状況はしっかり確認しておきたい。
それでも紹介するコースは、多くの登山者が訪れ、途中に山小屋があるので安心感のあるコースだ。初めてアルプスに行くという人の計画の一助としてほしい。
白馬岳や五竜岳などの険しい岩峰に挟まれた場所にある唐松岳。その東にのびる八方尾根は、冬はスキー場として賑わう場所だ。この、ゴンドラやリフトを乗り継いでいけば、一挙に1900m近くまで標高を稼ぐことができる。
ここから、標高2696mの唐松岳へは比較的緩やかな八方尾根を登ること約4時間。第2ケルン、八方池、丸山へと道中には、たくさんのお花畑が広がる。また険しい迫力ある岩稜を望みながらの登山は、初めて北アルプスに訪れたならば、永遠に心に焼きつくこととなるだろう。
時間的には日帰りも可能だが、北アルプスの中でも屈指の展望が望める場所、唐松岳頂上山荘に宿泊して夏の北アルプスの景色を満喫してほしい。
なお、唐松岳から先の道は非常に険しい。北に進めば難所の不帰キレット、南へ進んでも鎖場が連続する五竜岳が待ち受ける。祖母谷温泉へと続く西側は、非常に長い道を歩くことを強いられる。十分な経験がなければ、帰りは登ってきた八方尾根を降りるしかない。
高低図
| 唐松岳頂上山荘
2024.05.01
GW営業4/27~5/6迄(事前に電話必須)。八方尾根は冬道(尾根ルート)。6本爪以上のアイゼン必要
北アルプスの入門コースとして、誰もが勧める場所の1つが合戦尾根から登る燕岳だ。登山に必要な距離・標高差は決して楽ではないが、さまざまなファクターから「北アルプスの入門コース」と言われている場所だ。
その1つが「安心感」だ。多くの人が入山しているコースのため、なにか起きたときに心強く、道迷いの可能性も少ない。また、登山道はよく整備されており、途中に合戦小屋があることも、初心者には嬉しい。そして、稜線に立つ燕山荘は広く快適な山小屋として知られる。
本格的な夏山シーズンとなる7~8月は、雷鳥を多く見かけ、高山植物の女王コマクサがたくさん咲く。北アルプスの入門コースとして訪れたい場所だ。
高低図
アルプスの山々を楽しむなら、やはり稜線を歩き、稜線の山小屋に泊まり(またはテント泊する)、入山口とは別の場所に下山する、いわゆる縦走を楽しみたいもの。しかし縦走となると、交通機関や天気の心配も考えなければならない。
そんな縦走の入門コースとも言えるのが、この「蝶ヶ岳~常念岳」の縦走コースだ。稜線に出るまでの登山道は急だが、人気コースで登山者が多いうえに、鎖場や厳しい岩稜を通過する場所も少ないので安心だ。
また、森林限界を越えた稜線歩きは、アルプスらしい景色が広がり魅力的だ。とくに蝶ヶ岳から常念岳方面に向けて歩けば、はるか先に見える槍ヶ岳の展望がさらに高揚感を高めてくれる。
常念岳からは三股に戻るコースも取れるので、マイカーで入山した場合にも利用できるのも嬉しい。
なお日程と体力に余裕があれば、大天井岳を越えて燕岳まで縦走したい。アルプス初心者でも決して難しくないコースだ。
高低図
日本には3000m峰が21座ある(諸説あり)。その中でも、アルプスの3000m峰の頂に立つのは、登山を始めた人にとっては最初の目標の1つだろう。
数ある3000m峰の中で、比較的簡単に登れる場所が立山だ。紹介しているコースは、室堂展望台、浄土山を経由して立山を周回するルートだが、立山室堂から往復するのが最も手軽だ(約4時間)。
雄山を越えて雄山神社まで足を伸ばせば、標高3003mとなる。余裕があれば大汝山(3015m)まで行くのも良い。さらに余裕があれば周回することもできる。周回コースはファミリー登山者の姿もよく目にする。
シーズン中は賑わう立山室堂なので、安心感が高いのも魅力的だ。
高低図
立山方面から見ると、ひときわ大きな山容で存在感のある山が薬師岳だ。北アルプスの中でも最奥の場所にあり、標高は3000m近くもあるものの、富山県の折立から入山すれば、1泊2日で無理なく登れる山だ。
険しい岩稜が多い北アルプスの中では、このコースは全体的に道が緩やかで、恐怖心を感じながら歩く場所も少ない。幅広い尾根道は軽快に歩けるが、天候が悪くなれば道迷いや、強い風に吹きさらされることになるので、注意が必要だ。
それでも、途中に山小屋があり安心感も高い。天気の良い日に北アルプスの展望を楽しみながら歩きたいコースだ。
高低図
南アルプス――、とくに3000m峰となれば、どこも厳しい登山を強いられる。北アルプスに比べれば頼れる山小屋も少なく登山者の姿も圧倒的に少ないので心理的な不安要素も多い。
そんな中で、標高3033mを誇る仙丈ヶ岳は、比較的アクセスもよいうえに登山道中に山小屋が点在するので、安心感のある山だ。登山道も比較的緩やかで、スリリングな危険箇所も少ない。南アルプスの入門コースとして、はじめに訪れたい場所だ。
正面に見える甲斐駒ヶ岳の姿をはじめ、南アルプスの迫力ある山容を存分に楽しめる展望に加え、夏は高山植物が多く咲く。独特のカール地形など、夏のアルプスを存分に満喫できる。とはいえ、そこは3000m峰。登る高さも歩く距離も周囲の環境も、やはり厳しいものがある。しっかりとした準備で望みたい。
高低図
北アルプスや南アルプス以上に、登山者は少なめとなる中央アルプスだが、主峰・木曽駒ヶ岳周辺は賑やかで安心感のある山域だ。千畳敷まではロープウェイがかかり、ここから日帰りで往復する登山者も多い。途中に山小屋も点在するので、はじめてのアルプスとして選びたいコースだ。
氷河が刻んだ千畳敷カール内の美しい景観やお花畑、稜線からの開放感ある景色、木曽駒ヶ岳への稜線の歩きなど、アルプス登山の楽しさがぐっと詰まっていて楽しい。道は険しい場所もあるが危険箇所は少ない。
余裕があれば宝剣岳を往復したい。こちらは岩場が連続するスリリングな登山道なので無理は禁物だ。
高低図
最も手軽にアルプスの3000m峰を目指すなら、乗鞍岳となる。登山口となる畳平(標高約2700m)から、乗鞍岳の山頂(剣ヶ峰:3026m)までは、往復で3時間程度。観光客も多く、安心感は抜群だ。山頂までの往復の登山道に危険な箇所は少なく、安心して登山を楽しめる場所だ。
標高3000m前後の稜線歩きは、はじめてのアルプス体験には最適の場所とも言える。登山には物足りなさもあるかもしれないが、圧倒的な景観やコマクサなどの高山植物は初めてのアルプス登山者を魅了するはずだ。
ただし、標高3000mであることは忘れてはならない。ひとたび天候が悪化すれば平地とは比べ物にならない。登山に必要な雨具、シューズは必須だ。
高低図