極彩色の紅葉大パノラマ 酸ヶ湯温泉から八甲田大岳、毛無岱を巡る
四季を通じて登山者を魅了する八甲田山は、中でも紅葉の美しさで有名です。八甲田大岳を登り、黄金の草紅葉が輝く湿原を散策します。
青森県、八甲田山。最高峰の八甲田大岳(1585m)を中心に赤倉岳、井戸岳など複数の山々の総称です。ロープウェイ利用ができる散策路もあり、夏は高層湿原の花々、秋は紅葉が楽しめる人気の山です。

今回はロープウェイは利用せず、ひば千人風呂で名高い酸ヶ湯温泉からスタートし、なだらかな山容の八甲田大岳から井戸岳、赤倉岳の中央火口丘群をへて、高層湿原の毛無岱(けなしたい)など様々な角度からの紅葉を満喫するコースを紹介します。
前夜に酸ヶ湯の駐車場で見た満天の星空で、すっかり晴天を確信していましたが、起きてみると稜線は深いガスの中。それでも好転を期待して濡れた登山道を八甲田大岳をめざして登ります。

ガスの切れ間から見える地獄湯ノ沢の紅葉もしっかり色づき、天候回復の期待は高まりますが、まだ大岳山頂はガスの中です。仙人岱ヒュッテはきれいに整備されていましたが無人の避難小屋です。


井戸岳、赤倉岳へと火口跡の外輪山の稜線をたどるうちに、風も強まって、時折、ガスが切れて日射しがこぼれるようになってきました。ロープウェイからの道と合流した後、いよいよ高層湿原が広がる毛無岱をめざします。
上段の上毛無岱に入ってくるとガスはさらに薄くなり、黄金色に輝く湿原の中の木道を進みます。山腹に点在する樹々の紅葉の色もますます冴えてきました。

そしてなんといっても圧巻は、上毛無岱と下毛無岱の境の急階段からの絶景です。樹林帯のトンネルを潜ると一気に広がる錦秋の大パノラマには誰しも感動を覚えずにはいられません。思わず階段上部にしばし立ち止まり、天空の楽園のような光景に見とれてしまいます。なんとも立ち去りがたく、一歩一歩階段を踏みしめ、ゆっくり時間をかけて、極彩色の紅葉の中の木道を酸ヶ湯温泉へと下りました。(取材日=2017年9月25日)

プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
今がいい山、棚からひとつかみ
山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。
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