極寒・快晴の上高地を散策。大正池に一面のフロストフラワーに感動

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夏場は人気の観光地として賑わう上高地も、冬は一転静かな雪原となり、神々しく雪をまとった穂高連峰を独り占めすることができます。

文・写真=奥谷 晶

静かな雪景色の河童橋

冬の上高地は、夏の賑やかさが嘘のように雪と静寂に包まれています。訪れる人は、厳しい冬の穂高連峰へ挑戦する登山者もいれば、上高地周辺をスノーシューでのんびり散策する人など様々です。

上高地の冬期入山ルール、アクセスについては、事前にご確認ください。
冬季は上高地へのバスの運行はありません。中の湯から徒歩での入山になります。

■上高地の冬期入山ルールについて(上高地公式ウェブサイト)
https://www.kamikochi.or.jp/learn/winter

MAP&DATA

コースタイム:中の湯~大正池~河童橋(往復):約6時間

ヤマタイムで周辺の地図を見る

期待した冬型気圧配置からの天気の回復が遅れ、1月3日は朝から小雪。樹林帯のなかは穏やかですが、稜線はガスに包まれ、強風が吹き荒れている様子。

行けるところまでと、とりあえず焼岳登山口へ。すでに新雪が20cmほどで、この日は新しいトレースはなく、中の湯温泉旅館の前からスノーシューをつけて歩き出しましたが、急登部分では雪にとられ、今季初めてのスノーシューで、新雪に苦闘。足取り重く、天候の好転も期待できないので、樹林帯半ばでやむなく撤退しました。

翌日は期待通り、見事な快晴。貴重な機会を逃す手はなく、上高地への散策へ転進しました。中の湯温泉旅館の車で釜トンネルまで送迎してもらえるのがありがたいです。

釜トンネルはゆるやかな上り坂になっていて、本来は真っ暗なはずですが、年末年始のせいか、照明はついていました。

釜トンネルの次は上高地トンネル。それを抜けると絶景がまっている

上高地トンネルを抜けると林道沿いにまず、大正池へ。新雪は20cmほどで数人のトレースがあるのでチェーンスパイクを装着します。進むにつれ、青空と真っ白になった穂高連峰や焼岳が眼前に広がっていきます。気温は低く、カメラ用の電池が「残量がない」とたびたび警告。あわてて携帯カイロで温めた電池と取り替えることしばしばでした。霞沢岳への分岐を右手に見て、大正池へと進みます。

氷結し、フロストフラワーが一面に広がる大正池と穂高連峰

大正池は全面結氷の様子で、表面は白く、雪が積もっているかのように見えましたが、近づいてよく見ると、雪の結晶が花のようになったフロストフラワーが一面に広がっていました。北海道の阿寒湖などでは聞きますが、上高地ではかなり珍しいことです。夜の気温がマイナス15℃以下で、かつ、朝方から晴れて無風が続く日にしか現われない奇跡的な現象です。午後にはやや溶けて形が崩れていました。

雪の結晶が花のような造形に。一面のフロストフラワー

大正池から河童橋を往復し、復路は自然研究路をたどります。ガイドツアーがいくつか入ったようで、立派なトレースができていて、スノーシューを使うことはありませんでした。まれなフラワーフロストも見れて、終日快晴で、静かで快適な散策を楽しむことができました。(取材日=2019年1月3日~4日)

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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