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チャンスは少なく期間限定! 山の不思議な現象を見に行こう――、シモバシラの霜柱

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」
たしなみ 2020年12月24日

寒い冬の朝にだけ咲く花「シモバシラの氷華」をご存じだろうか? 冬枯れが広がる山にあって、ある条件が重なると、ちょっと変わった、幻想的な花が足元を彩る。

 

リボンのように伸びた シモバシラの霜柱


最近、急に寒くなってきた。植物写真だけを撮っている身としては、花が咲いている植物が少なく、なかなか厳しい時期なのだが、毎年この時期限定にいつもなんとなく撮影してみたくなる被写体がある。それがシモバシラの霜柱だ。

シモバシラの霜柱とはどのようなものかというと、まずシモバシラの説明からしなければならないだろう。シモバシラはシソ科の草。草丈30cm〜80cm程度の植物で、夏~秋に白い小さな花を咲かせて、冬には枯れてしまう。

花のころのシモバシラ

シモバシラの花は美しい

その枯れた茎に、場所によって違うが、11月から翌年の1月にかけて、ちょっと変わった霜柱が発生する。シモバシラの霜柱は、土の中で発生する霜柱と違い、真っ白な幅広のリボンの様な形と色で非常に美しい。

また、その時によって大きさも変わる。紅葉の撮影がほとんど終わった頃なので、毎年撮影したくなるのだ。高尾山でもよく見られるが、年によって変化があり、だいたい12月中旬の雨が降った後によく晴れて、急に寒くなるという条件が重なる時がよい。

雨が降った翌日には大きく育つ シモバシラの霜柱


シモバシラの霜柱ができるシステムは以下の通り。シモバシラの枯れた茎と根はドライフラワーのようになって冬まで残るが、この根は地中の水分を吸いあげ、さらに茎に水を通している。気温が高い秋までは、吸い上げられた水はそのまま蒸発するので、茎はまた乾燥する。晩秋から冬にかけて、これを何度も繰り返している。

しかし、気温が低くなり、夜間に氷点下まで冷え込むようになると、この茎に入り込んだ水は茎の表面で凍ってしまう。茎の表面に氷ができると、その氷に向かって茎の中の水が集まってくる。茎の表面に到着した水は、寒い外気の影響で最初にできた氷を押し上げて凍る。するとまた水が集まり、氷を押し上げてまた凍る。こうして茎の表面でできたどんどん押し上げられていき、しだいに氷がリボンのように伸びていくのだ。

まだ小さな シモバシラの霜柱


根から水分は茎の水を通す管を通してどんどん供給される。そして、どんどんリボンは伸びていく。シモバシラの霜柱は細いシモバシラの茎から染み出した氷の柱が集ったものなので、まるで飴菓子のように白く美しく輝く。太陽が昇り日中になって気温が上がるとシモバシラの霜柱は溶けていき、それを何回か繰り返すうちに、シモバシラの茎はだんだん崩壊していき、最後にはもう霜柱ができなくなる。

大きく育った シモバシラの霜柱

くるっと丸まった シモバシラの霜柱


このシモバシラの霜柱は、もちろんシモバシラでよく見られるが、シモバシラだけに出るわけではなく、シソ科のカメバヒキオコシ、セキヤノアキチョウジ、ヤマハッカ、キク科のアザミ、カシワバハグマなどの植物でも見られる現象。「氷華」「氷の華」「霜華」などと呼んでいることもある。

シモバシラをアップで撮影した様子。シモバシラの霜柱


関東では高尾山周辺でよく見られる。見られるのは1月中まで。シモバシラの霜柱を見るにはいくつか条件がある。寒気が入り、夜間に好天で放射冷却現象が起きていること、朝のうちに山にアプローチできること、前日などに雨が降ったりして水分が豊富にあること、12月中旬~翌年の1月上旬であること。これらの条件をできるだけ多く満たすと、より大きいシモバシラの霜柱に出会えるだろう。

こんな晴れた日にシモバシラの霜柱はできる

雪山・冬山 高山植物 日本の山 写真・映像
教えてくれた人

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

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