雪の九重山に登り、別府明礬温泉岡本屋旅館で青磁色の湯に浸かる

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第13回は雪の九重山を登り、下山後は別府温泉へ。

写真・文=月山もも

大分県の九重山は、5月から6月にかけて咲くミヤマキリシマが美しいことで有名ですが、私は冬の静かな時期に登るのがとても好きです。
別府駅から、通年運行している「九州横断バス」(2021年1月現在は大幅に減便中)に乗り、登山口の「長者原(ちょうじゃばる)」で下車して、雪が降り積もる中を歩き始めます。

2時間ほど歩いて、この日の目的地の「法華院温泉山荘」に到着しました。山荘では昼から温泉三昧して過ごし、おいしい食事もいただいて1泊します。冬は山荘も空いていることが多いため、ゆったり過ごせるのも冬の九重を気に入っている理由の一つです。

すっきりと晴れた翌朝は、朝食をいただいてから出発します。

湿地帯の「坊がつる」を見下ろしながら、九重連山の主峰・久住山や最高峰の中岳に向かって標高を上げていくと「北千里ヶ浜」と呼ばれる開けた場所に出ました。

山の周辺に漂う白い雲のようなものは実は雲ではなく噴煙で、風向きによっては硫化水素臭を感じることもあります。北千里ヶ浜は火山活動の影響で植物が育たない、荒涼とした場所なのですが、雪がつくと真っ白な平原になって、この世のものではないような不思議な光景を楽しめました。

山頂では残念ながら雲に覆われてしまいましたが、幸い天気が大きく崩れることはなく、牧ノ戸峠登山口に下山します。

九州横断バスで別府市内に戻ると、バスを乗り換えて「明礬地区」へ移動し、本日の宿へ向かいます。

バスを降りるとあちこちから湯煙が立ちのぼり、温泉の香りに包まれました。この風景を目の当たりにすると「別府に来たんだなあ」という気持ちが盛り上がってきますね。

本日宿泊する「岡本屋旅館」は、明礬地区で140年以上営んでいるという歴史ある宿です。以前も1度泊まったことがあり、今回が2度目の宿泊。

昔ながらの建物ですが、館内はどこもかしこもピカピカに磨き上げられていました。
室内も清潔で暖かく、窓からは別府湾と別府明礬橋が眺められます。

一休みした後はもちろん温泉へ!
明礬地区は、別府温泉の中でも源泉の種類が多い地域で、隣同士の旅館なのにお湯の色や香りがまったく違う!なんていうこともよくあるのですが、岡本屋旅館では「青磁色の湯」と称される、青色のお湯が楽しめるのです。

まずは内湯の岩風呂へ。
青みがかった透明なお湯の中に「ざぼん」が浮かんでいます。温泉の香りと柑橘系の甘酸っぱい香りが合わさって、なんとも言えない良い香りが漂っていました。(ざぼん湯は冬季限定。12月中旬~2月中旬)
少し温まってから露天風呂に向かうと、こちらはミルキーブルーの濁り湯です。

内湯と露天は同じ源泉なのですが、気温や天候などの条件でまったく違う色になるのが不思議ですね。露天風呂の色も前回泊まったときとは少し違っていました。

すばらしいお湯を楽しんだ後は、夕食の時間です。
夕食は食事処でいただきますが、外を眺められるカウンター席があるので、1人で泊まってもあまり人目が気にならないのはうれしいポイント。

お酒は大分の地酒3種の利き酒セットを注文しました。

今回、お刺身を「地魚姿造り」にグレードアップしたコースで予約していたので、お刺身の盛り合わせがものすごく豪華です!大分県名物の「関アジ」を含む新鮮な魚貝が美しく盛り付けられ、ついつい日本酒が進みます。

温泉の源泉から噴き出す蒸気で野菜やゆで卵、豚肉などを蒸した、名物料理の「地獄蒸し」は、2種類のタレをつけていただきました。蒸した野菜をいただくと、ほんのりと温泉の香りが口の中に広がるのも楽しいです。

デザートは温泉で蒸した「地獄蒸しプリン」。

甘く濃厚なプリンをいただいて、お腹いっぱい。ごちそうさまでした。

翌日の朝食も、食事処の同じ席でいただきます。

温泉卵や自家製のお豆腐のほか、肉厚な「焼き椎茸」や「野菜と鮭の地獄蒸し」、ぶりなどの刺身を漬けにした「りゅうきゅう」と呼ばれる大分の郷土料理が並び、朝からお酒が飲みたくなってしまいました。

最後に、九州の郷土料理の「だんご汁」という、平たいだんごを入れたボリュームたっぷりの汁物をいただき、デザートはかぼすゼリー。食後のコーヒーまでおいしくいただきました。

九重では山の温泉に浸かり、別府でも青磁色の極上の湯に浸かり、温泉を使った料理をたくさんいただいて、おんせん県大分らしい温泉三昧の旅を楽しめました。ひとりでもゆったり過ごせる冬の九重、実はかなりおすすめです。

 

*紹介した食事、サービスは2019年1月取材時の内容です。
 

明礬温泉 岡本屋

料金:1泊2食付き/1室1名利用23100円~、2名利用(1人あたり)16500円~ ※時期により一人利用不可
住所:〒874-0843 大分県別府市明礬4組
電話:0977-66-3228
HP:https://www.okamotoya.net/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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