駅から歩いて菜の花に包まれた富士山を展望できる二宮吾妻山。山歩きを再開に適した展望ハイキング

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3月に入ると、日差しが強くなり日中の気温もぐっと上がってくる。冬の間は活動を止めていたハイカー・登山者も、そろそろ外に飛び出して山を歩いてみたい時期だ。その手始めとして、神奈川県の二宮吾妻山はいかがだろうか? 3月初旬は菜の花と河津桜を楽しめ、春と展望を存分に堪能できる。

山頂展望台からの見事な景色。富士山と海とを同時に見渡せます


冬の過ごし方というのは、登山者によってさまざまでしょう。私の友人知人でも、アクティブに雪山に行く人や日だまりハイキングを楽しむ人もいるいっぽうで、完全にお休みするという人もいます。しかしお休みしていた人も、3月に入って暖かさが感じられるようになったら、体を動かそうと考えるのではないでしょうか。

そんなときにお勧めしたいのが、神奈川県二宮町の吾妻山です。ここは“山”と名づいてはいますが、登り慣れない体でも不安なく登れる丘です。しかし山頂からの展望は一級品。雪山の頂上にも劣らない、見事な絶景が広がります。

3月上旬頃は、山頂部に植えられた菜の花がちょうど満開になりますので、訪れるにはベストシーズンです。

モデルコース:JR二宮駅から二宮吾妻山を周回

行程:
JR二宮駅・・・吾妻山公園中里口・・・吾妻山・・・吾妻神社・・・第二展望台・・・JR二宮駅

⇒モデルコースはこちら

 

気軽なウォーキングのスタイルで、圧巻の絶景を楽しもう!

吾妻山を訪れる際の起点は、JR東海道本線の二宮駅。駅を出てすぐ左の二宮町役場の横に役場口がありますが、山登り気分をアップさせるために、正面の車道を1kmほど歩いて中里口へ向かいましょう。住宅の間を過ぎると周囲は鬱蒼とした森に変わり、深山気分を味わえます。

間もなく現れるトイレの前を過ぎると、右に小ピークが現われます。頂上に登ると、浅間大神の石碑が立ってはいますが、樹林に遮られて展望はありません。そこから一度下り、4月下旬には芝桜が咲く斜面を横切ってコースでいちばん急な階段を登りきると、大きな木が立つ広い吾妻山頂上です。

公園として整備されていますが、ちゃんと山頂標識も立っています


山頂の右手にある展望台に立てば、正面に大きく富士山がそびえて圧巻です。その左に連なるのは箱根の山々で、さらに左手前には相模湾の海原も広がります。また富士山の右に目を向けると、丹沢の山々が連なっています。

普段の山行では行程が気になって、じっくり山座同定する余裕がないことも多いはず。しかしここならば、時間の心配はいりません。思う存分、山座同定を楽しめます。

山頂展望台から見た丹沢の山々。右から大山、三ノ塔、塔ノ岳、鍋割山、檜洞丸と続いています


そしてこの頂上での一番人気は、展望台の一段下からの、菜の花畑越しに見た富士山です。この時期は何人ものカメラマンが、大きな一眼カメラを構えてこの景色を撮影しています。

吾妻山では定番の撮影スポットです


展望を楽しんだら、一段下の吾妻神社にも参拝しましょう。日本武尊(やまとたけるのみこと)を守るために海に身を投げた、弟橘媛命(おとたちばなひめのみこと)を祭る古い神社です。また境内やその手前では、ソメイヨシノよりも早い、河津桜が花を咲かせて見事です。

ピンクが鮮やかな河津桜。花の間ではたくさんのメジロが飛び回っています


下山は、浅間神社前を通る役場口へ。二宮の町並みを見下ろす第2展望台を過ぎると、二宮駅はすぐです。なお、この吾妻山を登るのに本格的な登山装備は不要です。気軽なウォーキングのスタイルで、絶景を楽しみましょう。

プロフィール

木元康晴

1966年、秋田県出身。東京都山岳連盟・海外委員長。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。
ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。

 ⇒ホームページ

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